第150話 用事を済ませてクラリスさんとのデート
話は終わり、僕は西冒険者ギルドのサブギルマス、
ガネスさんから厳重に、二重にした封筒を受け取る。
「ではこの書類を東A冒険者ギルドまで持って行ってくれい」
「はい、例の勇者専用受付嬢にですね」
「ああ、シークが休みだったら代わりの受付嬢でもかまわねいぜ」
さすがにモヒトさんじゃ駄目か、一応冒険者だもんな。
「それで全体のギルマスはいつ戻ってくるんですか」
「わかんねえ、奥方の休みが明ける前には戻ると思うが」
「いつですかそれ」
「三、四日だな、緊急の用事があればいつでも呼び戻せるが」
「いえ、そこまでの緊急では……」
いや、シカーダちゃんはできるだけ早く救出したいけれど、
とりあえずは伝えられるだけの話は伝えた、あとはこっちで出来る事をしよう。
ニィナさんもガネスさんに一言告げる。
「何か進展があれば教えて欲しい」「おうよ!」
こうして僕らは西冒険者ギルドを出たのだが。
「……私は私で少し、する事がある」
「ニィナさん?!」
「デレスはクラリスと今日は、アンジュの学校が終わるまでデートをしてきてくれ」
「まあ!」
「クラリス、デレスを頼んだぞ」
そう言って地下に消えて行った、
これでクラリスさんとふたりっきりだ。
「では、参りましょう♪」
「う、うん」
(急にご機嫌になったな)
こうして西地区へ向かう途中の青空市場、
オークションが終わって賑わいが落ち着いたとはいえまだまだ品数豊富だ。
「ええっとこれは投げ鉄球か、投げ爆弾が得意な戦士用って肩壊しそう」
「投げナイフもですが回収に手間がかかりそうですわ」
「あ、踊り子の装備みつけた、変化マスクだって、ランダムで表情が変わるって」
うん、まるでデートみたいだ、
いつのまにかちゃっかり腕を組まれているし。
「破損した幻術師の杖で作ったつまようじだって、いらないね」
「デレス様、あちらのアイテム袋は開かなくなった物のようで……」
とまあ時間をたっぷりかけて東エリアA地区までやってきた、
アンジュちゃんの転移だと会っという間だけれど、
こうして歩きだとクラリスさんとじっくり話ができて、これもまたいいな。
(あ、ミュジンさんだ)
Aエリアの案内人兼娼館への案内人兼賢者のミュジンさん、
ヴィクトリアサキュバス討伐では貴重な戦力になってくれた、
実際に戦う所を見たクラリスさんに『さすがです』と言わしめた程らしい。
「ど、どもども」
軽く挨拶だけして通り過ぎる、
今は用事の最中だからね、僕が一人で暇な時に会ったら、うん、また考えよう。
「こちらの地区は楽しいですわ」
「うん、華やかで何でも揃ってて、デートにも最適だね」
「あ、あれは!」
と高価そうな喫茶店に目をやると、
悪女勇者コロメが美味しそうにパンケーキを頬張っている!
まわりにはシカーダちゃんと奴隷中年ふたり、あ、わかったぞ!
「今更だけどコロメって、美味しい物を食べてるの、奴隷に見せつけて楽しんでるな」
「それであえて奴隷に満足いく食事を与えてないのですわね」
「性格悪いなあ、ていうか出頭しなくていいのかっていう」
冒険者ギルドへ行ってなくても使いの者とか来ていそうだけどな、
僕が商業ギルドからさっさとオークションで落札したものを取りに来いって言われたみたいに。
「今はどうしようもできないや、目が合う前に行こう」
「ですわね」
(シカーダちゃんの悲しそうな顔が、忘れられない……)
こうして東A冒険者ギルドに入るとモヒトさんが満面の笑みで寄ってきた!
「ふぉふぉふぉ、今日はどうし」
「あ、上に用なんで、それじゃ」
「冷たいのう」「うそうそ、先日はありがとうございました」
コモモを渡して僕とクラリスさんは五階へ、
知ってるAクラス勇者か知らないAクラス勇者でもいないかなーと思ったが、
誰も並んでおらず、いつもの厳しめ受付嬢すらいない、カウンター向こうにマリーナさんはいた。
「あの、西冒険者ギルドから、こちらのギルドマスターにこれを」
と、若い感じの受付嬢に渡す。
「ありがとうございます」
「それでギルマスはいつ戻るかわかりますか」
「レワン様でしたら奥様のチアー様と休暇中で、予定では四日後です」
「なるほど」
サブギルマスが言っていた通りだ。
「緊急の伝言がりましたら、伝えられますが」
「いえいいです、それじゃ」
用だけ済ませて後にしようとしたが、
AエリアとSエリアを行き来する扉の隙間からマリーナさんが
こちらをじーーーと見ていたのでコモモだけ渡した下に降りる。
(なんかふたりとも餌付けしちゃったなあ)
冒険者ギルドを出るとルンルンのクラリスさん。
「ではまず、どこへ参りましょうか」
「うーん、そうだね」
ふたりでダンジョンへ、などという雰囲気ではないなこれは。
「ええっと、あ、ちょっとまずは大きい公園で落ち着いて良いですか」
「はいっ!」
あーこのべたべたくっついてくる感じ、嫌じゃない!
なんていうか言いにくいけど、あのドワーフに汚されたものを浄化されている気分が!
そんなこんなで公園についた僕ら。
「あら、ペロちゃんが」
「うん、寝てるね、バウワー爺さんも」
ベンチで横になってるふたり、
いやペロちゃんは丸まっているか、
耳をピクピクさせて僕らに気付いた。
「ふみゃあ」
「あ、呼びに来たんじゃないから、ゆっくりしてていいよ」
「みゃ」
そしてクラリスさんと別のベンチに座る、さあ、お話しよう。