第142話 ケルピーライダーと導かれし奴隷の戦士たち
「うわ、なにこれ強い!」
僕はヘレンさんたち奴隷パーティーと例のアルラウネが出てくる、
地下九十六階の『地下森林エリア』へやってきた、今回は褐色姫姉妹がいないので、
サキュバスも戦闘に加えられるのだが、いつのまにか予想外なコンビネーションが発生している。
「ソコ、ギミックエント」「ブヒヒンッ!」
ピンクの首輪をしたケルピーに乗る金色のサキュバス、
キューピーとゴールデンサキュバスの合体攻撃が鮮やかに決まる!
ケルピーの機動力を生かしサキュバスの素早い爪攻撃で敵を切り裂く、かっこいい!
(あと二組も凄いな)
ブルーの首輪をしたクーピーに乗る風属性の白いブリーズサキュバス、速さが半端ない、
オレンジの首輪をし後頭部が禿げ散らかしているパッピー、
それに乗る闇属性の紫色したバッドサキュバスは息で敵を枯らす。
「ヘレンさん凄いですね」
「ええ、ティムモンスターとサモン両方同時に操るのも慣れてきました」
通常、サモナーが召喚できる数は八体までとされており、
ティムモンスターも操れるのは八体までとされていて、
両方操れる人はまれだがそれでも合計八体までとされている、
でもヘレンさんはサキュバス七体、ケルピー三頭を同時に操っている。
(あの鞭のおかげかなぁ)
元々はセクシーパンサーの素材で作った黒豹の鞭、
それをドワーフの姫マリウさんが三段階鍛え上げてくれて漆黒の鞭となった、
その時に操作できる数を増やしてくれたのかもしれない、後でアンジュちゃんに鑑定してもらおう。
「アルラウネをどんどん弱めてくれる」
「ティムに挑戦しますね」
とはいえなかなか上手くいかない、
やはり奴隷パーティーのみだと幸運値みたいなのも上がらないからか。
(奴隷だけで狩りさせる目的だから、僕は今、戦闘パーティーには入ってないんだよなあ)
ちなみに妖精の指輪も渡していない。
「ウィング、上からバルーンチュラが!」
「おうよ!」
でかい弓で樹の上から跳んできた蜘蛛型モンスターを矢で射るウィングさん、
指示したリューイさんは油断せず様子を窺う。
「今のは先頭だ、沢山くる、ハオ! 毒耐性魔法を」「了解!」
僧侶のハオさんがヘレンさん含めた全員にかける、
リューイさんは杖を掲げてわらわら出てきた蜘蛛の集団に全体魔法を!
「エリアサンダー!」
レベル三十魔法だ、うん効いてる。
「弱らせればこちらのものよ!」
一撃で死ななかった蜘蛛もケルピーに跨っていないサキュバス四体中三体が倒しまくる、
残り一体の光属性ホーリーサキュバスはヘレンさんを護っている、今の役回りとしては回復特化のようだ。
僕は思わず軽く拍手しながら賞賛する。
「凄いですね皆さん、これだとこのエリアのボス、マンドラゴンすら倒せそうですよ」
植物系ドラゴンとかいう訳のわからない敵である、
まあドラゴンに擬態している植物系モンスターなんだけど、まあまあ強いらしい。
「前衛三頭と三体が頑張ってくれているおかげですわ」
「いやいやヘレンさん、このケルピーライダーみたいな合体技、ヘレンさんだからこそですよ」
「テレル」
なぜゴールデンサキュバスが照れるのか。
「これも、こうして私達『マスカレードバラード』が再興できたのも、デレス様のおかげです」
「ああヘレンさんのパーティーそんな名前だったっけ」
冒険者ギルドで何か申請してたのはそれかな?
ニィナスターライツの下部組織パーティー。
「ブヒヒヒン!」
「え? あ、パッピー!」
上に乗ってる紫のサキュバスが種をヘレンさんに渡す。
「えっとこれは魔力の種の種か、リューイさんかハオさんに」
「ええっ、いいんすかっ」
「もちろんですよ、あ、僕が帰ったら簡易鑑定すらできなくなるのか、
今後の種は溜めて後でまとめてね、新しい種が出るかもしれないし」
妖精の指輪を渡さない分、種で強くなってもらおう。
「デレス様、我々を正しい方向に導いていただき、ありがとうございます」
「いやヘレンさんそんな改めて頭を下げなくても」
「……もうしばらくお世話になりますので、よろしくお願いしますね」
そうだ、魔王を倒したらその分け前でヘレンさん以外の三人を奴隷解放する約束だっけ、
そして解放された三人がヘレンさんを買い取る、その直後、ヘレンさんも奴隷解放されるのかな?
買い取りのお金とかどう用意するのか知らないけれど、遅かれ早かれお別れが来るみたいな言い方だ。
(そういえばクラリスさんの言ってた育成メインバーにヘレンさん入ってなかったよな)
でもまあ、それでもずっとこの『マスカレードバラード』が別働隊で居てくれるのなら、
奴隷でなくなっても今度は仲間として残って欲しい、リューイさんたちに種あげてるし。
(あ、ニィナさんの面接ってそのあたりもか)
後で面接結果をニィナさんに聞かないとな。
「また種が出たみたいっす」
「え? あーこれは、おいしい種だ! アンジュちゃんにあげるからキープで」
「わかりましたっす!」
うーん、ケルピーに乗ったサキュバス、ケルピーライダーの無双を見てると、
ヘレンさんは手放したくないなあ、最悪、バウワーさんが居るから良いけど、
ここは逆にヘレンさんをまず奴隷解放して心証を良くして残って貰う作戦も……?!
(リューイさんたちを人質に取る様な事は、したくないな)
と、ぼーっと見ててハッとニィナさんたちが待っていたのを思い出す。
「じゃ、後は任せて大丈夫だよね、キューピーたちの餌もあるからお昼には一旦戻ってね」
「かしこまりましたデレス様」
「大丈夫とは思うけど無茶はしないでね、特に階層の移動は慎重に」
強いとぐいぐい行きたくなるけど、
リューイさんたちはまだレベル三十前後だもんなあ。
(もっともっと種を食べてもらって、強くなってもらおう)
さて、一旦戻っていよいよ本体の出動だ。