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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
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第141話 曖昧な目的と明白な目的

「ご注文のハーブティーでございます、お待たせいーたしっ、まーしたっっ!!」


 あ、言い出しをまともにしておいて語尾をいつもの感じで仕上げた昨日の司会者ぽい女性!

 蝶のマスクにもっと突っ込んであげたいが、今はそれどころではない。

 僕はざっとコロメの隠匿魔法が奴隷にも及んでいた所まで話した事をニィナさんに説明した。


「という事だ店主、奴は、コロメはシャマニース大陸を生き延びてきた事だけはある」

「いったい何人の犠牲を払って、いや利用してそこまで強くなったのだろうな」

「あの、店主さんってコロメを直接見た事はあるんですか?」


 無言だ、そのあたりは言いたくないのかな、うわハーブティー濃くておいしい!


「……情報だけで見えるものはある、それで話を戻すぞ、冒険者ギルドだって馬鹿じゃない」

「ですよねー、じゃあ何か対策は」

「最高位の鑑定水晶を取り寄せればおそらくコロメの情報隠匿能力を破れる」


 なんだか凄そうな話が出てきた。


「それってどこにあるんですか」

「ムームー帝国だな、レベル百二十まで見破れる、ただあそこから借りるには日数が必要だ」

「どのくらいですか」

「わからん、向こうに利があればすぐ貸してくれるがなければ数か月か」

「あーじゃあ袖の下、って帝国ですからそんなのいらないんでしたっけ」


 教会の賄賂みたいなのも受け取らない国みたいだし。


「おまんたせいたしました、お連れ様のハーブティーでございまあああっすっっっ!!」


 ニィナさんに薄い方のハーブティーが置かれた、

 あ、わかった、これたぶん無料の方だ、という事は僕のは……


「はいアナタ、お水」

「うむ」


 うわ、すんごい夫婦間っぽい声!

 ていうかぜってーあの受付嬢だ……。


「あそことは色んな国と仲が良い部分もあればいざこざも起きる」

「気難しい所なんですね、頑固おやじ的な?」

「いや貴婦人的なだ、現に女王がそんな感じだ」


 なるほど、貴族のパーティーは何度か見たけど確かにそんなのいたな。


「おそらくだが、そのような超高級大型水晶は取り寄せるにしても時間がかかるのが一般的だ、

 それを知っていてコロメは場所を転々としているのだろう」

「あー正体がバレる前にとんずらっていう」

「いくら冒険者ギルドが全世界繋がっているといえど、大陸が違えば詳細までなかなか回らない、

 仲間を奴隷中心にすぐ死なすという悪評は載っていても、それで捕まえられる訳じゃないからな」


 証拠は残さず、嘘もつき放題、やばくなったらほとぼり冷めるまで他の大陸へ、かあ。


「店主、冒険者ギルドもバカではないと言ったな、という事は」

「すでに動いてはいるだろう、しかしムームー帝国に水晶の貸し出し交渉をしてるとしても、上手く行くかどうか」

「他からは、他の国からは借りられないんですか」「無理だな」


 水をごくりと飲む店主。


「コロメをひっ捕らえて大型水晶のある国まで連れて行けばあるいは、だが」

「あーじゃあ無理そうですね」

「……いいか、ひとつ疑問に思ったのだが」


 と、うっすいハーブティーを飲み終えたニィナさんが言う。


「その大型水晶はどこから取れるのだ」

「素材か? ものすんげー大きく魔力の強いドラゴンか、大型の魔王、その魔石だ」

「それを手に入れてくれば、加工に時間はかかるか?」

「鍛冶屋の腕によるな、シュッコの商業ギルドで普通に依頼できる鍛冶職人で半年から一年か」

「そんなにか、コロメは易々と逃げ切れるな」


 ……とびっきり腕の良いドワーフの話題はとりあえず避けておこう。


「えっと、女勇者コロメってそもそも何の目的で冒険者をやってるんでしょうね、そんなことして世界中回って」

「冒険者に理由なんざいらねえだろうが、こっちに入った情報だと、世界中の美味い物を食い尽くすためらしい」

「そんな曖昧な理由で」

「いやデレス、結構、明確な理由だぞ」

「そうなんですか」


 ニィナさんがおかわりのハーブティーをもらった、無料だからね、多分。


「男に抱かれるために旅に出る、と良い男に抱かれるために旅に出る、くらい違うぞ」

「そんなに違いますか?」

「ではこうしよう、男を抱くために旅に出る、と背の低く幼い少年に見える男を抱くための旅に出る、くらい違うな」


(誰の事なんでしょうね~♪)


「おい、話を脱線させないでくれ」

「あ、すみません、じゃあ魔王の水晶があれば」

「並のじゃ駄目だ、それこそ大陸間移動レベルのドラゴンか、七大魔王レベルの魔石が必要だ」


 お蝶夫人がおしぼりを配ってくれる、気が利く。


「となると、ここの」

「魔王ビーストシュータの魔石だな、オークションに出さず冒険者ギルドへ直接売れば、最高級鑑定水晶にする可能性が高い」

「むしろそうしてくれって頼めそうですね」


 そうすればコロメの嘘も見破れるのか。


「デレス、ならば早ければ早い方が良いな」

「はい、レベル上げを急いでコロナが逃げる前に」

「コロメだ、ちゃんと冒険者ギルドと打ち合わせしておけよ」

「あ、そういえば東Aエリアに居るっていうギルドマスターに会いたいんですが」

「……あいつかあ、あいつは忙しいからなあ、東Bのサブギルマスでいいんじゃないか?」


 なんだろ急に最後の方の弱気な物言いは。


「もしくは東Aの勇者専用受付嬢、シークに相談か、東に拘らないなら西のガネス、あいつが事実上のナンバーツーだ」

「あ、あのワイルドな! ガネスさんならいっつもお世話になっています」

「ならそっちでいい」


 みんながびびりまくってた死神モードのアンジュちゃんをひょいっと捕まえたあたり、

 実力的にも凄い人だったんだろうなガネスさん、そのあたり、そこの蝶のお面している熟女に聞きたい所だ。


「ただ七大魔王の魔石を運良く入手、運良くって言ってもこの国の大ボスだ、一大事どころの話じゃねえが、

 手に入れた所で加工のつてはあるのか? 魔力重視の加工だからそこのでかい剣作った奴にでも頼むのか?」


 立てかけてあるベルセルクソードに目が行く店主。

 ニィナさんが口を開く前に僕が答えた。


「ドワーフに知り合いがいまして、僕がお願いすれば必ずやってくれるかと、ただ……」

「やはり値が張るか」

「いえ、まあそれがあったとしても、まあ、色々と条件が」

「デレス、それに関しては私が交渉してやる、安心しろ、まずはビーストシュータを倒してからだ」

「ニィナさん……」


 やばい、今夜は抱かれたい。


「よし、じゃあビーストシュータの情報を俺が、といきたいがおそらく冒険者ギルドの方が情報量は多い」

「ですよね」


 ちらっとお蝶夫人を見てしまう、あ、奥でマスク外して顔拭いてる!


(やっぱりあの人だー!)


「ほかに冒険者ギルドではわからない、調べられない情報で欲しいものはあるか?」

「ええっと、あっそうだ、ここでしばらく、二か月ちょっとほど働かせてあげて欲しい猫獣人が」

「なんだ、ほとんどが留守番だがそれでよければ薄給で雇ってやる」

「今度連れてきます、近いうちに」

「今日からしばらくはどの時間でも開いてたり開いてなかったりするからな、まあ様子見て来てくれ」


 こうして情報量兼、濃い目のハーブティーの代金を払って情報屋を後にした。


「あっりがとう、ございまああああっす! またのーーーっ、おこっしをっっ!!」


(ってお蝶夫人から渡された明細証はハーブティー三杯分になってるううううう!!!)


 濃いも薄いも同じ値段かあ!

 ま、いいけど。


「よしデレス、明確な目的ができたな」

「はい、早く強くなって早く魔王を倒して、早く魔石を最高級鑑定水晶にしてもらいましょう!」


 さて、この後は、あ、ヘレンさんの奴隷パーティーをダンジョンに連れていかなくちゃ。

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