第133話 落札した土地別荘とその使い道
不動産オークションが進む中、
あっさり落札できた物件について語り合う僕ら。
「ニィナさん、ムームー帝国ってどんな所なんですか?」
「女王が治める、土地面積で言えば大陸一の国だが、色々と訳ありでもある」
「先日会った大臣さんは悪そうな人には見えませんでしたが」
「他所行きは誰もそんなものだ、冒険者にとって美味しい国だがリスクも多い」
「うーん、買った屋敷と土地は海に面した所なんですよね、海かぁ」
僕の育ったミリシタン大陸のブラヌシアタを思い出す、
あそこは本当に良い街で……うん、久しぶりに海で泳ぎたくなってきた。
「あの、よろしいでしょうか」
「なんだヘレン、発言を許す」
最近はヘレンさんにまで喋るのは許可制なのか。
「あそこは勇者やレア職業の囲い込みが激しいと聞きます」
「その噂は知っている」
「妻子ある勇者が一時的に助っ人として行って、二度と帰って来なかった例を聞きました、
死んだ訳ではなく……ですので行くのであれば、慎重に準備をしてからの方が良いと思われます」
うーん、ミリシタン大陸でAランク勇者は外へ出さないのと同じような事かな、
そういう国はこっちではごく少数と聞いていたが一番大きな国がそれですかっていう。
「デレス、どう思う」
「そうはいってもこっちはアンジュちゃんが居ますからね」
「油断は禁物だ、何も縛る方法は物理的だけでは無い」
「ええっと、繰り返しになっちゃうかもですが、ムームー帝国の良い所と悪い所を教えて下さい」
ステージでは島ひとつ売ってるみたいだ、
あれだ、褐色奴隷の、姫様たちのいたネクニュカマー諸島のひとつだ、
白金貨二百枚からかぁ、買って姫様たちを住まわせたらおそらく大問題になるだろうな。
(また攻め落とされちゃう)
考えが固まったのかニィナさんが説明を始めた。
「まず七大魔王のうち二つがムームー帝国にはある」
「国が大きいですものね」
「ああ、魔物の国すら抱えているからな、だからSクラス冒険者にも人気だ」
「なるほど、冒険者ギルドもしっかりしていそうですね」
「そのあたりは例のサブギルマスにでも後で聞こう」
ガネスさんか、あと地下の情報屋でも話を聞きたい。
「国も安定している、圧政とも呼ばれる事はあるが、
それだけ皆をきちんとコントロールしていて治安も悪くない」
「なるほど、住むとなった時に大切な話ですね」
「困った時は国に相談すれば親身に聞いてはくれるそうだ、
ただ聞いてはくれるが聞くだけ、という事もまあまあ、あるらしいがな」
それでも国の姿勢としては良いと思う。
「ここからは悪い面だが、税金は多めだ」
「あーそれは仕方ないのかな」
「あと自由もそれほど保障されてはいない」
ここでクラリスさんが口を挟む。
「教会にしても、建てる許可を取るのに物凄く手間暇がかかると聞きます、
かといって賄賂を贈ろうとしたら即刻捕まったとか、国が全て管理していないと気が済まないようです」
「クラリスさんはムームー帝国にはあまり良い印象は無いんですか」
「いえ、孤児の面倒はどこの国よりも良く見ているようですので、ただ国の色が合わないと申しますか」
国からしてみたら暗殺聖女ってすごく欲しがりそうだけどな、だからか。
もうその能力は無いけど。
「じゃあそこの別荘買っちゃったの、まずかった?」
「いえ、敷地内に教会を建てる事までは禁止されないと思うので」
「建てるんだ」
まあいいけど。
「アンジュちゃんは」
「美味しい種たべたい」
「はいはい、あとでね」
とはいえアンジュちゃんは絶対、ムームー帝国でのキーになる、
もし無理に囲われてこの国から出さないとか言われてもアンジュちゃんの力なら……
と考えていたらニィナさんが話を戻す。
「力のある勇者はありとあらゆる方法で取り込もうとしてくるらしい、
私はアイリー騎士団のひとりとして行ったのでそれ程ではなかったが、
それでもハニートラップの類には気を付けろと男共は聞かされていたな」
あーそういう。
油断できないな、ニィナさんから離れないようにしよう。
「他の細かい部分、デメリットは冒険者ギルドであらためて聞こう」
「えっと整理しましょう、購入した別荘はムームー帝国で冒険する拠点、で良いんですね?」
「ダンジョンが近くにあるので冒険者にもうってつけ、と資料にはあったからな」
「あと女神教の教会も建てる、と」
「はい、お願いします」
あとは現地で建物と土地を見てから決めるか。
「どうしましょう、早目に一度、見てきますか」
「そうだな、私とクラリスのふたりだけでも」
「いや、行くなら全員一緒です、何があるかわかりませんから」
ニィナさんとクラリスさんがちょっと見てくると言ってムームー帝国に入り、
それっきり音信不通で戻ってこないとか、冒険者ギルドを通して『もう帰らない』とか、
悪い予感しかしない、だからもういっそ、みんなで一緒に行きたい。
「アンジュは学校があるだろう」
「あ、そうでした、一番大事なアンジュちゃんが」
「えへへ」
「とにかくちゃんと情報を集めてから行きましょう、別荘は逃げませんから」
「だな、大体の方針が決まったので、これで良しとしよう」
コロシアムではパネルが片付けられている、
という事は不動産関連は終了のようだ、
さあ、オークションもいよいよファイナルか。
(アルラウネたち、そこそこの値段で売れると良いなぁ)
司会の派手リアクション受付嬢が中央に立つ、余り物オークションの開始だ。