第132話 おもしろ職業展覧会と海の見える別荘を買おう
「やった! 倒せたわライリア!」
「ナタイラお姉様のおかげですわ!」
初心者用チュートリアルダンジョン、
踊り子専用ボス部屋のエクストリームボールを無事倒した褐色姉妹、
すでに実戦でレベル二十にまで上がってたうえ
僕とアンジュちゃが補助魔法をこっそりバリバリにかけていたからね。
「ボスの魔石を、上の回収箱に入れると、しばらくしてまた復活する、よ」
「しばらくって、どのくらい?」
「んー、他の部屋を見て回ってるくらい」
ちょっと興味ある。
「じゃあ外でちょっと休もうか」
「はい」「喉が渇きました」
ボスの魔石を収納ボックスへ投函し、
出て休憩所みたいな所で座らせて待たせる。
「えっと、奥だよね」
「うん、学校に頼まれて、全部どれがどの部屋か書いた、よ」
「本当だ、よく見たら扉に書いてある職業ってみんなアンジュちゃんの字だよね」
授業の一環としての依頼かな。
「きちんと調べて褒められたんだ」
「えらーい、ってどうやってわかったの」
「入った所の武器を鑑定したら、わかった、よ」
試しに吟遊詩人の部屋に転移で入ると、
小さなハープが置いてあった、確かに吟遊詩人の武器と出る。
「あと何があるのかな」
「次の部屋に飛ぶね」
こうして僕とアンジュちゃんは次々と色々なレア職業の武器を見てまわる、
花火師(武器は投げ爆弾)、ギャンブラー(武器はサイコロ)、
曲芸師(武器は巨大ゴマ)、ゴクドー(武器はドスとかいう短刀)、
妖術師(武器はお札)、ヒットマン(武器はライフル)、
他にも秘術師、ライダー、栄養士、風紀委員、人形師、サイキッカー、等々。
「面白いけど本当に居るのかな」
「居るからあるんだって、もっとレアな所があるよ」
確かにまだ六十くらいしか回っていない。
「旧々校舎へ飛ぶよー」
と地上に転移すると完全な廃墟、
六割は崩壊している校舎の前だ。
「崩れるから立ち入り禁止なんだけど、僕は大丈夫だって言われた」
「瞬間移動ができるからね」
「入るね」
入口は塞がっていたものの隙間から中は覗けて、
転移で入る、休憩用の長椅子は真ん中から真っ二つに割れていた。
「これ、この前オークションで見たお婆さんの」
「くすぐり師かあ、入ってみよう」
武器は『シルクの手袋』ってこれ武器なのか、
敵のエリアに入ると『ランニングマン』とかいう上半身はシャツ一枚のおっさんモンスター、
カイラクオジサンやウパーと同じ系統だ、これをくすぐり倒すのか。
「アンジュちゃん、やってみる?」
「なんか気持ち悪いから、いい」
「だよね」
他の職業も起き上がり小法師とか顔面セーフとかぬめぬめする者とか、
空間プロデューサーとか音響監督とか丘サーファーとか、意味のわからないものも。
そして……
「あ、ここ、蟹もぎ師!」
「シカーダちゃんの職業、だよ」
「これは見ないと」
入ると武器は『蟹身用バサミ』とかいうごっついハサミだ。
「敵を見るよー」
わらわらやってきたのは丸っこい蟹、
名前はツルツルマンジュウガニというらしい。
「これ、美味しいのかな」
「ううん、毒があって不味くて猛烈にお腹壊すって」
「駄目じゃん」
丁寧に壁には水が流れてる、飲む気にならない汚さだけど。
「ボスはフサフサマンジュウケガニだよ」
「それは美味しいの?」
「とてつもなく不味くて死にそうなくらいお腹壊すけど死なないんだって」
「もっと駄目じゃん」
「でも経験は良いらしいよ、どの部屋もレベルは五までしか上がらないけど」
ええっと、それ早く言って欲しかったな。
「よし、姉妹の所へ戻って、妖精の指輪を回収しよう」
そして一応もう一回戦わせたのち、とっととチュートリアルダンジョンを後にした。
(実戦を経験させたっていう意味では、まあいいか)
さて、オークション間に合うかな、
と転移魔法でまず姫様ふたりを東D地区の宿、スイートルームへ帰す、
おっかさんを中心に『無事帰ってきたぁ!』という感じだがあの難易度じゃあね。
「アンジュちゃん、オークション会場」
「あいあい」
そしてニィナさんらと合流、席はうん、ちゃんと空けておいてくれている。
「早かったな」
「なんかやる気が削がれたとでもいいますか」
「あのふたりがか?」
「いえ、僕が」
「なら良い、今日はもうオークションを見て帰ろう」
今は巨大船のオークション中みたいで、でかい模型が中央に飾られている、
って不動産オークションじゃなかったのか? と思うが細かい事はいいか。
「それでニィナさん、何か落札したいものは」
「ここシュッコで拠点となる屋敷を買いたかったがなかなか良いのが出ない、
他の国なら気になるのがいくつかあったがな」
「具体的にどんなのが興味出ました?」
「別荘だな、これから行く国の、拠点になりそうな家なら安ければ買っても良い」
「あー先々の事を考えるのもいいですね」
少なくともまだ二か月はここに滞在予定だけど、
逆に言えば二か月を過ぎたら他の国へ旅立つ可能性は十分だ。
「続きましてはムームー帝国の、海の見える別荘です!」
巨大パネルに描かれた別荘はなかなか立派だ、四階建てか。
「しかも広々とした土地がついており、好きに使って構いません!
別棟を建てるもよし、海水のないプールを作るもよし!
それではまず白金貨百枚から始めましょう! さあ、始めますよー!」
司会のおばさんもノッてきている、まあいつもか。
「それではまず、白金貨百枚から!」
「ニィナさん」
「ああ、一度、あげるだけあげてみるか」
「じゃあ僕が」
と1111番の札を高々とあげる。
「百枚!」
「はい白金貨百枚いただきました、他ありませんか? ありませんか?」
あれ? シーンとしちゃった、これはひょっとしてひょっとすると?!
「ないようですね、内容はありますがこれ以上のお声は無いようです」
変なシャレみたいなのやめて!
「それでは1111番様、白金貨百枚で、らっくらっくのさっつさっつでっす!!」
決めポーズ取られちゃったあああ!!!
「ええっとニィナさん」
「ふむ、まあ良いではないか」
「は、はあ」
何か訳有り物件の予感が!!