第131話 学校の地下と職業訓練
アンジュちゃんが踊り子の訓練にピッタリな場所があるというのでついてきた学校、
一応、アンジュちゃんの普段の教室を一緒に見に行ってみると、
トランポリンとか輪投げとか絵本とかボールプールとかあって、うん、まあそういう事だ。
(いやいや意外と大切だよ)
アンジュちゃんは常識が何かわからない、
普通に普段過ごすにあたって見たらわかる常識、
言わなくてもわかる常識というのが欠落している病気が、
(いや、今は今更そんなこと言ってる場合じゃない)
とにかくいくらもう幻術師としての勉強はいらなかったとしても、
最低限の、生きて行くうえでの勉強をここであと二か月半受ける必要がある、
そういう意味ではこういう学校が、教室がある事は本当に感謝だ。
「デレスくん、こっちだよ」
「あ、うん、学校の地下だね」
連れてきた踊り子ふたりにはあえて説明しなかったが、
察する事はできたのだろうか、と思いながら地下へ、
来た時に挨拶した先生も今日は休みだから自由に見学して下さいって言ってたっけ。
「……ここでは転移しないんだねアンジュちゃん」
「うん、校舎の中は、しちゃいけないんだよ」
「偉いねえ、なでなでしてあげよう」
「えへへへへ」
そういえば南国の姫って勉強ちゃんと受けてたんだろうか、
教育係は居る、居たんだろうけれど、学力が気になるところだ。
「ついた、よ」
「おお、ダンジョンの入り口だ」
「ここは、ちゅーとりあるダンジョン、だよ」
入った所に『チュートリアルダンジョン』の説明がある、
それぞれの職業に合ったダンジョンが設置されていて、
入り口でその職業用武器が置いてあり、敵も用意されていて、
地下三階のボスを倒して戻って来いと、うん、凄く親切だ、
そして扉が職業別に並んでいる、まずは剣士からだな。
「デレスくん、開けてみて」
「え? うん、わかった……あれ、開かない」
鍵とか必要なのかな?
「その職業の人でないと、開けられないん、だよ」
「なるほど、そういう仕組みに」
「あっちに勇者の扉があるよ、開けてみて」
ここだけ豪華だ、手をかけるとあっさり開いた!
入ると自動で魔光灯がつく仕組みらしい。
「おお、入ってすぐにプリンスソードとプリンセスソードが置いてある!」
ただ劣化版らしい。
「この先にスライムがいるよ、地下二階はポイズンスライムだよ、
地下三階はジャンボスライムで倒せばクリア、だよ」
「クリアになるとどうなるの?」
「先生に褒められるよ、ちゃんとボスの魔石を持って行かないといけないんだよ」
なるほど、なんとなくここって人工物というか人工ダンジョンで、
魔物なんかは召喚したもののような気がする、
というのも入った武器の部屋に魔石回収箱があるからだ。
(ここへ入れる事でダンジョンで勝手にまた魔物を召喚するのかな)
「それにしてもアンジュちゃん詳しいね、勇者と一緒に入ったの?」
「ううん、全部、一通り全部、入って見てまわった」
「どうやって」
「こうやって、だよ」
と杖を握ると無詠唱で瞬間移動、
みんなして別の部屋に来た、いや別のダンジョンか、
同じような内装だが色が少し違うし置いてある武器も斧だ。
「ここは戦士の部屋かあ」
「瞬間移動で、全部見たよ」
「いくつあるの?」
「んー、他の場所も合わせたら、百八、かな」
「ひゃ、ひゃくはちって!」
そんなにあるんだ!
「あ、それで踊り子の部屋もあるんだ」
「別の校舎、だよ」
一旦外へ出て古い校舎の地下へ移動する、
こっちはあんまり使ってないっぽい。
「最初が幻術師の、ちゅーとりある、だよ」
「ほんとだ、ていうかこっちはアサシンとかレアな職業のチュートリアルか」
「そだよ、奥に行くともっとレアなんだって」
扉が並ぶ中、相当奥まで進むとあった、踊り子の扉だ。
「ここでボスを倒して戻ってくるといい、よ」
「敵は強くないんだよね?」
「二十なら平気なはず、だよ」
踊り子姉妹に促して扉を開けさせる、
一緒に入ると武器は、投げナイフか。
「ナイフが八本もあるね、錆びてない」
「ここは一階がダンシングボール、二階がプリズムボール、
三階のボスがエクストリームボールって敵だよ」
「じゃ、いざとなったら助けるから、ふたりして戦ってみて」
ナイフを手にしながら心配そうな姉妹。
「あの、本当に助けていただけるんですよね」
「このナイフを使わないといけないのですか?」
「んー訓練だからね、もちろんファイアーダンスも使って良いよ」
こうして後ろから見守る、
元々、儀式のために踊りはやっていたようで、
そこそこの身のこなしで丸っこいだけの敵を倒す倒す。
「えいっ!」
さくさくナイフが刺さる、
回収が面倒だけどその余裕は十分にある。
「ファイア!」
炎もしっかり当たる、
正式な魔法名称はファイアーダンスだけれどファイアーだけで省略して放てるみたいだ、
このあたりは踊り子の特性なのかもしれない。
(姉ナタイラも妹ライリアも動きが、身のこなしが抜群に良いな)
ちなみに妖精の指輪はいまライリアさんだ、
こうして一階、二階の敵を倒しいよいよ三階のボス部屋へ。
「ふたりとも協力して、しっかり倒してね」
「わかりました」「はいっ」
ナイフを四本づつ持って身構えたふたり、
僕が扉を開けてあげようとしたが開かない、ここもか、
するとナタイラさんがゆっくりと押すと中にでっかい丸い物体だ!
「エクストリームボール、ぐるぐる回る、よ」
「ライリアは私の後ろへ」「お姉様、回り込んできます!」
改めて戦闘態勢を整えて敵と対峙した褐色姉妹!
さあ、踊り子姉妹の連携をしっかり見せてもらおう。