第130話 オークション三日目の休憩時間と午後の予定
「ニィナさん、とりあえず午前の狩りは終わりました」
「うむご苦労、どうだった」
「はい、しっかり厳しめ戦闘させた結果、踊り子姉妹をレベル二十まで上げてきました」
……本当はサキュバスの群れにガッチガチに護らせて、
アンジュちゃんが九割以上の敵を倒したなんて言えないが、バレててもおかしくない。
「そうか、それで魔法は」
「ファイアの強化版ですね、四段階まで、正確には『ファイアーダンス4』と言う魔法までです」
「そうか、少し待ってくれ、頼んでいたローストビーフが来た所だ」
ここはオークション会場である地下の食べ放題ビュッフェ、
今日、三日目の出品者ではなかったものの初日、二日目の貢献で特別に入れてもらっている、
そしてついさっき、出品者になってきた所だ。
「ん……結局、魔物は冒険者ギルドでの買い取りで済まされる事はなかったのか」
「はい、アルラウネリーダーとアルラウネ三匹のティムですからね、
最後の追加オークションに出したいなら出していいよって感じでしたが」
「売れなくても冒険者ギルドが買い取ってくれるから良いが、なぜわざわざ」
「思いついた時は三日目出品者になればこの地下でまた食事できるかもって思ったからですが、
その、ちゃんと奴隷の分の食費とか宿泊費を奴隷の手で作らせたかったとでもいいますか」
「自分の食い扶持は自分でというやつだな、言いたい事はわかった、少し食べるのに集中する」
ちなみにアルラウネは植物系の魔物で、
生きた獲物に抱きついて養分を吸い取る食虫植物系モンスターだ、
特に人間の男を好み……あとはまあ妄想して下さい、はい。
「僕もサラダいただきますね」
ちなみに他のメンバーは着いた早々にとっくに食べ始めている、
姫様ふたりもお伴が居ないため自分で一生懸命に取りに行っている、
例のおっかさんとかいたら『姫に何てことさせるんだ』とか言いそうだが奴隷だし。
(ヘレンさんはリューイさんに甲斐甲斐しく世話してるなあ)
言えばこっちの世話を優先するだろうが好きに食べていいって言ったからね、
ちなみにケルピー三頭は宿のティムモンス小屋へ帰したので
バウワー爺さんが餌の水草をあげているはずだ、久々に元気なあいつらと組めて良かった。
「ただいま、だよ」
「おかえりアンジュちゃん、食事中にいなくなってたけど、どこ行ってたの?」
「ここの上で売っているお弁当買って、お留守番の奴隷のみんなに持って行ってた」
「あ、そうか、バウワー爺さんやペロちゃんや南国組の残り九人の、お昼ご飯か」
「うん、前の宿の所には、三十個持って行った、よ」
おじいさんや獣人少女には一個で十分な量だけど、
ソラミタカ国だかのあの姫以外の女性連中はひとり二個でも足りないだろうからな。
「アンジュちゃんはもういいの?」
「いっぱいたべた、よ」
「良かった良かった」
「それでね、踊り子に戦わせる、良い場所があるんだ」
「え、アンジュちゃんが知ってるの?」「うん」
どこだろう、アンジュちゃんお奨めの場所って。
「この後、あのふたり連れて、行ってもいい?」
「うーんアンジュちゃんとあのふたりだけかあ、ちょっと心配かな」
「じゃあデレスくんも」
踊り子に良い場所っていうのが凄く気になるな、
でもこれからオークション後半だし、こういう時はニィナさんに聞こう、
ローストビーフを貪り終えた所で僕はわざわざ胸元に入って訪ねる。
「ニィナさんニィナさん」
「なんだデレス、そんな所に入るならデレスも食ってしまうぞ」
「なんですかその表現、アンジュちゃんが姫様ふたりの狩りで良い場所を知っているそうで、
連れて行きたいらしいんですが心配なので僕も一緒で良いですか?」
「それは構わないがオークションの後ではまずいのか?」
「んー、僕は大して不動産に興味ないし、アルラウネの落札額は後で聞くので、すぐ行って良いですか?」
お水を飲みほして落ち着くニィナさん。
「わかった、アンジュがまた変な落札しても困るしな、行ってきても良いがコロメには気を付けろよ」
「はい、ってオークションに来てないんですか?」
「いたな、ただ午後も居るかどうかはわからないからな」
気を付けろと言われても非奴隷宣言してるから僕やアンジュちゃんは大丈夫そうだけど、
奴隷の横取りとか考えてるかもしれない、奴隷商の免許持ってるみたいなこと言ってたし。
「わかりました、コロメに限らず警戒はしておきます」
オークションに来てるって事はコロメも地下で食ってるのか?
見回すといた! クラリスさんの隣で普通にケーキを食ってる、
奴隷少女に運ばせて……シカーダちゃん一個くらい摘まんで食べたら良いのに。
(会話してる気配はないから、たまたまかな)
僕はアンジュちゃんの所へもど……あれ? いない?
と思ったらアンジュちゃんがシカーダちゃんにケーキを持っていってあげてる!
気持ちはわかるけど何言われるか、シカーダちゃんも困ってる。
「ちょっとウチの奴隷にちょっかいかけないでよ」
「す、すみません、こらアンジュちゃん!」
コロメに謝るのはシャクだけどこれは仕方ない、
僕は慌ててアンジュちゃんを回収して部屋の隅へ。
「アンジュちゃん、気持ちはわかるけど」
「……ボク、あの子、助けたい」
「うーん、そうは言ってもなあ」
そもそも人を騙して奴隷にして使い潰したりするタイプだ、
とはいえヘレンさんのお仲間をオークションに出した訳だから、
お金で解決つかない訳ではなさそう、でもなあ、あんな奴になあ……
「アンジュちゃん、蟹もぎ師って、強いの?」
「わからない、でも、手掛かりはある、よ」
「え? どんな?」
「踊り子を育てる所にも、ある、よ」
「いったいぜんたい、どこに連れて行くつもりでいるの?」
アンジュちゃんが知っている狩場って、どこだろう?
「学校の、地下、だよ」
「地下にダンジョンがあるの?」
「そうだよ、名前が確か、ちゅ、ちゅー……」
チュー?!
「ちゅうと、なんとか、ダンジョン、だよ」
(中途?!?!?!)
まあいいや、食事が終わったらとりあえず行こう。