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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
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第125話 亡国の姫達とその行き先

存在自体をすっかり忘れていた褐色の女性達、

なんだっけソルビアンだかなんだかだった気がする国の、

戦争で負けて売れそうな女性だけ奴隷出品されたのを、

アンジュちゃんがついうっかり落札しちゃったんだった、しかも白金貨二百枚で!


「ごめんなさい皆さん、色々と先にする事がありまして、こんな時間になりました」


さすがに機嫌悪そうな少し恰幅の良い熟女が前に出る。


「とにかく姫に何か食事を」


見ると広げた服の上に座っていたふたりのお姫様、

姉妹なんだっけ、ほんと、何もかも片付けられちゃって、

展示の時の敷物すら持っていかれちゃったのか、

水は最悪、お手洗いで飲めば良いがきっとお腹も空いているだろう。


(まだ開いてるお店あるかな)


アンジュちゃん、ぼ……あ、やっぱ待って!


黙って飛ぶのは良くないと、皆に言って歩いてついてきてもらう、

ちゃんと回収しましたよと関係者入口で告げぞろぞろ外へ。


「アンジュちゃん、冒険者ギルド地下の食堂へ」

「……まだ人がいたら危ないよ、ぶつかる」

「あ、そっか、じゃあ歩いていこう」


そんなに距離ないし、と大衆酒場へ徒歩で。


「姫、足下をお気を付け下さい」


なぜかアンジュちゃんが先頭で地下へ潜り進む、

お店は……うん、やってる、日付変わってもやってるんだよなここ。


「奥にスペースは、あーまだ片付いてないのか」

「私達が」


姫様以外の褐色女性たちが頼まれてもいないのに勝手に片付けはじめた、

そしてテーブルを拭いて姫ふたりを中心に座った。


「メニューはこれですね、好きなのを頼んで下さい」

「全部だ」

「え」

「書いてあるの全部だ」

「は、はい、すみません店員さーん」


あとはみんなでムシャムシャガブガブ、

お酒も全種類頼んじゃったけどちゃんと呑めるのかな、

と思ったが姫以外がこれまた呑む呑む、

こんな状況でも褐色の姫ふたりはお上品に召し上がってらっしゃる。


「アンジュちゃんは甘いものばかり食べてるね」

「べつばら、だよ」

「ずいぶんと時間差の別腹だね」


(じゃあ、僕も少し果物を食べよ)


こうして奴隷達の胃袋を満たし、

えっ十一人であんなに食べてこのお値段?! な額の金貨銀貨銅貨を払ったあと、

とりあえず東Aエリアの新しい宿へ。


「アンジュちゃん、お願い」

「……だいじょぶ、だっけ?」

「え? あ、うん、全員奴隷で所有物扱いだから」


その言葉に安心したのか瞬時に飛び、

受付嬢に一時的だからと断わりを入れてニィナさんのもとへ。


「なんだ、やはり飼うのか」

「飼うって!」

「すっかり捨ててきたのかと思ったぞ」


(何でそんなに辛辣なんだろう?)


「皆さん改めまして、私は女神教の聖女クラリスと申します、健康状態に不安のある方は私まで」

「では姫を」


恰幅良いおっかさん(勝手に命名)に指示され姫さんふたりがクラリスさんについていく、

他の部屋で健康診断をするのだろう。

僕はニィナさんに疑問をぶつける。


「知ってて置いてきたんですか?」

「デレスが忘れていたようだったからな、所詮、その程度の存在だ」

「……マリウさんから僕を救出するネタにしようと」

「まあな、流れでそうなった、あとは」

「あと、何かあるんですか?」


と、褐色女剣士を見るニィナさん。


「そいつが私のデレスに色目を使ったからな」


あー、根に持ってたのかー!

それであえて置いてけぼりに。


「あら、私は」

「いま奴隷に発言は認めていない!」


容赦なく隷属の首輪を締めるニィナさん!

女剣士がひとしきりじたばたした所で許してあげたようだ。


「それでデレス、こいつらをどこで飼うのだ」

「ええっと、どうしましょう、とりあえずは今夜の宿ですよね」


ここは物理的に無理だ、廊下で寝かせるにも邪魔だし。


「あそこが、いい、よ」

「アンジュちゃん、あそこって?」

「ここの前の、とこだよ」


ああ、東Dエリアのスイートルーム!

あれまだ借りてるんだっけ、妙に綺麗になってたけど。


「でもあそこって、確か定員八名だったような」

「八名分にチップをはずめば何とかなるだろう」


ここで首を絞められていた女剣士が挙手する。


「なんだカミーラ、発言を許す、言ってみろ」


あ、そうそう、オークションで聞いていたなあ名前、他は思い出せないけれど。


「わたしが残ります」

「残ってどうするのだ」

「こちらのデレスさまの夜伽を」


うっわ勇気あるなあ、また絞められるぞ、と思ったらニィナさんの声は僕に向けられた。


「などと言っているが、どうする」

「いや僕は、そんなつもりで買った訳では」


というか、落札しちゃったのはアンジュちゃんだし!


「ニィナさんはいいんですか」

「デレスが望むなら致し方ないが、相応の嫉妬はさせてもらう」

「それ、めっちゃ怖いんですけれども」

「確かに恐怖を感じるだろうな」

「えっと、スイートルームに詰めてもらいましょう、

最悪、一階にひとり個室があったはずなので、そこ借りれば」


と話がまとまったと同時に姫さん姉妹がクラリスさんに連れられ戻ってきた。


「身体的には問題ありませんでしたが、おふたりとも精神的疲労が、特に妹さんの方が」

「よし、急いで休ませた方が良いな、アンジュ」

「あい」


と、いきなり東Dエリア宿の三階テラスに飛ばされた!

座っていた僕はすてーんと豪快にコケる!


「デレスくん、だいじょぶ?」

「言ってよ、いきなりすぎるよ!」


と、中に入ろうとすると鍵がかかっている。


「アンジュちゃん、下の外へ転移して」

「はあい」


とまあ、きちんと宿の正面へ。

フロントには人数が増えた分のお金と多目のチップでなんとかなり、

とりあえず明日の朝食代も支払った、

質に関してはアレだが量でしのいで貰えれば。


(ていうか国が敗れたのが悪い!)


そして一応、部屋を案内すると、おっかさんが姫ふたりを一番良い部屋へ。


「しばらくはこちらで我慢してくだされ」


いまのセリフは僕じゃなく、おっかさんだ。

そしてそれぞれ別の部屋へ、うん、僕とアンジュちゃんはまるで居ないみたいだ、


(これなら東Eエリアの、掘っ建て小屋みたいな宿でもよかったかな)


とはいえ奴隷の扱いで主人の品格がわかるとどこかで聞いた、

それに心底疲れているのだろう、

出て行こうとするとカミーラさんが今度は下チラのサービスをしてくれたが、

僕のこれからの行き先を思うと、そんなのどうでも良い。


「アンジュちゃん、……の……まで飛んで」

「えっ」

「やり残した事があるんだ、お願い」


少しの沈黙ののち、

僕とアンジュちゃんは夜景の綺麗な食事部屋についた、もちろん真っ暗だ。


「ごめんねアンジュちゃん、ありがとう」


と、やさしくキスをする。


「えへへ、じゃあ、帰るね」

「うん、おやすみ」


瞬間移動で消えるアンジュちゃん、

そして僕は寝室をノックする。


「大変遅くなりました、デレスです」

「お待ちしておりましたわ」


入るとベッドに横たわる、小さなドワーフの姫が。


「マリウさん」

「お優しいデレス様の事です、きっと戻っていらっしゃると信じていましたわ」


こうしてこの夜、僕は自分を殺した。

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