第121話 感動の再会と後処理をしないといけません
二日目オークションが終わり、僕らは地下へ奴隷の受け取りに来た。
「リューイ!」
「おおヘレン、助けてくれたんだね、ありがとう」
「あぁリューイ、愛してる、例え裏切られたとしても!」
ヘレンさんがあまりに熱烈に抱きついているもんだから、
リューイさんがちょっと引いている気がする、でも他のふたりは助かったって顔している。
(それよりキューピーたちは……いたいた!)
僕は僕でミリシタン大陸で仲間だったティムモンスター、
ケルピー三頭のうち一番興奮しているパッピーの首元に抱きつく!
「お前ら、大変だったなぁ」
「ブヒヒン! ブヒン! ブヒヒヒヒンッ!!」
キューピーとクーピーも鼻頭をつけてきたり舐めたりしてくる!
「よーしよし、めっちゃ白金貨使ったけど、またこうして一緒になれて良かったぁ」
でもこの使った白金貨はパーティーとしてのお金だ、
まだ白金貨が千枚近くあるとはいえ、僕の我がまま、
個人的感情で買い戻したティムモンスターだ、だから……
「みんなありがとう、これはどう返せば良いか」
「なに、デレスのためだ、誰も文句は無いだろう」
「そうですわ、それにデレス様がいたからこそ稼げた白金貨ですもの」
「……この子たち、乗って良い?」
「アンジュちゃん、遊ぶのは後にしようね」
下見の時にも見たテイマーがやってきた、
あいかわらずサーカスの団長にしか見えない。
「ご購入ありがとうございます」
「はい、それでテイマーは……」
ヘレンさんを見るもまだ泣きながら再会にひたっている、
僕の言葉に勘違いしてか隷属の首輪をつけたテイマー爺さんが連れてこられた、
下見のときに別件、別件と騒いでいたのを思い出す。
「Aクラステイマーでこれでも実力は確かのようです」
でも狩場へ連れていくには不安な感じだ、
高レベルならせめてヘレンさんくらいは、たくましい身体であって欲しい。
「私はデレスと申します、このケルピーは元々、
僕がミリシタン大陸で仲間がティムした魔物です」
じいさんはまだ何かを警戒しているみたいだ。
「……ワシはどうなるんかのう」
その言葉にサーカス団長が説明する。
「いかがなさいますか、すでにこのテイマーの料金もいただいていますが」
「あ、テイマーはいりませんってできるんでしたっけ」
「はい、その場合は明日の、オークション三日目の最後にまとめて余りを次々と売るので、
そこでの開始落札価格を今すぐお返しいたしますが」
腐っても、いや老いてもAクラステイマーか、
ずっとケルピーと一緒に居るなら見張りでつけておいてもいいかな。
「ニィナさん」
「ああ、別に良いのではないかな」
クラリスさんも良さそうだ、
アンジュちゃんはどうでも良さそう。
「じゃあ買います、お爺さん、名前は」
「バウワーじゃ」
「じゃあバウワーさん、基本はヘレンさんが世話しますが、
そうでない時とか留守番の時はお願いしますね」
あ、なんだか安心した表情になった、
ちゃんと丁寧に、丁重にお迎えしなければ。
「さてこれで、っといけないいけない」
部屋の端っこで壁に背をつけしゃがんでいる猫獣人少女、
貴族に引き取られる超巨乳猫獣人に手を振られても気づかない、
不安いっぱいの表情は今にも泣きだしそう。
(あ、ニィナさんが近づくと凄く怖がった! ここは僕か)
と思ったらアンジュちゃんが近づいて撫でてあげる、
すると抱きついた! あ、泣きだした、しかもみゃあみゃあと。
(アンジュちゃん、ちゃんと濃い青髪を撫でてあげてる)
ネコミミがピクピク動いてる、かわいい、
僕も近づいて怖がらせないように話しかける、
相手はまだ十歳だもんな、身長は僕とアンジュちゃんとさほど変わらないけど。
「ペロちゃん、だよね」
「……ふみゃあ」
「もう大丈夫だよ、お家に帰りたい?」
「ふみゃ、みゃ?」
「とりあえず隷属の首輪を外してもらうよ」
と奴隷商の所へ行くと話は少しややこしいらしい、
ニィナさんが色々と詳しく聞いてくれる。
「今すぐは無理なのか」
「はい、オークションで買った奴隷に人の良い落札者が騙されて、
首輪を外したとたん逃げられる事象が昔から多くありまして」
「なるほど、それで五日は外せないという訳か」
「左様でございます」
見極める期間というか、冷静になる期間だな、
僕はペロちゃんの頭を撫でながら説明する。
「ごめん、首輪はまだ外せないみたい、五日待ってね」
「……みゃう」
「はは、落札したデレスだよ、お家に帰りたいならできるだけ早く返してあげる」
「……ふにゃあああああ」
「な、泣かなくても、そんなに泣かなくても」
「よしよし、だよ」
アンジュちゃんが強めに抱きしめてくれている、
ここは女の子同士に任せよう、十九歳と十歳だけど。
(年の差姉妹みたいだな、種族違うけど)
あ、どエロエロなサキュバスを引き取ってるサブギルマスのガネスさんだ!
「おーう! ニィナスターライツの面々、ごっくろーさーん」
「すごいですね白金貨千枚」
「おう、すまねえな、どうしても手数料や税金で、そっちにゃ八百五十枚しか行かねえ」
「あ、そうなんですか! 額が額だけにちょっと痛いかも」
「なあに、良い知らせがある、今すぐにでも西冒険者ギルドへ来てくれ」
ご褒美かな?
「……予想はつくな」
「わかるんですかニィナさん?」
「ああ、さっさと済まそう」
ヘレンさんは元お仲間たち三人を引き連れ、
テイマーのバウワーさんは僕の元仲魔ケルピー三匹を連れ、
クラリスさんは猫獣人少女ペロちゃんの手を握るアンジュちゃんを連れ、
僕はニィナさんに連れられてコロシアムを後にするのだった。
(あれ? 何か忘れているような……???)
ま、いっか。