第119話 オークション二日後半開始とヘレンさん一安心、アンジュちゃん大失態
「落札ぅーーーーケテーイ!」
お昼は今日も地下ビュッフェで済ませ、
後半最初のミリシタン大陸産、目が妙に血走った、
緑の怪獣みたいなティムモンスターが落札された、
崖に登る特殊スキル付きらしい。
「ヘレンさん落ち着いて、落ち着いて」
「あぁ、リューイ、私のリューイ、私だけのリューイ……」
「恋人は頑張って落札しますから」
こんなにも愛し合ってるのに、
ニィナさんよく僕にヘレンさんを抱けなんて言えたもんだ。
「続きましてはドワーフの出品でございまーーーす」
隷属の首輪を着けられた、
白い髭をたくさんたくわえたドワーフだ、
アンジュちゃんに鑑定させようかと思ったが説明を聞こう。
「こちらの犯罪奴隷はデグダと申しまして、鍛冶屋としてのスキルが……」
よくよく考えたら出品奴隷って名前まで晒されるのか、
有名だったり知り合いだったりする事があるからかな?
良く似た別人を落札して、しまった! ってならないためにか。
「それでは最初は金貨五百枚からぁ……」
「白金貨十二枚!」
僕が聞き覚えのある女ドワーフの声!
場内が大いにどよめく、ちょっとフライング気味だったけど!
「はい、いきなりいただきました!昨日も今日も、
最初で勝負を決めに来る落札者の多いこと、多いこと!」
そういう流れができちゃったからね、
でもあのドワーフの一団の正体というか、
真意がわかった気がする、あれはお仲間を救出する部隊だ。
「よござんすね? どちらさまもよござんすね?
それでは白金貨十二枚でぇ、らっくさーーーーーっつ!!」
確かに同じ種族の人が落札した方が良いに決まってる、
だから朝に落札した獣人少女も僕じゃなく獣人落札者の方が良かったのかも?
ちょっと気軽に落札しちゃったかな、もう遅いけど。
「続きましてはティムモンスター、男性落札者が楽しみに待っておりました、
ラミアの出品でございます! あ、ちゃんと胸は隠しておりますので」
うん、ラミアっていうと上半身裸のイメージがある。
「しかもこれはラミアの中位種、マジックラミアでございまして、
二時間程度なら下半身を人間と同じに変形する事ができます!」
おおーーーと盛り上がる男性陣、うん、僕の声も混じってた、てへ。
「お母様に内緒で、恋人に内緒で、奥様に内緒で、こっそり購入も大歓迎!
それでは金貨六百枚から、スタートスタートォ!」
「七百枚!」「八百枚!」「八百五十枚!」「八百六十枚!」
最後の言葉は僕である。
「おいデレス」
「冗談ですよ、冗談」
「八百八十枚!」「九百十枚!」「九百九十枚!」「白金貨……」
うん、ちゃんと流れて行った。
「ほら大丈夫だったでしょう?」
「今回だけにしておけ、ヘレンがおろおろしている」
「大丈夫ですよ、間違って落札しても白金貨は豊富にありますから」
そして普通に落札されて行った。
「さあ、ここからの奴隷は複数になります、まずは元Cクラスのパーティーから」
「リューイ!」
思わず立ち上がるヘレンさん、
後ろの邪魔になるので慌てて座らせる。
「この三人、全て個人でもCクラスとなっておりまして、
魔法使いでありますリューイはレベル31、
僧侶のハオはレベル28、背中に巨大な弓を背負いしウィングはレベル25となっております、
そう、この本人特注の巨大弓も付いております、さあ、まだ若い将来有望な三人ですよ!」
あーまずい、これは高くなるかも?
「それでは最初は、な、ななんと、白金貨一枚からのぉ……開始でえっす!!」
「白金貨十二枚!」
またもどよめくコロシアム、
なぜかマリウさんの第一声と同じ金額にしちゃった。
「さあこれは皆さん手が出せないか? 出せるか? 出せないか?
考え中の札もありませんか? ありませんか? ありませんね?」
ヘレンさんが祈りながらリューイを見ている!
「それでは白金貨十二枚で、落札を、確定したします!」
「あぁ、あああぁぁ……ありがとう、ございます」
良かった、これでとりあえずヘレンさんの件は片付いた、さあ、次は僕だ。
「続きましてはなんと!アサシンの出品です!」
「シューサーくん?!」
「えっ、アンジュちゃんの知り合い?!」
「……ちがった」
「なんだ、びっくりさせないで」
まあアサシンなんて装束に身を包めばみんな似たようなもんだからな。
「彼はスターリ島の犯罪奴隷で名を……」
こうしていよいよオークションも終盤を迎え、
本日の、二日目オークションの目玉へと突入するのであった。
「それでは皆様、おまたせ、おまんたせいたしました!」
おまんたせって!
「ここからは審判のとき……そう、ジャッジメントですの!」
ですのって! いま、ですのって言ったよね?!
「二大目玉出品、いえ、三大目玉出品の登場です!
まずは亡国のお姫様とでも言いましょうか、超良品揃いです!」
ぞろぞろと美女美少女九人が連れてこられた。
「ネクニュカマー諸島、ここにはかつて、つい最近までカルマソル国がありました、
しかし戦争で敗れ、国は亡び、戦勝国に捕らわれた生き残りの姫とそのお伴が今回の出品となります」
可哀想だが仕方ないよね、だって戦争だもの。
「それではそれぞれを紹介していきましょう、
まずはこの背が高く見栄えのする女剣士、風属性の武器が得意な……」
あ、僕に胸をチラ見させてちょっと舌出してた女剣士だ!
名前はカミーラっていうのか、興味がない訳でもないが、まあ一時の興奮で買うのは危険だ、
っていうか買う予定ないし。
(悪戯でも札上げるのは、やめておこう)
一通り紹介が終わり、いよいよである。
「それでは広報も十分だっただけあり、買いたい方も多いでしょう!
まずは軽く、かるーく、白金貨を人数にあわせ、九枚から!」
「二十枚!」「三十枚!」「五十枚!」「七十七枚!」「九十枚!」
やはり盛り上がる盛り上がる、
うん、これなら「九十一枚!」って言っても普通に流れそうだ。
「九十五枚!」「百枚!」「にひゃくまぁ~~い!」
えっ?!
その声の主に驚く、
いつのまにか僕から札を手にしていたアンジュちゃんが、
浮きながら勝手に声を上げたからだ、しかも二百って?!
「はいー大口来ました! 後、続きませんか? 続きませんか?
そちらの皆さんも、先ほどまで競っていた方も、もう構いませんか? 構いませんね?」
沈黙するコロシアム、そして……
「はい白金貨二百枚で、落札確定、確定ぃーーー!!」
「アンジュちゃん!」
「?????」
「何してくれているんだよおおおおおおおお!!!」