第111話 打ち合わせと?????
「……と、いう事があったんですよ」
「ふむ、それは俗に言う『ハイエナ』だな」
「なんですかそれ、魔物の名前でしたっけ」
例のひと騒動が終わり、
夕食を済ませて例の地下情報屋に来た、
コロメの情報を逆に知ってるだけ知らせた方が良いと思ったからだ、
今日は珍しくリーダーではなく僕が中心になって会話している。
「おそらくそれは門の中が全滅するのを待っていたな」
「じゃあ中に入れなかったんじゃなく、入らなかったと」
「中が戦闘中ならアイテムを仕込まない限り入れないのは事実だ、だが……るせえ!」
確かにうしろでアンジュちゃんがヒョウくんとじゃれあっているのがうるさい、
後ろの取りあいっこみたいだが、年頃の男女がして良い火遊びでは無い気がする。
「全滅すれば中に入れますものね」
「ああ、それだけの大所帯なら装備品を回収して逃げるだけで大儲けだろう」
「でも門と準魔王の間は随分と開いてましたから、一度入ると外へは」
「それこそ出られるアイテムを持っていたんじゃないか? 用心深いなら尚更だ」
「あとは個人スキルですよね、アンジュちゃん、あのコロメって女勇者、鑑定できた?」
あ、アンジュちゃんがヒョウくんを押し倒す格好になってる、これはまずい!
「んーん、できなかった」
「え、なんで?」
「んっと確かね『鑑定隠匿により表示されません』って出てた」
あーそんな個人特殊能力を持っているのか、
アイテムの可能性もあるけれども。
「ふむ、そうなると相手を上回るしかないな」
「え、店主さん、どういう」
「アンジュは鑑定を持っているのだろう、なら相手のレベルを上回れば見破る事ができる」
「なるほど、ならアンジュちゃんを強化すれば!」
「ただ、大丈夫か? そちらさんのパーティーで一番強くなるかも知れねえぞ」
言いたい事はわかるけれども、
すでに特殊能力的には『そうなっています』と言ってもおかしくはない。
手招きするとすいすい浮いてこっちへ来る。
「アンジュちゃん」
「……なあにデレスくん」
「僕の事、裏切ったりしないよね?」
「……まさかぁ」
「うん、信じた、信じたからね」
頭をナデナデしてあげると嬉しそうだ。
「えへへ」
「わかりました、とりあえずアンジュちゃんのレベルを上げます」
「今より強くなるのか、恐ろしいな」
ニィナさんは黙って聞いている、
クラリスさんはアンジュちゃんたちを見守り中、
ヘレンさんは心ここにあらずという感じだ。
「それで冒険者ギルドの思惑がわかりません、
なぜあんなに気前が良いのか、ミスがあったとはいえ」
「あーそれな、明日のオークションになったらわかるだろう」
「えっ?! それってどういう意味ですか」
「準魔王の魔石、丸っこい魔王部屋の鍵、あれ、できるだけまとめて売れって言われたんだろう?
できれば四つ全部揃えてオークションに出せと、それをスムーズにやらせるためだ」
あーそんなに早く魔王を退治して欲しいのか、
確かにここの所、冒険者が多いせいもあって魔物が活発化しているらしいからな。
「結局、三つしかなくてふたつは権利が分かれてますけど、
もうひとつオークションまでに無理して手に入れた方が良いでしょうか」
「明日朝までにか? 無理するな、冒険者ギルドの思うつぼだ」
「はぁ」
「そもそも四つ全部売って新たな準魔王が生まれるまで、どれだけ時間がかかるか、わからねえぞ」
「確かに、転移で入るにしてもどこに何があるかわからないから最初は門をちゃんと開けたいですね」
と、ここでニィナさんが何かに気付いたようだ。
「そうか、そういう事か」
「気付いたか、そうだ、それはそういうことだ」
「……冒険者ギルドもなかなかやるな」
何かニィナさんと店主だけで納得している、
いやヘレンさんもいつのまにかこっちの世界に戻ってきて頷いてるし。
「あのニィナさん、どういう」
「今更どうこうできん、モノは商業ギルドに渡してあるからな」
「はあ」
「明日のオークションを見ていればわかるだろう」
「そうですね、あと二日目の、奴隷とティムモンスターのオークションなんですが……」
と、なぜか店主にもつきあってもらって作戦会議、
結果、最後の準魔王を初日オークション後に倒す事となった。
「最後の魔石は売らない方向ですね」
「ああ、オークションが全日終われば間を置いて、準備が整ったら魔王退治へ行こう」
「ちなみにお前さんたち知ってるか? 三日目の最後に初日二日目に間に合わなかったアイテムや、
落札されたもののトラブルで無効になった物が出てくる事がある」
「あー、そんな事があるんですか」
「だから三日目の不動産オークションの時も一応、最後くらいは見ておいた方が良いぞ」
うん、ありがたい情報だ。
「それでコロメの情報は、こっちからはもうあまり出ないが、
奴隷になっている少女、シカーダについては少しわかった」
「さすが情報屋! お願いします」
「ああ、十五歳でな、この自由都市とは離れた海辺の街に住んでいて、
病気のお母さんの薬代を稼ぐために来たようだ、それがなぜか奴隷にされていた」
「酷い話ですね、ただ、とても冒険者には見えなかったですが」
「それがわからねえんだ、ポーターで登録しているが職業が隠匿されているらしい」
あーコロメの隠匿能力はパーティーにも使えるのか、
ならかなり高レベルかもしれないな。
「……ボク、見たよ」
「アンジュちゃん?!」
クラリスさんが驚いて変な声で呼んじゃった。
「あのね、あのシカーダっていう子の職業はね……」
みんなが注目する中、発せられた職業は……!!
「蟹もぎ師、だよ」
(????????????)