表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
107/866

第104話 脅威の魔力と謎の軍団

「みてみて! これ、すごいんだよ!」


 夕方の西地区冒険者ギルド、

 学校が終わって瞬間移動でやってきたアンジュちゃんと合流だが、

 例の『ベルベットデビルロッド』を持って興奮気味に話す、

 いやローブのフード被ってる上に顔を陰で隠す魔法使っているから、

 表情は見えないものの動きと声と息遣いで大興奮なのはあきらかだ。


「マスターちゃん、どう凄いの?」

「見てて、見てて」


 クラリスさんの声に長杖をスマイルハンドメイドの皆さんにかざすと、

 五人の身体をふわりと浮かせると天井近くまで上げる、無詠唱である。


「こ、これは! これは凄いけど、危なくないですよね?」

「お兄ちゃん怖い!」


 次の瞬間、パッと地上へ降ろす、今度は瞬間移動だ!

 さすがのニィナさんも驚きの表情でアンジュちゃんに確認する。


「つまり、その杖で魔力が上がったおかげで、パーティの一員でなくとも、

 誰でも浮かせたり、瞬間移動させる事ができると」

「うん! ベルベットデビルロッドを持ってないとできないけれどねー」

「それは他に誰かに見せたか?」

「学校でやってみせたよー、学校で気付いたのー」


 あ、これニィナさんとしてはそんな凄い性能のアイテム、

 秘密にしたかったんだろうな、でも下手すれば過去イチで混んでいるここで、

 あんなことしちゃったんだからもう無理だろう、本人はしゃいじゃってるし。


「これは凄いな、なあデレス」

「はいニィナさん、何が凄いってこれで準ボスやボス部屋に誰でも……あ」


 これ以上は言っちゃいけない!

 何かごまかさないと。


「そうだヘレンさん、飛ぶサキュバス出してください、二体とも」

「……冒険者ギルドのロビーですが」

「いいからいいから! あとア……マスター、これって両方持てる?」


 右手に死神の鎌、左手にベルベットデビルロッドを持たせる。


「んー、使いにくい!」

「同時は無理かあ、じゃあ杖は背中に回して、そう、ローブを通してひっかけて、

 鎌を持って構えて……よし、じゃあ浮いて! サキュバスも!」


 今度はアンジュちゃんとブリーズサキュバス、ゴールデンサキュバスが宙に浮く!

 それを見て思わずはしゃいでしまう僕!


「すっごいすっごい! 見てくださいニィナさん、完全に謎の、悪の一団ですよ!」

「そうだな、空中に浮いた小柄な謎の幻術師が大きく禍々しい黒い鎌を構え、

 背中には黒く長い杖、そして背後に控えし二体の空飛ぶサキュバス、完全に魔王だ」

「かっこいい! マスター! かっこいいですよ!」


 僕の囃し立てた声におそらくご満悦の表情で鎌を振る、

 いやもちろんポーズだけなので闇の刃は出さないというか

 冒険者ギルド内は魔法結界で攻撃魔法のたぐいは出せないようになっている、

 逆に浮遊や瞬間移動はいいんだ。


「セッキさんどうですか!」

「うん、勝てる気がしないね」


 異様な悪の一団に冒険者ギルドもどよめく、

 たったいま入ってきた冒険者グループの女の子なんか悲鳴あげてへたりこむぐらいだ。


「あ、ごめんなさい、別に魔王がメッセンジャー送り込んできた訳じゃないんです!

 ということで皆さん、普通にうちのパーティーのメンバーとサモンなので、

 ダンジョンで見かけても攻撃しないでくださいねー、よろしくお願いします!」


 いやでもほんとうに痺れるくらい素敵な、邪悪なオーラに見える!

 魔王でなくても魔王の側近が一瞬にしてこの冒険者ギルドに現れて

 年齢性別不明な声で『我々には逆らうな……警告はした』とだけ言って、

 また一瞬にして消えてしまうような悪の幹部、うん小説で読んだ!

 攻撃してきた衛兵をその鎌で首刎ねて逃げて行くような奴、実際見ると、めちゃくちゃかっこいい!!


(そして正体は女性で夜、ベッドに侵入して来て主人公か味方の男が

 裏切るように唆されてムニョムニョ、とかイケナイ妄想が広がる!)


「ニィナスターライツのみなさ~ん、冒険者ギルドを一瞬にして魔王部屋にするのはやめてくださーい!」

「すまない、うちのメンバーが悪ふざけした! マスター、もういいだろう、ヘレンもサモンをしまってくれ」


 ハイテンション受付嬢にややマジトーンで注意され慌てて撤収する、

 アンジュちゃんは楽しかったみたいで鼻息荒い、

 見てた冒険者たちから色々な感想が漏れ聞こえてくる。


「あんなの弓とか絶対当たらねえだろうな」

「うちのパーティーなら一瞬で首をあの鎌に持っていかれるよ、まとめてな」

「いや絶対魔王だろう、感じ取れる闇のオーラや魔力が凄まじかったぞ?」

「あれが噂の謎の幻術師か、二百歳くらいでアンデッド化してるんじゃないのか」

「面白い、模擬戦を申し込んでやろうじゃないか、絶対得られるものは大きいはずだ」


 並んで暇だったのかワイワイガヤガヤ楽しんでもらえたみたいだ。


「うおーいお前ら目立ちすぎ、こっちこーい」


 わざわざやってきたサブギルマスのガネスさんにアンジュちゃんの首根っこが掴まれる!

 抵抗できなくなったワイルドキャットみたいにぶらーんってなってて面白い、

 多分、危険性はないってアピールなんだろうけどそのままサブギルマスルームへみんなついていく。


「なんなんだあのアピールは」

「おそらくデレスに何らかの意図があったのだろうが後でお仕置しておく」

「ひいぃ」


 セッキさんたちも苦笑いだ。


「で、用件は何だ、騒動を起こしてまで俺を呼びつけたかったのだろう」


 ちょっと怒ってるのかなトーンが凄く真面目だ。


「そういう訳でもなかったのだが、以前ざっくりとしか教えてもらえなかった準魔王、四種類とも調べてきた」

「ほう、確かに言ったな『ヤバい岩系モンスター、ヤバい火の鳥、ヤバい原人、ヤバいサキュバス、

 情報は以上だ、四種類、それぞれに合った準魔王を攻略してくれ』と、あえてそれだけしか言わなかったが」

「名前は『ロッキードラゴン』『マグマフェニックス』『ミステリーマジカルウパー』『ヴィクトリアサキュバス』で良いな」

「ああ、何かわかったか?」

「こちらが仕入れた情報によるとだな……」


 とはいえほぼ、僕がモヒトさんひとりから聞いてきた情報なのだが。


「ふむ、少々不完全な部分もあるな」

「答え合わせは良い、情報を全て教えてくれ」

「慌てなさんな、あえて雑にしか情報を教えなかったのはこちらの一方的な情報で先入観を植え付けたくなかったんだ、

 さっきの情報にしてもマグマフェニックスはまるで全魔法が効かないような言い方だったが光魔法と闇魔法は効く、

 それに正直、倒せていない敵だ、各所から様々な情報や発想で攻略法を見つけて欲しかった、意地悪していた訳じゃねえ」


 サブギルマスも色々考えているんだな。


「確かにこうこうこうすれば倒せる、などという情報があれば、もうとっくに倒せているのであろうな」

「ギルドを通さないで冒険者の間だけで流れる情報もある、真偽は見極める必要はまあ、あるにせよ、

 しかしだ、最初に話した時点でもっと詳細な情報を、と聞かれたら答えていたぞ?」

「それは確かにだな、いや我々もそこまで早く行くつもりはなかった、詳細は後で聞けばと思ってしまった」


 あと僕の個人的な重い話の直後だったから、そっちに気がうつってたのもあるかも。


「それでどれをまず倒す?」

「全部だ」

「全部?」

「四種類とも、今夜からでもだ」

「何をそんなに急いでいる、オークションか」


 個々の所、装備にお金を使っちゃったからなあ、

 あと僕の精神をすり減らした、うん、大事な物をゴリゴリ削られた消失感がある。


「オークションで冒険者が多くて狩場が混んでいるというのもあるがな」

「わかった、では本気の打ち合わせをしよう、まず最初にどれから討伐する?」

「人数がかからないのは、まずはだな……」


 こうして小一時間打ち合わせをしたのち、

 今夜中にまず準魔王を一体倒す運びとなったのである。


「……よし、では頼んだ、そうそうあともう一件あったのだが」


 終わって出ようとする所をガネスさんに引きとめられる。


「例のアンデッドから出てきた隷属の首輪だが主人の名前が出てきた」

「えっ、誰ですかそれは」


 思わず聞いた僕に出された名前は……


「勇者コロメだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ