第100話 まさかの交換とオークション初日準備
僕たちだけでなくスマイルハンドメイドの皆さんも『レア魔石』に色めき立つ。
「これがあの、伝説の、レア魔石ですかぁ、確かに透明度が違う」
触ろうとするのをサブギルマスのガネスさんが腕で制する。
「これは所有権で揉めるぞ、あんたらも一緒に戦っていたんだろう」
「あの、我々は見ていただけですが、それでもさすがにこれは」
うんわかる、気持ちはわかる、とんでもない大金だもの。
「セッキどうする、オークションで売ってその金を折半するか」
「ニィナさん少し待って下さい、我々で今から緊急会議します」
そう言って部屋の角で五人なにやらひそひそゴニョゴニョ、
いかにさわやかパーティーといえどこれに喰いつかない訳がない、
むしろ『我々は本当に見ていただけなので分け前はいりません』と言われたら良心的に困る、
「デレス、交渉は任せてくれるな?」
「はい、ニィナさんこういうの得意そうですからね」
「いやデレスがやさしすぎるだけだ、見方によっては気が弱いと言えるがな」
そうですか、はい、多分そうです。
セッキさんたちがモニョモニョしている間にサブギルマスが僕らに話しかける。
「いやあ、エリクサー自体めったな事ではオークションに出ないが、
その一番の材料っていうだけでも、とんでもない目玉になるな、
ただ、もうひとつ買えない材料があってだな、それがここでは手に入らない……」
「すみません、『カイラクオジサンの枕』ですよね、それもうオークションに登録してあります」
「なにっ?!」
本当に驚いた声を出すガネスさん、
話中だったスマイルハンドメイドの皆さんもこっちを見る。
「実はオークション初日、何を出そうかと商業ギルドで相談したとき、
ミリシタン大陸のダンジョン都市で手に入れたのがひとつ余っていまして、出しました」
「おいおいおい、それじゃあふたつ揃えてウチへ、冒険者ギルドへ出せば」
「はい、時間とお金はかかりますがエリクサーができますね」
さすがに二日後のオークション初日には間に合わないだろうけれども。
「本当かよ! いや、むしろオークションなんか出さず作って持っておいたらどうだ」
「んーでもすでに商業ギルドに渡しちゃってますし、オークションで買いたいものもあるので」
「あー例のケルピーか、そこまで言うのであれば構わんが……」
と、ここでスマイルハンドメイドの皆さんの話が終わったらしい。
「決まりました、ニィナさん」
「なんだ、いくら欲しい」
「いえ、さっきまでお貸しいただいていた鎌、あれをひとつください」
そう来ましたか!
という感じである。
「デレス、どうする」
「んー、四つもありますから、ひとつならいいのでは」
「よしわかった、セッキ、それでレア魔石の権利はこちらでいいな?」
冒険者ギルドのサブギルマスの前で頷いてるから、
これで後からどうこう言われないだろう、言いそうな人たちでもないし。
「これで良いな、詳しい説明はアンジュにしてもらおう」
「ありがとうございます! ヤス、これで個人のCクラス昇格も近いな!」
「はい、こんな凄い武器をいただいて、感謝です! ううっ」
そんな泣かなくても。
「話はついたな、レア魔石を受け取ってくれ」
「感謝する」
「正直、エリクサーにしてから二か月のオークションまで待った方が間違いなく高く売れるのだが」
「そうかも知れないがデレスがどうしてもケルピーを落札したいらしいのでな、デレス、そうだな?」
「んっと、一旦、商業ギルドと相談しましょう」
売れる物の整理をまずはしないと。
「話は以上だ、レベル確認的な手続きならここで……」
「我々は良い、セッキ、そちらのパーティはここですると良い」
「はい、ではまたあらためて夕方に、ですよね」
握手で一旦別れて僕らは商業ギルドへ、
とその前に昼食だ、僕らは大衆向け何でもありの食堂へ入る、
注文し待っている間にニィナさん主導で確認だ。
「あらためて商業ギルドで、二日後にオークションに出す物の確認だ、
すでに例のマクラは渡してあるが違約金を払えば回収できる、
逆に例の魔石とセットで売ってもらうという手もあると思うのだが」
どこで誰が聞いているかわからないからマクラと魔石としか言わない、
それでもわかる人が聞けばピンと来るだろう、枕はすでに展示されているらしいし。
「あとは例の鎌だな、後衛の魔力系にとってある意味万能武器だ、高く売れるだろう、
他に何か売れるものは無いか? デレス、心当たりは」
「あっ! 幻術師の杖です、実は新たに三本見つけまして」
「十分だ、ここは売るのは一本に搾った方が良い、上手くいけば二本分の価値に上がる」
コレクション的な価値もあるからね。
「他に誰かあるか?」
クラリスさんは何もなさそうだ。
「あの……」
なぜかヘレンさんが控えめに手を挙げた。
「どうしたヘレン」
「……私のレベルを上げてもらって、ティムできるようにしてもらって、
魔物をティムして、それを、売りたいです」
あー確かにサモナーは高レベルになると
テイマーのようにティムモンスターの魔法が使えるようになるはず。
「それは良い考えだな、だが今回のオークションでなくてもよかろう」
「……はい」
「あ、待ってニィナさん! レア魔石を保留するなら、代わりとしては良いアイディアかも」
「そうか? ならとりあえず妖精の指輪はヘレンにつけるか」
「……ありがとうございます」
でもティムモンスター覚えたてだと、
そんなに強い魔物は手に入らないんじゃないかな?
「そうですわ、これはいかがでしょう」
とクラリスさんがアイテム袋から取り出したのは!
『キャー戦争よ! ラ●ラ●ブ! と血で血を洗う決闘よー!』
相変わらず意味不明の言葉を発する、
金髪ポーター人形、魔法少女デスデリカちゃんだ。
「クラリスさん、それ、さっき冒険者ギルドの床に転がっていましたよ」
「あら残念、処分できると思ったのですが」
処分って!!