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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
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第97話 喰えない素材と喰えない女

「なに、喰えんだと?!」

「はい、ダークネスワイバーンの肉や卵は毒です、

 なので肉は廃棄ですが卵は毒薬の材料になります、が、これだけ大量なのは……」


 戻った西冒険者ギルドで結構がっかりさせられた。


「ただ、羽化目前の卵に関してはテイマー部門が引き取るそうです」


 とはいってもそんなに高くはない。


「これはどうしたら良い」


 素材置場でもないのにイビルウィザードの死体を出す、うん、ちょっと嫌がらせかも。


「珍しい魔物ですので一旦引き取らせていただいて結果は後日」

「これを持っていたのだが」


 ニィナさんが幻術師の杖を渡す。


「……持ち主について調べさせてはいただきますが、

 アイテムドロップですのでお持ちいただいても構いません、

 一応、所有者が生きている場合もありますのでしばらくは売らないでいただけると助かりますが」


 そのあたりはモラル的な部分というか、あくまでお願いだろう。


「わかった、ただオークションに出すかもしれないぞ」

「その頃に何もなければ、もう売っていただいて構いません」


 とはいえ無くすにはあまりにも惜しい高性能だ。


「では魔石の方は」

「風魔石が沢山取れたな、デレス」

「はいはい、ほらこんなに」


 これまた嫌がらせのようにテーブルへぶちまける、

 って背が低いからこぼれた魔石が僕の顔にあたってちょっと痛い。


「そちらは素材置場までお願いします」

「ああ知っている」


 ダークネスワイバーンの肉が空振りになってイライラしてしまった、

 どうりであんなに居たはずだ、誰も狩りたがらなかったのだろう、

 今のところ唯一の成果といって良いレアは幻術師の杖だけか。


「セッキどうする、さすがにこれは金にして分けるか?」

「いえ、我々はイビルウィザードに関しては見学していただけですから、ただ」

「どうした?」

「また明日も一緒に組んでいただければ、と」

「わかった、午前からならアンジュは居ないがそれで良いな?」


 こっちはゴールデンサキュバスの育成でうっはうはだったけれど、

 スマイルハンドメイドの皆さんは明日、取り返したいんだろうな。


「では明日また来る」


 と言い残して勇者受付を去る、

 セッキさんたちとも今日はお別れかな?

 一緒に夕食して彼らのパーティー結成秘話とか聞きたいかも、

 ちょっとニィナさんと相談しよう、と歩きながら小声で話し掛ける。


「ニィナさんニィナさん」

「どうした」

「実はご提案が……」

「なんだ、言ってみろ」


(こっちがひそひそ声なのに、なんで返事の声が大きいのー?!)




「勇者デレス様」


 素材置場へ魔石とかなんやかやを渡し終え、

 さあみんなで外で夕食、と表へ出ると急に僕の前に立ち塞がったのはドワーフさんだ、

 髭が多くておじさんなのかおじいさんなのかそもそも何歳なのかわからない、後ろにもいっぱいいた。


「ひょっとしてマリウさんの」

「はい、姫がお呼びです、夕食もご一緒したいと」

「えっと、みんなの夕食をご馳走してくれるの?」

「……構いませぬが、その場合、デレス様のみ姫の部屋へ」

「ですってニィナさん、僕の奥さま、いかがなさいます?」


 その呼び方にまんざらでもない様子だ。


「オークションを控えて節約だな、

 だそうだセッキ、皆もこのドワーフ様が奢ってくださるそうだ」

「おお、それはありがたいですね、そのお姫様の手の甲にキスしたいくらいです」


 いや、それはやめておいた方がいいと思うよ、わりとマジで。


「わかりました、それではついてきてくだされ」


 そう言って例の、おそらく西地区一番の宿屋へ連れて行かれる、

 どのみち鍛冶を頼んだアイテムがいっぱいあるから行かない訳ないのに、

 そう思いながらドワーフさんたちに囲まれている僕らは微妙に変な感じだ。


(僕やアンジュちゃんはともかく、ウチの背の高い女性陣にはこれ、意味あるのかな)


 護られてるにしては頼りないし、

 囲まれてるにしては易々と突破できる、

 この謎フォーメーションはドワーフの文化か何かなんだろうか?


「アンジュ、それは何の遊びだ?」

「……ぎりぎり浮いて進む遊び、だ、よ」


 足が僅かに浮いてすいーーって滑っている、

 器用だな、ちなみに幻術師の杖を持たせてある。


「いやあ助かりますね、地上は入り組んでいますから、道案内助かります」


 さわやかに言ってのけるセッキさん、

 さすがナイスフォローである、やっぱり勇者として人ができている。


「見えてきたな、あそこだ」


 よく見ると宿の名前は『ムーンライトホテル』か、夜の逢引宿みたいだ、

 そう思うとこのあとの流れが自然にわかってしまう、とちらりニィナさんを見る。


「どうした」

「……愛しています」

「知っている」


 後ろから持ち上げてぎゅっと抱きしめられる、

 大きなぬいぐるみにでもなった気分だが心地よい力だ。


(あーこのままマリウさんに会って反応を見たい気もする)


 宿に入ると魔導昇降機に乗せられ、

 三階で止まる、ここは特別な高級レストランがあるらしい、

 みんなが降ろされるも僕だけ引き留められて上へ行くみたいだ。


「ニィナさん行ってきます」

「ああ、また朝、迎えに来る」


 うん、ニィナさんも『逆らえない流れ』をわかっているみたいだ。


(まあ仕方ないよね)


 六階、最上階のVIPスイートまで来ると

 ここまで案内してくれたドワーフさんがノックしてくれた。


「姫、お連れいたしましたぞ」

「ありがとうございます」


 促されて僕だけ入ると、

 綺麗なお姫様の服装になったマリウさんが居た、

 とはいえ腕の筋肉と背の低さでまるで似合っていない、は失礼か。


「その、加工していただいた武器をいただきにきました、ついでに食事も」

「お待ちしておりましたわ、ささ、こちらへ」


 さすがVIPスイートとなると食事専用の部屋まであって、

 料理は三階レストランの厨房まで繋がっている小型魔導昇降機で上がってくるそうだ、

 得意満面にマリウさんが教えてくれた、食事を並べてくれるのは人間のメイドさん。


「勇者デレス様、今日の狩りはいかがでしたか?」

「はい、良い事もあれば悪い事もあって、実は……」


 とダークネスワイバーンの群れやイビルウィザードを倒した話をする、

 ちなみに僕の食事はちゃんと野菜中心だ、前に僕の生い立ちを話したからね、

 ちょこんとこれだけなら大丈夫でしょう的なトッピングの肉もちゃんと美味しくいただいた。


「それは大変でしたわね、でも幻術師の杖が手に入って良かったですわね」

「うん、とんでもない効果だったから」

「でも、それは予備になると思いますわ、ふふ、楽しみにしていてくださいね」


 と高級料理を堪能し終え、

 メイドはみんな引き払って大きなリビングへ行く、

 窓の外はすっかり夜だ、と思って見たらそこにアンジュちゃんが浮いていた!


「ど、どうしたの」

「帰るね、デレスくんは、帰れないの?」

「……多分」


 と返事をすると


「……そっか」


 と寂しそうに姿が消えた、

 瞬間移動で消える時の表情は寂しそうだった。


(アンジュちゃんのケアもしないとな)


 そう考えるとクラリスさんもだけれどあれでかなりタフだしなあ、

 なーんて窓の外をぼーっと眺めていたらマリウさんがアイテム袋を持ってきた。


「まずはこちらからです」

「おお、鞭と鎌!」

「アイテム名も変わっているはずですわ」


 うん、黒豹の鞭は『漆黒の鞭』に、

 牙の鎌四本は全部『死神の鎌』になっている、

 見た目も両方、黒さが増している感じだ。


「ありがとうございます、凄いですねこれ」

「どちらも三段階まで上げてあります、

 鎌は僧侶、魔法使い、賢者、幻術師が使えますが、

 見た目の通りコレクションアイテムとしての価値も考えて加工しましたわ」


 確かに牙と爪を組み合わせた感じの最初と違い、

 いかにも禍々しいオーラをまとった鎌になっている、闇魔石によるものだ。


「あとお約束の、アンデッドダンスドラゴンの骨から作った杖ですわ」


 おおー綺麗な白い杖二本とこれまた黒い杖二本、

 綺麗な模様が刻まれている、すごいなこれ、これも美術品レベルだ。


「両方、約束通り四段階まで鍛え上げました、

 骨素材は壊れやすいので大変でしたわ」

「ありがとうございます、効果は凄そうですね」

「代金は白金貨十二枚になります」


 素直にアイテムボックスから支払う、

 オークションまで待って貰えるって話だったけれど、

 払える時に払っておいた方が良いとはニィナさんと意見が一致した、

 うん、超大金だけどそれ以上の価値は間違いないし。


「ありがとうございます、こちらにサインを」

「え?あっはい」


 こういうのはちゃんとしている、

 どさくさまぎれに結婚誓約書とかじゃないよな、と見返すも大丈夫そうだ。


「さてここからはあくまで余った骨で造ったおまけなのですが」

「はいはい」


 と言ってやたら彫り込みが凄い杖が二本出てきた、

 きらきら半透明に輝く光のオーラをまとった長いクリスタルの杖と、

 漆黒というより暗黒と呼べるような、闇のオーラをまとった長い杖だ。


「こ、これは!」

「六段階まで仕上げた『クリスタルエンジェルスタッフ』と、

 『ベルベットデビルロッド』です、効果は絶対驚くと思います」

「これ、一本の骨で造ってないですよね?」

「そうですね、三本を組み合わせて融合しました」


 これ絶対、とんでもなく高価だ!!


「い、いくらですか」

「さしあげます」

「え」

「無料です」

「いやいやいやいや」


 窓際へ行ってカーテンを閉めるマリウさん。


「私の、気持ちです」

「これは行きすぎですよ!」

「でしたら私の気持ちが行きすぎというだけですから」


 僕の胸元に入り込んでくるマリウさん。


「そ、の、か、わ、り」

「はいぃ」

「ね? ご、ほ、う、び、ください」


 僕は怖さを感じながらもその気持ちに身体で応えたのだった。


(うわ~、これ絶対、無料がタダで済まないやつだぁ)

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