他愛のない会話
「もしもさ。」
「うん。」
「もしも、一つだけ超能力が手に入ったらさ、どうする?」
「え、なに急に。」
「まぁまぁ、あんまり深く考えず。」
「なんかの心理テスト的な?」
「そんなんじゃないって。」
「じゃあなに?」
「だから、別に意味なんてないって。なんとなく?ふと気になってさ。」
「ふーん。」
「で、どうよ?超能力。」
「いや、どうよ、って言われてもねぇ。それに、なんかその言い方だと、あんたがくれるみたい。」
「あ、いいね。じゃあそういう設定でいいよ。えー、こほん、わしがお前に一つだけ超能力を与えてしんぜよう。」
「急に爺さんになったし。」
「ほれ、望みを言うのじゃ。」
「うーん、じゃあねぇ...。
テレポート...」
「おっ。」
「は嫌だなぁ。」
「嫌なのかよ。」
「だってさぁ。色んなところ行けちゃうでしょう?」
「そりゃテレポートだからな。っていうか、それがいいんじゃないのか。」
「そんな、どこでも好きなとこ行けちゃったらさ。どこに行けばいいか、わかんなくなりそう。」
「うーん、そうかな?好きなところ行けばいいと思うけど。」
「それは、そうなんだけど。でもさ。うーん、伝わるかわかんないけど。」
「うん。」
「例えば、テレポートできるヒーローがいたとするじゃない?」
「まぁいそうだな。」
「それって、すごい、大変じゃない?」
「うーん、なにが?」
「だってさ、それだと、皆を救わないといけない気がしない?」
「みんな。」
「そう、皆。だってどこにでも行けるんだから。だから本当だったら考えなくてもいいような、地球の裏側の人、ううん、もしかしたら、別の惑星の人のことも考えなくちゃいけないかもしれない。多分、困っている人は、どこにいてもそのヒーローを頼りたくなるんじゃないかな。瞬間移動できるんだし。」
「おーなるほど。」
「ま、つまり力には責任がともなう、的な?そういうこと。」
「ふーん。まぁ、そうかもなぁ。」
「でしょ。」
「で?」
「で、ってなによ。」
「なにって。テレポートが嫌だっていうのはわかったから、じゃあなにがいいのって話よ。」
「うーん。」
「...。」
「いらない、かな。」
「え、ここまで来て?」
「うん、いらない。今のままがいいよ。」
「今のまま?」
「そ。もし今がずっと続いたら、それで充分超能力でしょ。」
「急にそれっぽいこというね。」
「でしょ。」
「うーん、そんなもんかね。」
「うん、そんなもんだよ。」