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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第二章 学園で楽しく過ごしたい!
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報告会とむーちゃん

「そろそろ夕食の時間ですか……むーちゃんと過ごしていると時間があっという間に過ぎていきますね!」

「むー?」


 わたしが膝に抱えたむーちゃんの前足を持って遊んでいると、セレスタお姉様の声が後ろから聞こえて来た。


「あら、クリスにエメラル。それにスピネル様もごきげんよう。皆でお話ししていましたの?」

「セレスタお姉様!」

「とりあえず夕食を受け取ってきてはいかがかしら? 早く行かないとカウンターが混雑してしまいますわよ」

「それもそうですね! スピネル、エメラルお兄様! 行きましょう!」


 わたし達が夕食を受け取って戻ってくると、他のきょうだいも全員が揃ってテーブルについていた。皆が何か言いたげな顔でこちらを見てきたので、わたしは慌てて席に着く。


 わたしが着席して姿勢を正すと、皆を代表してアレキサンダーお兄様が口を開いた。


「さて、それじゃあ今日の出来事についてクリスから説明して貰おうかな」


 最近は元気がなかったアレキサンダーお兄様も少し元気になったようで、わたしのことを心配そうに見つめてくる。


「もちろんです! アレキサンダーお兄様!」


 アレキサンダーお兄様の言葉を受けたわたしは今日起こった事件について、きょうだい皆に説明を始める。


 課外活動で森に向かったこと、スファレという女に襲撃されたこと、むーちゃんに助けてもらったことなどを説明しながら食事を皆で食べると、話が終わる頃には夕食も殆ど終わっていた。


「――ということで先ほどお父様にも連絡して、魔獣が急に出て来た原因などを調べてもらっているところです」

「そうか……クリスもスピネルもむーちゃんも良く頑張ったね」

「……ありがとうございます。アレキサンダー殿下」

「む~」


 話を聞いたアレキサンダーお兄様はニコリと微笑んでスピネルとむーちゃんを褒めてくれる。まさか褒められるとは思っていなかったのかスピネルは複雑な表情で礼を言っているが、その一方でむーちゃんはエメラルお兄様に毛繕いされて幸せそうに鳴いている。


 そんなむーちゃんを横目に見ながら、セレスタお姉様がわたしに顔を向ける。


「それで? クリスを襲撃してきたスファレという者が誰かは分かりませんでしたの?」

「残念ながら名前以外は分かりませんでした……着ていたローブも制服とは違う物だったので、どこの国かも分かりません」

「そもそも学生なのかな?」

「恐らく学生だと思いますよ、エメラルお兄様」


 エメラルお兄様がテーブルに置いたむーちゃんを撫でながらそう言うが、間近に接したわたしは学生ではないかと思っている。背格好や声の感じからして若い女性であることは間違いないだろう。


 わたし達がスファレの正体について頭を抱えていると、カーネリアお姉様がむーちゃんに優しい目線を送りながら口を開いた。


「それにしてもむーちゃんがいてくれて助かったな。まさか、氷魔法を使えるとは思わなかったぞ」

「氷魔法は水魔法とは違うのですか?」


 わたしが首を傾げると、カーネリアお姉様が緩く首を横に振る。


「水魔法でも氷を作り出すことは出来るんだ。だが、攻撃に使うとなると固有魔法や高等魔法でないとできないと言われている」

「そうだね。私もそんな話を聞いたことがあるよ。むーちゃんは氷の固有魔法が使えるのかも知れないね」

「むーむー」


 アレキサンダーお兄様にそう言われたむーちゃんは、違うと主張するように首を横に振った。わたしはもう一つの可能性についてむーちゃんに尋ねてみることにした。


「もしかして……高等魔法で氷の攻撃魔法を使ったのですか!?」

「むい!」


 むーちゃんは無邪気に前足を上げてわたし達に答えてくれたが、それを見た一同は開いた口が塞がらないようだ。わたしも同じだ。


「まさか高等魔法まで使えるなんて……すぐに空を飛べるようになったから魔法が上手なのは分かってたけど……」

「ああ……俄かには信じられないな……」

「使い魔が高等魔法を使えるなんて聞いたことがないぞ! 凄いな、むーちゃんは!」

「むー!」


 ヘリオドールお兄様がテーブルに座っていたむーちゃんを両手で抱き上げると高々と掲げる。むーちゃんが嬉しそうに足をパタパタと動かしているのを見ていると、横で溜息を吐いているスピネルの姿が目に入った。


「高等魔法まで使えるなんて……俺はむーちゃん以下なのか……」

「安心してください、スピネル様。わたくしも同じ気持ちですわ……」


 セレスタお姉様も一緒に溜息を吐いてスピネルを慰めているので、わたしも一緒にその輪に加わることにした。


「分かりますよ! セレスタお姉様、スピネル! むーちゃんに先を越されて悔しいですよね!」

「むーちゃんが使えるってことはクリスもそのうち使えるようになるんだろう? 俺の気持ちは分からないだろうさ……」

「クリスはどちらかというとむーちゃん側ですもの。わたくしなんて攻撃魔法も使えませんのに……」

「スピネルもセレスタもそんなに落ち込まないでくれ」


 二人が俯いてしまったのを見たアレキサンダーお兄様は暗い空気を吹き飛ばすように口を開いた。


「クリスが全属性に適性があるのだからむーちゃんが使えても不思議はないだろう? スピネルは火と光の適性があるし、セレスタも回復魔法が得意なんだ。二人はこれから自分にしかできない魔法を探していけばいいんだよ」


 アレキサンダーお兄様がそう言うと二人は気を取り直したようで、顔を前に向ける。


「それもそうですわね、アレキサンダーお兄様」

「これからも頑張ります、アレキサンダー殿下」


 わたしは腑に落ちない気持ちでアレキサンダーお兄様を睨みつける。


「アレキサンダーお兄様! わたしには何かないのですか!?」

「クリスは好きにすればいいよ……」


 アレキサンダーお兄様は半ば諦めた様子で溜息を吐く。わたしが頬を膨らませていると、ヘリオドールお兄様がスピネルに声をかける。


「とりあえずスピネルは魔法の練習も兼ねて鍛え直しだな」

「ああ。今度私とヘリオドールと一緒に近くの洞窟に行こうか」

「はい、ヘリオドール殿下。カーネリア殿下もお手柔らかにお願いします。次こそはクリスを守り切れるように努力します」


 スピネルは完全に立ち直ったようで、カーネリアお姉様とヘリオドールお兄様と一緒に今後の予定を確認し始めた。


「セレスタ姉さんも気を取り直して。僕もまだ高等魔法は使えないから一緒に勉強しよう?」

「そうですわね、エメラル。一緒に頑張りますわ」


 セレスタお姉様も元気を出したようで楽しそうにエメラルお兄様と話し始める。皆が楽しそうにしている中、わたしはむーちゃんを抱き寄せて撫でまわす。


「わたしにはむーちゃんがいますから寂しくないです! むーちゃんもそう思いますよね!」

「むー……」


 わたしに撫でまわされているむーちゃんが呆れたような鳴き声を出すと、見かねたアレキサンダーお兄様が声をかけてくれた。


「クリスもこれから魔法を研究して、自分にしか使えない魔法を考えてくれ」

「分かりました! わたしも頑張って魔法の研究を進めていきますね!」


 わたしが笑顔を向けると、アレキサンダーお兄様は苦笑してわたしを見つめてくる。そうして皆で話しながら賑やかで楽しい夕食の時間は過ぎていった。


 夕食を終えたわたし達は寮の階段を上って自分の部屋へと戻っていく。


「クリス、また明日な」

「はい! また明日です、スピネル! お兄様達もお休みなさい!」


 男性陣と別れた後、自分の部屋の前に到着したわたしとセレスタお姉様はカーネリアお姉様にも就寝の挨拶をかける。


「それではカーネリアお姉様、お休みなさい」

「ああ、クリスもセレスタもお休み。特にクリスは疲れただろうからゆっくり休むんだぞ」

「カーネリアお姉様もゆっくりお休みくださいませ」


 カーネリアお姉様はわたしとセレスタお姉様の頭を軽く撫でると、自分の部屋に入っていく。少し名残惜しく思いながら扉に鍵をかざして開けると、部屋で待機していたローゼがわたし達を出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、セレスタ様、クリスティア様」

「ただいま戻りました、ローゼ!」


 わたしはローゼに挨拶するとお茶会用のテーブルについて一息吐く。


「今日は疲れましたね、むーちゃん……」

「むー!」


 むーちゃんはまだまだ元気なようで足をピコピコ動かしている。そんなむーちゃんを見てわたしは頬をツンツンと突いてじゃれ合う。


「むー!」

「何を言っているのか分かりませんよ~」


 わたしはそう言いながらむーちゃんを抱き寄せ頭を優しく撫でてあげる。すると、わたしの頭の中に声が響く。


「頭を撫でるのは嬉しいけど、頬を突くのはやめて欲しいな……」

「え!?」


 わたしはその声に驚いてキョロキョロと辺りを見回す。その様子を見たセレスタお姉様が不思議そうな顔でわたしを見つめてくる。


「どうかしましたの? クリス」

「いえ、今誰かの声が聞こえた気がして……」


 わたしがキョロキョロと辺りを見回していると、腕の中にいるむーちゃんがペシペシと前足で叩いてくる。


「それはボクだよ、クリス」

「え!? むーちゃんが喋っているのですか!?」


 わたしはギョッとして腕に抱えていたむーちゃんを持ち上げる。むーちゃんはわたしに抱えられたまま話を続ける。


「そうだよ! さっきクリスに魔力をたくさん分けてもらったでしょ? そのおかげでクリスとも話せるようになったみたいなんだ」

「ええ!?」


 どうやら先ほどの戦闘の際、大量の魔力をむーちゃんに流したことで意思の疎通ができるようになったようだ。とは言え、むーちゃんが喋っているのはまだ慣れない。


 わたしがそんな思いを込めてむーちゃんを見つめていると、不思議そうな顔をしたセレスタお姉様がわたしに声をかけてくる。


「クリス、先ほどからどうしましたの? 一人で驚いているようですけれど……」

「セレスタお姉様には聞こえていないのですか!?」


 驚いたわたしがむーちゃんに話しかけると、むーちゃんは前足を上げて答える。


「ボクはクリスの使い魔だから。クリスとは話せるけど他の人には聞こえないのかもしれないね」


 むーちゃんはそう言うとフワフワと宙に浮かび、少し離れたところでむーむーと鳴き始めるが、わたしにも何を言っているか分からない。わたしが首を傾げていると、浮かんでいたむーちゃんはわたしの腕に戻ってきて再び話し始める。


「あまり離れるとクリスとも話せなくなるみたいだね」


 むーちゃんは自分で考えて会話できる範囲を探っていたようだ。わたしが視線をむーちゃんに向けていると、セレスタお姉様が恐る恐る声をかけてくる。


「あの、クリス……? もしかしてむーちゃんとお話しできるようになったんですの?」

「そうみたいです……」

「凄いですわ! 使い魔とお話しできるなんて夢みたいですわ! むーちゃん! わたくしのことは分かりますの!?」


 むーちゃんと話ができると分かった途端セレスタお姉様がむーちゃんに向かって話しかける。


「セレスタだよね。いつもボクのことを可愛がってくれてありがとう!」

「クリス! むーちゃんはなんて言ってますの!?」


 セレスタお姉様がむーちゃんに話しかけているがセレスタお姉様にはいつもの鳴き声のようにしか聞こえていないようだ。とりあえずむーちゃんが言っていたことをセレスタお姉様に伝える。


「いつも可愛がってくれてありがとう、と言っています」

「まあ! むーちゃんは可愛いですわね!」


 そう言いながらセレスタお姉様はむーちゃんを撫で回している。そんなセレスタお姉様を見て、わたしもむーちゃんに改めて挨拶をする。


「これからもよろしくお願いしますね、むーちゃん!」

今回で二章は完結となります。

本作品を読んだ皆様が少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


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