牧場見学
「さあ到着しましたよ」
「わあ!」
アイスクリームを食べ終わったわたし達五人と一匹はランチャに連れられて、魔獣が飼育されている放牧場へとやって来た。可愛い魔獣を探しているドロッセルの華やいだ声が隣から聞こえる。
「凄いですわ! 魔獣がこんなにたくさんいるのは初めて見ますわ!」
ドロッセルはあちこちをキョロキョロと見回しながら楽しそうにしている。
「あちらの方にリントがいますし、こちらにはムイムイもいますわ!」
「見に行っても良いですか!?」
「もちろん良いですよ。ここにいる魔獣は温厚な子ばかりなので触っても大丈夫です。ただし乱暴に触らないように気を付けてくださいね」
わたしがチラリとランチャを見ると、ランチャは頷いて放牧場の柵を開けてくれた。
「ありがとうございます! ドロッセル、行きましょう!」
「はい!」
わたしとドロッセルは放牧場の中に入るとタタタっと駆け出し、ムイムイの群れの近くに到着した。ムイムイ達はこちらを興味深そうに見ていて、とても大人しい。
それを見たむーちゃんはムイムイ達に向かって鳴き声を上げる。
「むー! むむ、むい!」
「むー!」
むーちゃんの鳴き声を聞いたムイムイ達は感嘆の鳴き声を上げている。むーちゃんは何を言ったのだろうか。気になるが、むーちゃんに訊いたところで前足を上げて鳴くだけなので、とりあえず頭を撫でておく。
「む~!」
「む!」
むーちゃんが撫でられているのを見たムイムイ達がわたし達の近くに寄って来た。どうやらこのムイムイ達も撫でてもらうのが好きみたいだ。
「皆、このムイムイ達は撫でてもらうのが好きみたいなので、優しく撫でてあげましょう!」
「分かりましたわ!」
わたしはドロッセルや他の皆に声をかけて、ムイムイ達を可愛がることにした。
「ほら、こちらへいらっしゃい。怖くないですわよ……」
「むー」
まず一番初めにムイムイを撫で始めたのはドロッセルだ。恐る恐るといった様子で手を伸ばしていたが、ムイムイのフワフワした毛に触れると気持ち良かったのか、笑みを浮かべる。
「とてもフワフワしていますわ!」
「む~」
そのままドロッセルは優しく手を動かしてムイムイを撫でており、とても楽しそうだ。
「ミステルとシリウスもやってみたらどうだ?」
「む~」
そう言ったのはスピネルだ。スピネルは以前草原でムイムイに触れたこともあるため、特に恐れることなく普通にムイムイを撫で始めた。それを見た二人もドロッセルと同じように恐る恐る手を伸ばしている。
それを見たわたしもむーちゃんを撫でるのをやめて、牧場のムイムイを撫で始める。
「よしよし、可愛いですね~」
「む~」
「むー!」
牧場のムイムイを優しく撫でると気持ちよさそうな声を上げているが、むーちゃんは少し不満そうにしている。
「むーちゃんは後で撫でてあげますから少し待っていてください」
「む~」
「本当に君はムイムイと仲が良いんだね」
そう言って目を丸くしているのはわたし達について来たランチャだった。わたしを見るランチャは嬉しそうに笑っていた。
わたしはそれを聞いてむーちゃんを撫でてあげる。
「ええ! むーちゃんはわたしの大事な使い魔ですもの!」
「むー!」
むーちゃんがわたしの言葉に反応して前足を上げる。それを見たランチャはまた目を丸くする。
「君のムイムイは言葉が分かるのかい?」
「ええ、分かっているようですけど……普通は違うのですか?」
「普通は魔獣と意思の疎通は出来ないんだよ。でも、使い魔なら命令もできるだろうし、こちらの言葉も分かるのかもしれないね」
ランチャが言うには、ムイムイ自体がそこまで強い魔獣でもないので、普通の人はムイムイを飼っていても使い魔にすることはあまりないそうだ。
その上、使い魔の契約をすると自分の魔力を常に外部に流している状態になるので、魔力が足りなくなってしまうことが多いらしい。
わたしは魔力が多すぎて病弱だったくらいなのであまり意識したことがないが、確かに集中すると少しずつ自分の魔力がむーちゃんに向かって流れ続けているのが分かる。
使い魔のことを聞いたわたしは、ついでにむーちゃんのことも少し聞いてみることにした。
「むーちゃんは色々なところで変異種ではないかと言われるのですけど本当ですか?」
「う~ん……私は変異種を見たことがないから詳しいことは分からないな……」
ランチャは首をひねって考えたりしているが、変異種自体が珍しいのでむーちゃんが変異種なのかは分からないようだ。
「ただ、君のムイムイは成体にも関わらず随分と小さいし、目の色も普通のムイムイとは違うから、変異種だと思って間違いないかな」
「ありがとうございます! 本で調べたりもしてみたのですけど、あまり変異種についての情報がなかったので助かりました!」
わたしは笑顔でランチャに礼を言って、近くにいた牧場のムイムイを可愛がることにした。
「よしよし! よーしよしよし!」
「む~~!!」
それからしばらくの間、皆で魔獣と触れ合っていると、シリウスが申し訳なさそうな顔で話しかけてきた。
「クリス。そろそろ目的地に向けて出発しないと、時間までに到着できないかもしれません」
「え! もうそんな時間なのですか!?」
シリウスは頷いて自分の腕に着けた時計を指差す。確かにそろそろ出発しないと時間的に厳しそうだ。
わたしは名残惜しく思いながら皆に声をかけて集めると、ランチャの元へ向かい別れの挨拶をする。
「名残惜しいですが、そろそろ時間なので出発しますね!」
「とても楽しかったです」
「アイスクリームも美味しかったですわ!」
「皆にそう言って貰えてよかったよ。ここから高台まではそんなに遠くないけど、君達も気を付けて行くんだよ」
そう言ってランチャはわたし達のことを送り出してくれた。
「またいつでも来ていいからね」
「はい! ありがとうございました!」




