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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第二章 学園で楽しく過ごしたい!
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花冠とお花の精霊

 森の入口から離れてしばらくすると、木で覆われていた森が少しずつ開けてくる。ガサガサと揺れる葉っぱの音を聞きながら木々の合間を歩いていくと、そこには草原が広がっていた。


「草原に出ましたね!」

「ええ! 早く牧場に向かいますわよ!」


 わたしがそう言うと、ドロッセルも嬉しそうに頷いている。


「草原の風が心地良いな」

「ええ、綺麗な草原ですね」


 他の皆も普段は草原に出たりしないためか、少し楽しそうにしているようだ。


 わたしとドロッセルが早く行こうと後ろに声をかけると、スピネルが深呼吸をしながらわたしに話しかけて来た。


「なあクリス、ドロッセル殿下も。慌てなくても牧場はなくならないから、少し草原でのんびりして行かないか?」

「それもそうですね! 皆もそれでいいですか?」

「構いませんわよ! 草原も初めて来ましたもの! 折角なので少しゆっくり行きましょう!」


 皆で話し合った結果、草原に出たわたし達は一休みしてから牧場に向かうことになった。


「それとスピネル。わたくしのことはドロッセルと呼び捨てで構いませんわよ! クリスのお友達はわたくしもお友達ですもの!」

「それなら僕もミステルと呼んでくれ」

「私もシリウスと呼んでください」

「分かった。これからよろしくな。ドロッセル、ミステル、シリウス」


 それぞれの国の一年生代表と名前で呼び合うスピネルを見て、わたしも自分のことのように嬉しくなり自然と頬が緩んでいく。


「良かったですね、スピネル!」

「ああ。同じ一年生同士だし、これからもクリスと一緒にいるなら関わりも少なくないからドロッセルの提案には助かった」

「気にしなくて良いですわよ、スピネル! それじゃあ休めるところを探しますわよ!」


 わたし達は休めそうなところを探すために辺りを見回しながら草原を歩いていく。サクサクとした短い草の感触を楽しんでいると、遠くの方に花が生えているのを見つけた。


 その花を見て以前のお茶会で作った花冠のことを思い出したわたしは、横を歩くドロッセルに声をかけた。


「そうだ! ドロッセル、一緒に花冠を作りませんか?」

「花冠ですか? 作ってみたいですわ!」


 ドロッセルがキラキラと目を輝かせてそう答えると、他の皆も興味深そうにこちらを見ている。わたしはスピネルに目を向けて、男子はスピネルと作るようにお願いする。


「わたしに花冠の作り方を教えてくれたのはスピネルなのですよ! ミステルとシリウスはスピネルに教わって作ったらどうでしょうか?」

「いいのかい、スピネル?」

「もちろんだ。クリスやドロッセルより凄いのを作って驚かせてやろう」


 そう言ってスピネルとミステル、シリウスはワイワイと話しながら三人で花の生えている場所に向かう。わたしとドロッセルも三人に遅れないように歩き始めた。


 わたし達が到着した場所には色とりどりの花が咲いており、これなら色鮮やかな花冠が作れるだろうとわたしは期待に胸を膨らませる。


「どのような花冠が良いでしょう……ドロッセルは好きな色はありますか?」

「そうですわね……わたくしは赤が好きですわ!」

「それなら赤い花を少し混ぜて作りましょう!」


 わたしは手近にあった小ぶりな白い花と赤い花を集めて花冠を作っていく。


「まずはここをこうして組み合わせていくんです!」

「こうですか?」

「そうです! ドロッセルは上手ですね!」


 そうして二人でワイワイと話しながらいくつか花冠を作り終えると、スピネル達も完成したようだ。わたし達の元へやって来たスピネル達は花冠を手に持っている。


「クリス、俺達の花冠も完成したぞ」


 スピネルが手に持っている花冠には白い花に橙色の花が混ぜてあり、とても可愛らしい物だった。ミステルやシリウスもそれぞれ自分の好きな色を合わせて花冠を作ったらしい。


「僕は青い花で作ってみたがどうだろうか?」

「私は黄色で作ってみました」

「わたくしは赤を混ぜて作りましたわ!」


 皆それぞれの違いが出ていてそれを見ているだけで楽しい気持ちになって来る。わたしは皆の花冠を見回して笑顔を浮かべる。


「どれも可愛らしくて良いですね! わたしは白い花だけで作りましたよ!」


 わたしの花冠は白い花だけで作った物だ。基本に小ぶりな花を使い所々に大きい花を混ぜてあるので、白い花だけだがそこまで地味な見た目でもないはずだ。


 全員の花冠が出揃ったところでスピネルが首を傾げてわたしの方を向く。


「それで誰の花冠が一番なんだ? クリス」

「え? そうですね……それならむーちゃんに決めてもらいましょうか!」

「むー?」


 わたしがそう言ってむーちゃんを見ると、むーちゃんは自分が決めていいのかと言うような目をしてこちらを見てくる。


「ええ、むーちゃんが良いと思う物を選んでください!」

「むー!」


 むーちゃんは任せろと言うように一度鳴くと皆の花冠を見て回る。皆はむーちゃんに選んでもらうため声を出して自分の花冠をアピールする。


「わたくしの赤い花冠が華やかで一番可愛いですわ!」

「それなら僕の青い花冠も涼しい感じがしてかっこいいだろう」

「私の黄色い花冠も忘れないでください。こちらも綺麗な色で美しいですよ」


 三人が互いに自分の花冠の良さを審査員のむーちゃんに伝えていると、フワフワと飛び回っていたむーちゃんはミステルの花冠の前でピタリと止まった。


「僕の花冠が一番かい? むーちゃん」

「むー!」


 むーちゃんは一度鳴くと自分に花冠を乗せるようミステルの方へ頭を差し出した。ミステルは恐る恐るといった様子で花冠をむーちゃんに乗せる。


「むい!」

「ありがとう、むーちゃん!」


 むーちゃんが満足気に鳴いたので勝負はミステルの勝ちとなる。


「流石はミステルです! ボタニガルテンの王子なだけあって、植物を使うのが上手いのですね!」

「そんなに褒めないでくれ、クリス。今回は魔法も使っていないから、魔法を使えばもっと凄い物が出来たさ」


 わたしがミステルに賞賛の声をかけると、ミステルは照れくさそうにそう言った。それに対してドロッセルは首を傾げている。


「ミステルはそのような魔法を使えるんですの?」

「ああ、僕の固有魔法は『植物操作』だからな。花を咲かせたり植物を育てるのが得意なんだ」

「エメラルお兄様と同じ固有魔法ですね!」


 わたしがポンと手を打つとミステルも嬉しそうに頷いた。


「ああ、エメラル殿下は植物研究会の上級生だから良く知っている。この間も『植物操作』の使い方について色々教えてもらったんだ」

「そんな繋がりがあったのですね……! 何だか嬉しいです!」


 わたしはきょうだいが他の国にも影響を与えていることを知って嬉しくなる。


 ドロッセルにもミステルにも影響を与えているきょうだいを誇らしく思いながら、傍らを飛んでいたむーちゃんの頭を優しく撫でる。


「よしよし」

「む~」


 わたしがむーちゃんの頭を撫でていると、ドロッセルやシリウスは羨ましそうにむーちゃんの頭に乗っている花冠を見つめている。


「むーちゃん! わたくしの花冠も乗せてくださいませ!」

「私の花冠も一緒に乗せてくれると嬉しいな、むーちゃん」

「むいむい!」


 ドロッセルとシリウスがむーちゃんの頭に花冠を乗せると、むーちゃんは器用に花冠を首にかける。たくさん花冠を着けているむーちゃんを見て、わたしは小さい花冠を足に着けてあげることにした。


「もう頭には乗せられないので、わたしは足に着けてあげます!」

「それなら俺も小さい花冠を作ったから足に着けてやろう」


 足に花冠を着けたわたしを見て、スピネルも小さい花冠を足に着けてあげた。


「むいむい!」


 そうして五人の花冠を着けたむーちゃんは少し動きにくそうにしているが、頭や首、足にある花冠をとても喜んでいるように見える。


「こうして見るとむーちゃんがお花の精霊みたいに見えて、とても可愛らしいですね!」


 わたしが花でいっぱいになったむーちゃんをまじまじと見ると、むーちゃんは花冠を着けた足をピコピコと動かして楽しさを表現している。


 それを見たわたし達が笑顔になると、ミステルが口を開いた。


「そろそろ牧場に向かわないか? 休憩も十分できただろう」

「そうですね。私達の到着が遅くなると他の者も心配でしょう」


 シリウスの言う通りわたし達の班は国の代表者が集まっているので、あまりのんびりしているわけにもいかないだろう。わたしが頷くとそれを見たスピネルとドロッセルも頷いてくれた。


「そうだな。あまり遅くならないうちに牧場へ向かおう」

「花冠作りとても楽しかったですわ、クリス!」

「皆に楽しんでもらえたようで良かったです!」


 そうしてわたし達五人はお花の精霊となったむーちゃんを連れて牧場へと向かうことにした。

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