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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第二章 学園で楽しく過ごしたい!
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魔法学の実技

 ドロッセルとセレスタお姉様と楽しいお茶会を終えた翌日にはまた講義が始まる。朝の支度を終えたわたし達は食堂へと向かった。


「おはようございます!」

「おはよう、クリス」


 わたしがきょうだいに挨拶をすると、皆も笑顔で挨拶を返してくれる。今日は全員が席についているのでとても賑やかだ。


「おはよう、クリス……今日も元気そうだね……」

「そう言うアレキサンダーお兄様は何だか眠そうですね……」


 目の前にいるアレキサンダーお兄様は目を半分閉じたような状態で、起きてはいるがとても眠そうだ。


「心配してくれてありがとう、クリス。でも大丈夫だから気にしないでくれ……」


 アレキサンダーお兄様は心配しなくていいと眠そうに頭を押さえている。心配だが辛そうにしていたので、わたしもそれ以上は聞かずに他のきょうだいと話し始める。


「スピネル、初めての町はどうでしたか?」

「ああ、面白かったぞ! クリスが好きそうな雑貨屋もあったし、お菓子や料理の屋台、劇場なんかもあったな。あとは宝石屋もあったからむーちゃんの宝石を探すのもいいかもな」

「羨ましいです! 今度わたしも連れて行ってくださいね!」

「もちろんだ、クリス一人では外出させられないからな」


 昨日の夕食には顔を出していなかったスピネルだが、町は随分と楽しかったようだ。わたしはスピネルの土産話に耳を傾けながら朝食を食べ終える。


 朝食を終えたわたし達はきょうだい揃って一緒に講義棟まで向かうと、それぞれの教室に向かうために別れる。


「それでは、クリス。また夕食でお会いしましょう」

「はい、セレスタお姉様!」


 わたしとスピネル、むーちゃんが一年生の教室に到着すると、既に何人かの学生も到着していたようで席についている。


 その中からボタニガルテンのミステルがこちらに向かって歩いてくる。


「おはよう、クリス。今日もよろしく頼む」

「おはようございます、ミステル! 今日もよろしくお願いしますね!」


 挨拶を終えたミステルはわたしの横にフワフワと浮かんでいるむーちゃんに目を向けると、一度咳払いをする。


「ゴホン! 実はクリスにお願いがあるのだが……そのムイムイを触らせてもらえないだろうか?」


 ミステルがそう言った瞬間、彼の後方に居るボタニガルテンの学生達が目を輝かせたのが見えた。どうやらミステル本人ではなく他の子が興味を持っているらしい。


「そうですね……」


 わたしはチラリとむーちゃんを見る。むーちゃんも楽しそうにパタパタと足を動かしているので問題ないだろう。ミステルに向き直るとわたしは一度頷く。


「ええ、もちろんいいですよ! そちらの方もどうぞ触ってみてください!」


 わたしはミステルと後ろにいる学生たちに向かって声をかける。学生達は華やいだ表情でわたしの元へやって来る。


「触っても良いですが、優しく撫でるようにお願いしますね!」


 そう言いながらわたしが軽く撫でると、むーちゃんは嬉しそうに目を細めている。それを見た学生達も元気良く返事をしてくれた。


「はい! ありがとうございます、クリスティア殿下!」


 最初のうちは学生達も恐る恐ると手を伸ばしていたが、一人が触るとむーちゃんが喜んでいるのが分かったのか、皆で優しくむーちゃんを撫で始める。


「わあ! フワフワして可愛いですわ!」

「本当だ! 牧場にいるムイムイは触ったことがあるけど、この子の方がフワフワしてる!」

「それにこの子は風魔法で浮いているんですって! もしかしたら私達よりこの子の方が魔法が上手かもしれませんね……」


 わたし達が見ている前でワイワイとむーちゃんのお触り会を開いていると、シリウスやドロッセルも教室に入って来た。


「ごきげんよう、クリス。この騒ぎは一体どうしたんですの……?」

「おはようございます、ドロッセル! むーちゃんに触ってみたいとボタニガルテンの子達に言われたので、むーちゃんのお触り会をしていたのです!」

「それで皆楽しそうにしていましたのね」


 シリウスやドロッセルもむーちゃんを触りたそうにしていたが、話していると後ろからローレンツ先生が教室に入って来てしまった。ローレンツ先生は教室を見回すと、何度か手を打つ。


「皆、席についてください! 今日の魔法学は表に出て実技をやるので、今から説明をします!」


 ローレンツ先生の言葉に学生達はゾロゾロと自分の席へと戻り、むーちゃんもわたしの元へ飛んで戻って来た。


「お疲れ様です、むーちゃん。皆に撫でられてどうでしたか?」

「むーむー!」


 まあまあだと言っているように聞こえる鳴き声でむーちゃんは鳴く。その姿に癒されたわたしは一度むーちゃんを優しく撫でて席に座る。


「それじゃあ皆も席に着いたところで、今日の実技の説明を始めます!」


 ローレンツ先生の説明によると、今からわたし達一年生は運動場に出て魔法の試し打ちをするとのことだ。わたしはその言葉を聞いて疑問に思ったので、手を挙げてローレンツ先生に質問する。


「先生! 魔法の実技なら運動場ではなく、訓練場でやるべきではないのでしょうか!?」


 訓練場ならば結界の魔道具があるため、周りへの被害も出ないはずだとわたしがローレンツ先生に言うと、ローレンツ先生は不思議そうな物を見る目でわたしに顔を向ける。


「クリスティア殿下は一体どれだけ大規模な魔法を試し打ちする気なんですか? 普通の一年生が使うくらいの魔法でしたら運動場で十分ですよ」

「そうなのですか……」


 どうやら結界の魔道具を使うのは、大魔法祭での大会や大規模な魔法を使う時くらいのようだ。わたしは間違った手本を見せた会長にひとこと言いたい気持ちで、挙げた手を元に戻す。


 わたしの質問に答えた後は誰も手を挙げなかったので、ローレンツ先生は一度頷いて口を開く。


「とにかく今から運動場へと向かいます! きちんと杖を持って移動してくださいね!」


 そうしてローレンツ先生が言うと皆で運動場へと移動する。運動場は広い平地で砂が敷き詰められており円形になっている。研究会見学の時とは違い人が少ないため、少し寂しい感じもする運動場の隅の方でわたし達は魔法の訓練をすることになった。


「結構広いですね!」

「確かにこれだけ広ければ普通に魔法の練習をするなら十分だな。とりあえずエデルシュタインの学生をまとめるか」

「それもそうですね! 皆、こちらに集まってください!」


 わたしとスピネルが運動場に到着した学生達をまとめて整列させると、他の国の学生も整列しており、ローレンツ先生が皆を見回して口を開く。


「それじゃあ今から手本を見せるのでよく見ていて下さい!」


 ローレンツ先生は取り出した自分の杖を地面に向けると呪文を唱える。


土よ隆起せよ(エルデ・グラーベン)


 そう唱えると平らだった地面がボコッと盛り上がる。それを見たわたし達は感嘆の声を上げる。


「お~!」

「これが以前見せられなかった初級の土魔法だよ! こうして地面のあるところじゃないと使えないんだ!」


 ローレンツ先生はそう言いながら、杖を持っていない方の手で盛り上がった部分の土を掬い取った。そのまま手に持った土に杖を向けると別の呪文を唱え始める。


土よ盾となれ(エルデ・シルト)


 次の瞬間、ローレンツ先生の手にあった土は茶色の光を帯びて盾のような形に変わっていた。ローレンツ先生の手に合わせた大きさのその盾は土の色を反映して茶色だったが、とても頑丈そうだ。


 それを見たわたし達はまたしても感嘆の声を上げる。


「おお~~!!」

「土属性は守りの力が強いから、このように盾に変形させることもできるんだ!」


 そう言ってローレンツ先生はコンコンと指で盾を叩く。皆の注目が盾に集まっていることに気付いたローレンツ先生は、盾をわたしに差し出してきた。


「興味があるなら触ってみるかい?」

「いいんですか!? 触らせてください!」


 わたしはキラキラと目を輝かせて盾を両手で受け取ると、隣にいたスピネルと一緒に見始める。指で突いてみるととても固く、少しの衝撃では壊れなさそうだ。


 わたしとスピネルが盾に触っていると他の学生もワラワラと寄って来たので、わたしは近くにいたシリウスに盾を渡すことにした。


「シリウスもどうぞ見てください!」

「ありがとうございます、クリス」


 シリウスも盾には興味津々だったようで、指で突いたり弾いたりしながら面白そうに見ている。


「それでは盾を見終わった人から土魔法の練習をしてみましょう! 土を盾にする呪文は中級の土魔法なので、まだできなくても問題ありませんからね!」


 そうローレンツ先生が宣言したのでわたし達は呪文の練習を始めることにした。わたしは早速透明な宝石のついた自分の杖を地面に向ける。


 地面に向けた杖に魔力を注ぎ、わたしの膝くらいまで地面を隆起させる想像をして呪文を唱える。


土よ隆起せよ(エルデ・グラーベン)


 呪文を唱えると茶色の光が地面に向かい、わたしの想像通りに地面が盛り上がって来た。わたしは自分の膝くらいまで盛り上がった地面に満足して、スピネルの方を向く。


「どうですか、スピネル! きちんとできましたよ!」

「そうだな……俺も唱えてみたがクリス程上手くは出来なかった」


 スピネルが指で示した先には足を引っかけたら転びそうなくらいの小さな出っ張りがポコッと突き出ている。やはり外でも適性がないと土魔法は難しいようだ。


 続けて盾にする呪文も練習してしまおうと、わたしは自分の盛り上がった地面から土を掬い、杖を向けて呪文を唱える。想像するのは先ほどローレンツ先生が作り出した物と同じ形の盾だ。


土よ盾となれ(エルデ・シルト)


 その呪文によってわたしの持っていた土は形を変え、わたしの手で持てるくらいの大きさの土の盾が出来上がった。形はローレンツ先生と同じだが、大きさはわたしに合わせて少し小さくなっている。


「やった! 盾もできましたよ、スピネル!」

「どれどれ……」


 そう言ってスピネルに盾を見せると、盾は途端にボロリと崩れ始める。わたしが慌てて盾に魔力を注ぐと形を何とか整えることが出来た。


「どうやら形になったからと言って、魔力を止めると維持できなくなるようですね……」

「なるほど……もしかしたらローレンツ先生もあの盾に魔力を流し続けているのかもな」


 そう言ってスピネルが指差したのは、先ほどローレンツ先生が作り出した土の盾だ。ローレンツ先生の手から離れて今は学生が交代で見ているところだ。


「そうかもしれないですね。とりあえず魔法で作り出した物は維持するために魔力が必要ということは分かりました!」


 わたしは土の盾に魔力を流すのをやめると、ボロボロと崩れていくことを確認する。自分の考えが間違っていなかったことに納得し頷いていると、他の学生も盾の作成に苦労しているようだった。


 わたしは丁度近くにいたシリウスに話しかける。少し疲れているような表情をしているが大丈夫だろうか。


「シリウス、大丈夫ですか?」

「ああ、クリスですか。盾を作ることは出来たのですが、集中しすぎたのか少し疲れてしまいました……」

「魔力を使いすぎると倒れることもあるみたいです。シリウスもあまり無理しないでくださいね!」


 わたしは講義の終了まで周りの様子を見ながら、スピネルやむーちゃんと一緒に魔法の練習を続けた。スピネルも中々上手くいかず、結局土の盾を作り出すことは出来なかった。


「火魔法だったら形も変えられるんだけどな……」

「それはそれで興味あります! また今度見せてくださいね!」


 わたしがスピネルとそんな約束をしていると、ローレンツ先生から講義終了の声がかかる。


「それでは今日はここまでにします! また次の講義で土魔法の練習をするから、今日できなかった人も落ち込まないでくださいね!」


 わたし達は片付けをすると、皆でワイワイと話しながら寮へと戻っていった。

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