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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第二章 学園で楽しく過ごしたい!
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ドロッセルとお茶会

 今日のお茶会は水の庭で行うことになっている。水の庭は以前セレスタお姉様と一緒にお茶会をした場所で、ファルベブルクの寮とエデルシュタインの寮の中間にある庭園だ。


 わたしがスピネルを連れて庭園に到着すると、既にドロッセルは準備を進めてくれていたようで、テーブルの上にはお茶やお菓子が並べられている。


 わたし達が近づくと、足音でこちらに気付いたドロッセルが笑顔で迎えてくれた。


「ようこそお越しくださいました、クリス!」


 ドロッセルの挨拶を受けてわたしも笑顔で挨拶を返す。


「本日はお招きいただきありがとうございます、ドロッセル!」

「わたくしも心待ちにしていましたわ! さあ、お茶会を始めますわよ!」


 そう言って二人で着席するとお茶会が始まる。今回スピネルは護衛として来ているので、お茶会のテーブルには着かずわたしの後ろで待機している。


 わたしはドロッセルに勧められたお茶を飲みながら、彼女に話しかけた。


「今日は何故お茶会に招待してくれたんですか?」

「一番の理由はクリスと仲良くなりたいからですわ!」


 ドロッセルは胸を張ってそう言ってくれたのでそれは嬉しいが、一番の理由ということは別の理由もあるのだろうか。わたしは首を傾げてドロッセルを見つめる。


「ありがとうございます、ドロッセル! でも、一番の理由ということは他の理由もあるのですか?」

「ええ。クリスにはセレスタ殿下を紹介してもらいたいのですわ!」

「セレスタお姉様ですか?」


 意外な名前がドロッセルの口から出て来たことにわたしが驚いていると、ドロッセルは胸に手を当てセレスタお姉様に紹介して欲しい理由を話し始めた。


「わたくしは以前セレスタ殿下に助けてもらったことがございますの」

「そうだったのですか!?」


 わたしが驚くと、ドロッセルは恥ずかしそうに顔を赤らめた。そこから目を輝かせたドロッセルが語り始めたのは、セレスタお姉様に助けてもらったときの話だ。


「ええ。あれは去年の大魔法祭のことでしたわ――」


 去年お忍びで大魔法祭に来ていたドロッセルは学園の中で迷子になり、怪我をしてしまったそうだ。その時、回復魔法で助けてくれたのがセレスタお姉様だったようで、是非もう一度会いたいと思ったらしい。


「なので、学園に入学したらお礼をしたいと思っていましたの」


 そう言ったドロッセルはとても優しい笑みを浮かべている。セレスタお姉様に感謝していることがよく分かり、わたしも嬉しくなってしまう。


「そうだったんですか……分かりました。わたしからセレスタお姉様に相談して、一緒にお茶会できるように誘ってみますね!」

「本当ですの!? ありがとう、クリス!」

「もちろんです、任せてください!」


 わたしが胸を張ると、ドロッセルは両手を合わせてとても嬉しそうに目を輝かせてくれた。そこまで喜んでくれるならば、わたしも気合を入れてセレスタお姉様をお茶会に誘わなければならない。


 セレスタお姉様をお茶会に誘うことを頭の片隅に記憶して、わたしは研究会のことをドロッセルに訊いてみることにした。


「そう言えばドロッセルは研究会にはもう入りましたか?」

「ええ、わたくしは音楽研究会にしましたわ!」

「そんな研究会もあったのですか? 知らなかったです……」


 結局昨日は研究会をあまり見学できなかったわたしがそう言うと、ドロッセルは髪を揺らしながら大きく頷いた。


「ええ! ファルベブルクは芸術が有名な国なので、王女であるわたくしも芸術に関わる研究会に入ろうと思っていましたの!」

「そうだったのですね! 魔法を使う研究会が多いですけど、音楽研究会も楽しそうですね!」

「大魔法祭では演奏会もする予定ですの! クリスもぜひ見に来てくださいませ!」


 ドロッセルは楽しそうにそこまで言うと、お茶を飲んで一息入れる。それに合わせてわたしもお茶を飲むと、ドロッセルが用意したお菓子に目を向ける。


 初めて見たそのお菓子は可愛らしい色合いをしており、中にはクリームが挟まっているようだ。色とりどりのお菓子が並んでいるのは見た目にもとても楽しい。


「このお菓子は何でしょう? わたしは見たことがないのですが……」

「こちらはマカロンというお菓子ですわ! ファルベブルクのお菓子ですので、エデルシュタインでは見たことがないのかもしれませんわね!」

「そうかもしれませんね! 学園に入るまではきょうだいくらいしかお茶会の相手がいなかったので、外国のお菓子は始めて見ます!」


 わたしが目を輝かせると、ドロッセルも誇らしそうにマカロンを一つ摘まんで見せた。


「でしたらクリスも是非召し上がってくださいませ! 外国の方がどのように感じるのか、わたくしも知りたいですわ!」

「ありがとうございます、ドロッセル! それではいただきますね!」


 ドロッセルがそう言って勧めてくれたので、わたしは黄色の可愛いマカロンを手に取るとパクリとかじりつく。サクサクの食感と甘いクリームが合わさってとても美味しい。わたしは手に持ったマカロンを全て食べるとお茶を一口飲み、ドロッセルに満面の笑みを向ける。


「サクサクしていてとても美味しいです! ドロッセル!」

「クリスが喜んでくれてわたくしも嬉しいですわ!」


 わたしがそう言うと、自分の国のお菓子を褒められたドロッセルも嬉しそうに笑う。


 二人でお茶とお菓子を楽しみながら色々なことを話しているとあっという間に日は傾き、お茶会は終了の時間に近付いていた。


「あら、もうこんな時間ですのね。そろそろ寮に戻りませんこと? クリス」

「そうですね……名残惜しいですけど今日はこの辺りにしておきましょうか、ドロッセル」


 ドロッセルがそう言うと今日のお茶会はお開きとなる。わたしとドロッセルは立ち上がるとお互いに礼をする。


「今日はお招きいただきありがとうございました! 次はわたしがお茶会に誘いますのでその時はよろしくお願いしますね!」

「ええ、クリス! 楽しみにしていますわ!」


 二人でそんな会話を交わすと、わたしはドロッセルの見送りを受けて寮へと戻り始める。わたしは傍らを歩くスピネルを見上げて話しかけた。


「どうでしたか、スピネル。わたしもお友達とお茶会できましたよ!」

「そうだな、クリス。きちんとできていたと思うぞ。これからも一緒に頑張ろうな」


 今日のお茶会をうまくできた満足感を胸に抱いて、わたしは寮への道をテクテクと歩いて帰った。


 寮に戻ったわたしは夕食までの時間をスピネルと図書室で過ごす。ムイムイの生態について調べるためだ。わたしは魔獣図鑑を手に取ってみる。しばらく読んでいるとムイムイのページが見つかった。


「ムイムイは草原に多く生息しており、比較的温厚な魔獣である。茶色の瞳に白い毛が特徴的で、その毛は魔布などに使われている……ですか」

「魔獣研究会で言われたようなことしか載っていないな……ムイムイの飼い方は分かりそうだが変異種についてはやっぱり分からないか」

「そうですね……とりあえずムイムイの飼い方だけでも見ていきましょうか!」

「むー!」


 夕食までの時間、わたしとスピネルは図書室でムイムイの飼い方を調べて過ごす。


「そろそろ夕食の時間だな」

「もうそんな時間ですか? それでは食堂に向かいましょうか」


 何冊か読んだところで夕食の時間になってしまったので、仕方なく本を片付ける。新しく分かったことはあまり多くはなかったが、ムイムイについて詳しくなった満足感を抱いてわたし達は図書室を後にした。


 食堂に到着したわたし達は食事を受け取り、いつもの席に向かう。今日の夕食はボタニガルテンの名物料理で薄く伸ばした生地に具を乗せて焼いたピッツァと小さい皿に盛られたパスタだ。どちらの料理にもトマトがふんだんに使われており、食欲をそそる匂いが食堂に広がっている。


 わたしは食事をしながら今日の報告をする。チェス大会で優勝し、他の一年生代表と仲良くなったこと、お茶会でドロッセルから言われたことなどだ。


「あら、それではあの時に助けたのがその方だったのですね」

「セレスタお姉様はその時のことを覚えていらっしゃるのですか?」

「もちろん覚えていますわ。それでは今度クリスも一緒に、ドロッセル様とお茶会しましょうか」


 セレスタお姉様が快くお茶会を引き受けてくれたので、わたしも頷いた。これでドロッセルも喜んでくれるだろうと思うと、わたしも嬉しくなる。


「ありがとうございます、セレスタお姉様! きっとドロッセルも喜んでくれます!」


 セレスタお姉様と話しながら楽しい一日が終わる。今日はドロッセルとのお茶会も楽しかったし、ミステル、シリウスとも友達になることが出来た。


「明日からも楽しみですね、むーちゃん!」

「む~」


 わたしはむーちゃんに話しかけると、これからのことを楽しみに思いながら眠りについた。

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