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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第二章 学園で楽しく過ごしたい!
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スピネルのきょうだい

 魔獣研究会の展示場所から離れたわたしとスピネルは、次にどこの研究会を見に行くか相談を始める。


「次はどこに行きましょうか、スピネル」

「そうだな……とりあえず昼食にしないか? ほら、もうこんな時間だ」


 スピネルはそう言って懐中時計を取り出して、時間を見せてくれる。確かにもうそろそろ昼食の時間に差し掛かる。そう思うと急にお腹が空いて来たのか、わたしのお腹からくうという悲鳴が上がった。


 わたしはお腹を慌てて押さえるとスピネルの方を向く。


「今のはわたしではありませんよ、スピネル!」

「はいはい。次の研究会は昼食をとってからにしような、クリス」


 スピネルは呆れたようにそう言うと寮に向かって歩き始めてしまった。少し歩くとわたしがついて来ていないことに気付いたスピネルが立ち止まってこちらを振り向く。


「早く行くぞ、クリス。お腹、空いたんだろ?」

「待ってください、スピネル! わたしではありませんから!」


 わたしはむーちゃんと一緒になって、前の方にいるスピネルを追いかける。


 二人で話しながら寮に戻って来たわたし達はそのまま食堂へと向かい、昼食を受け取ると適当なテーブルへと座った。


「それで午後はどうしましょうか、スピネル」

「そうだなあ……まだ行ってないところはたくさんあるが、気になるのは武術研究会と高等魔法研究会だな……」

「火魔法研究会は良いのですか?」


 確かスピネルは火魔法研究会にも興味を持っていたはずだ。わたしがそう聞くとスピネルは軽く手を振った。


「風魔法研究会や水魔法研究会を見ただろう? 大体どこの属性魔法の研究会でも似たような感じだったから、見学はしなくて良いかと思ったんだ。入会の候補ではあるけどな」

「それなら良いのです! それにしても高等魔法研究会ですか……確かにわたしもスピネルも複数の属性に適性がありますから、それも面白そうですね!」

「そうだろう? あとは武術研究会が訓練場で演武をしているようだから、それも見てみたいと思っていたんだ」

「もしかしたらカーネリアお姉様の演武が見られるかもしれませんね!」


 朝食の席でカーネリアお姉様がそう言っていたことを思い出しながら、昼食のおにぎりをもぐもぐと食べる。毎年入学式の昼食は研究会見学をする者が多いので、外でも食べられるようなメニューになるらしい。


 わたしがおにぎりの中に入っている魚の切り身を味わっていると、スピネルが午後の提案をしてきた。


「そうしたら午後はとりあえず高等魔法研究会と武術研究会でいいか?」

「そうですね……お兄様やお姉様の研究会も見てみたいですけど、わたしはどこでも良いですよ! 他にはどのような研究会があるのでしょうか?」


 わたしとスピネルは午前中に貰っていた紙をばらばらと机の上に広げる。魔道具研究会やそれぞれの属性魔法の研究会、珍しい物だと大魔法祭研究会なんて物もあった。


「スピネル、この大魔法祭研究会というのは一体何でしょう? 大魔法祭で何かをする研究会ですか?」

「そうか、クリスは大魔法祭を見たことがなかったな。大魔法祭研究会は少し特殊で、大魔法祭を取り仕切る研究会なんだ」

「大魔法祭を取り仕切るのですか?」

「ああ、大魔法祭は基本的に学生が主体となって行う祭りだからな。先生の力を借りずに準備することが多くて、それを取りまとめるのが大魔法祭研究会らしい」

「そうなんですね……それも楽しそうですが、大魔法祭を見たことがないわたしでは力になれそうにないですね」


 わたしがそう言うとスピネルが苦笑する。


「もし、今年の大魔法祭が楽しかったら、来年は大魔法祭研究会に入ればいいさ」

「研究会は変更することが出来るのですか?」


 わたしが首を傾げるとスピネルは頷き、研究会の変更について教えてくれた。


「出来るぞ。もっとも一年間は変更できないから、その間は同じ研究会に所属することになるけどな」

「そうなのですか……それなら折角なので色々な研究会に入ってみたいですね!」


 わたしは午前中に見た風魔法研究会や水魔法研究会、魔獣研究会を思い出して頬を緩める。しかし、それを聞いたスピネルは緩く首を横に振った。


「まあ、あまり研究会を何度も変える者はいないらしいけどな」

「そうなのですか?」


 わたしが首を傾げるとスピネルは頷いて研究会の変更があまりされない理由を説明してくれる。


「研究会を変えるとその度に研究会の人と仲良くならないといけないからな。それが面倒で毎年同じ研究会に所属している者が多いし、それを前提にした研究活動をしていることが多いんだ」


 どの研究会でも一年生で取り組んだ研究を発展させて、六年生で発表することが多いようで、途中から入った者は人気のある研究は割り当てられないらしい。


「それでも、能力の高い者やクリスみたいに色々なことをやってみたい者は研究会を変えることもあるらしいぞ」

「それでは、研究会選びは慎重に行いましょうか……毎年色々なことが出来るのも楽しそうですが、研究はじっくり進めていきたいですからね!」


 わたしがそう言うとスピネルも満足そうにおにぎりにかじりついた。


「それにしても、スピネルは随分と詳しく知っているのですね! わたし、驚きました!」

「全部父上や兄上の受け売りさ。学園に入学すると決まった時から色々と聞いていたんだ」

「そう言えばスピネルの家族については聞いたことがありませんでしたね! 妹がいると言うのは聞いていたのですけど……」

「ああ、二つ下に妹がいるぞ。クリスは年齢の割に小さいから最初は妹と同い年かと思ったんだが……」


 そこまで言うとスピネルはわたしの上から下まで目線を動かす。わたしだって身長が低いのを気にしているのだ。失礼なことを言うスピネルにはお仕置きが必要かもしれない。


 ムッとしたわたしはむーちゃんの方を向いて指示を出す。


「まあ! 失礼ですね、スピネルは! むーちゃん、スピネルのおにぎりの中身だけ食べてしまいなさい!」

「むー!」


 わたしがむーちゃんにそう言うと自分のご飯を食べ終わったむーちゃんはスピネルのおにぎりが乗った皿に飛んでいく。


「あっ、おい! クリス! むーちゃんを止めろ!」

「失礼なことを言うスピネルへの罰です!」

「む~」


 むーちゃんはスピネルのおにぎりが乗った皿の前に到着すると、一瞬のうちに腕輪を爪へと変形させ、おにぎりを真っ二つに切り開いた。そして、綺麗に分かれたおにぎりから中身だけを抜き取ると、もぐもぐと食べ始めた。


「ああ、俺のおにぎりが……」


 一連の動作を見たスピネルは自分のおにぎりを見つめながら頭を抱えている。


「しかもむーちゃんの奴、魔導器の変形までして本当におにぎりの中身だけ取り出したぞ。どれだけ器用なんだ……」

「む~!」


 スピネルのおにぎりの中身を食べ終えたむーちゃんは、わたしの膝の上に乗って来た。丸くなったむーちゃんを撫でながら、わたしは先ほどの話の続きを始める。


「それで、妹の他にはお兄様がいるのですよね?」

「ああ、少し年齢が離れていて、もう学園は卒業しているけどな」


 スピネルはそう言いながら中身のないおにぎりをかじっている。その姿に哀愁を感じるが、わたしのことを悪く言った罰だ。おにぎりを全部むーちゃんに食べさせなかっただけありがたいと思って欲しいものだ。


「そのお兄様に学園のことも聞いたのですか?」

「それもあるし、去年は実際に大魔法祭を見に来たからな。大魔法祭研究会についてはその時に聞いたんだ」

「そうなんですね……いつかはスピネルのきょうだいにも会ってみたいですね!」

「それじゃあエデルシュタインに帰ったら、妹も呼んでお茶会でもするか。妹にもクリスのことは話しているからきっと仲良くなれるぞ」

「それは楽しみです! わたしも妹が欲しかったのです!」

「クリスの妹になるわけじゃないからな?」


 そんな話をしながら昼食を終えたわたし達は、武術研究会に向かうことにして席から立ち上がった。

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