セレスタお姉様のお友達
「それでは行きますわよ! クリス」
「はい、お姉様! 楽しみですね!」
今日はわたしとセレスタお姉様でお茶会に参加することになっているのだ。むーちゃんもわたしの護衛として、肩の辺りをフワフワと浮かんでいる。
「むーちゃんもよろしくお願いします!」
「むい!」
お茶会の会場は水の庭と呼ばれる場所で、寮から講義棟に向かう途中にある庭園だ。
今日はセレスタお姉様の友達を紹介してもらうお茶会となっているため、わたしは緊張から体を強張らせる。
その様子に気付いたのか、セレスタお姉様がわたしの手をギュッと握ってくれた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですわ、クリス。わたくしのお友達は皆良い子ですもの」
「ありがとうございます、お姉様!」
わたしは繋いだ手の温かさを感じながら、セレスタお姉様と一緒に部屋から足を踏み出した。
庭園に到着すると、セレスタお姉様の友達が出迎えをしてくれた。セレスタお姉様の友達は一度礼をするとわたしにニコリと微笑みかける。
「お初にお目にかかります、クリスティア殿下。私はエデルシュタインの三年生でグレーテと申します。今後ともよろしくお願いします」
「クリスティア・エデルシュタインです。こちらこそよろしくお願いしますね、グレーテ」
二人で初対面の挨拶を交わすとグレーテは微笑みを浮かべたまま、セレスタお姉様の方を向いた。
「セレスタ殿下もようこそお越しくださいました。お茶会の準備が整っておりますので、どうぞこちらへ」
「ありがとう、グレーテ。クリスも一緒に行きますわよ」
「はい、お姉様」
案内された先にはテーブルが用意されており、庭園に咲いた花を楽しみながらお茶をできるようになっているらしい。
テーブルにはもう一人騎士のような恰好をした女性が既に着席していた。わたしがそちらに目を向けると、その女性は立ち上がり自己紹介を始める。
「初めまして、クリスティア殿下。私はヒルダ。これからもよろしく」
「クリスティア・エデルシュタインです。こちらこそよろしくお願いしますね、ヒルダ」
「セレスタ殿下もよくぞお越し下さいました。お茶会ができるのを待ち遠しく思っていましたよ」
「ええ、ヒルダ。今日はクリス共々よろしくお願いしますわ」
「セレスタ殿下、クリスティア殿下。こちらに席をご用意しております。」
ヒルダと挨拶を交わすとグレーテがわたしとセレスタお姉様を席に案内してくれる。わたしはセレスタお姉様の隣の席だ。
「ありがとうございます、グレーテ」
わたしが礼をするとグレーテは嬉しそうにニコリと笑みで返事をして、そのままテーブルに着席する。全員が着席したことを確認して、セレスタお姉様がお茶会に招待してくれたことへのお礼を述べる。
「本日はお招きいただきありがとう、二人共。グレーテもヒルダも元気そうで何よりですわ」
「私もお会いできるのをお待ちしていました。セレスタ殿下にそう言って貰えて光栄です」
グレーテとセレスタお姉様が互いにニコニコと笑い合っているのを見ていると、わたしの方を向いてヒルダが話し始めた。
「クリスティア殿下もセレスタ殿下によく似てとても可愛らしい。今日の出会いを私は忘れないだろう」
「ありがとうございます、ヒルダ。わたしも嬉しいですよ」
わたしがニコリと微笑むとヒルダも嬉しそうに笑ってくれた。その後はセレスタお姉様が中心となってわたしの話題でお茶会は進んでいく。
「そのムイムイはクリスティア殿下の使い魔でしょうか? とても可愛らしいですね」
「ええ、むーちゃんと言います。むーちゃん、皆に挨拶をしてください」
わたしがそう言うとむーちゃんは前足を上げてグレーテの方を向く。
「むい!」
「まあ! 挨拶もできるなんて凄いですね!」
「ええ、むーちゃんは優秀なのです!」
わたしが胸を張ってそう言うと、それに驚いた様子のヒルダが話しかけてきた。
「むーちゃんは空を飛んでいるようだけど、それはクリスティア殿下の魔法で飛んでいるのかな?」
「これはむーちゃんが自分の魔法で飛んでいるのです!」
「むー!」
わたしがそう言うとむーちゃんが宙返りをして自分の魔法であることを主張し始めた。それを見たヒルダはポカンと口を開けむーちゃんを見つめている。
「これは驚いた……私も風魔法の適性はあるけど、むーちゃんのように器用には飛べないよ……」
「そうなのですか? エメラルお兄様も飛行魔法で空を飛んでいましたけど……」
「クリス、エメラルと他の貴族を同列に考えてはなりませんわ。あれでも風魔法の扱いに関して、エメラルは学園でも上位に入りますもの」
セレスタお姉様がそう言ったのを聞いて、わたしは目を丸くする。風の適性を持つ者は普通に空を飛べる物だと思っていたが、そうではなかったようだ。浮かぶことは出来ても自由自在に飛ぶことは中々できないらしい。
「エメラルだけでなくわたくし達王族は魔力が豊富で魔力制御に長けているので、他の者と比べて強力な魔法が使えますの」
「そうだったのですね……学園に来るまできょうだいとしか過ごしていなかったので、知りませんでした……」
「春休みが終わるまでにその辺りのことも少しずつ学んでいきましょうね、クリス」
「はい、お姉様!」
わたしが元気良く答えるとセレスタお姉様がニコリと微笑んでくれる。それを見ていたグレーテとヒルダも何だか嬉しそうだ。
「それにしてもクリスティア殿下は凄いのですね……むーちゃんのこともそうですが、ご自身も全属性の適性があると伺いましたよ」
そう言ったのはグレーテだ。お茶を飲みながらわたしの方に微笑むを向ける。わたしもニコリと微笑みを返すと口を開く。
「ええ。なので、魔導器の宝石も透明な物を選んだのです!」
わたしはそう言いながら杖を取り出し、皆に見える場所に置く。
「これがわたしの杖です!」
「色のついていない透明な宝石はあまり見る機会がないですが、これは綺麗な宝石ですね……」
「ああ……それに杖も綺麗でクリスティア殿下にお似合いだ」
「ありがとうございます、グレーテ、ヒルダ。そう言って貰えるとわたしも嬉しいです!」
うっとりとしながら杖を見つめる二人を見ると、わたしまで嬉しくなってしまう。
皆が杖を見終わったようなのでわたしは杖を回収しようと手を伸ばす。その手にキラリと輝く宝石を見つけたヒルダが口を開いた。
「クリスティア殿下、その指輪は一体……?」
「これはセレスタお姉様からの贈り物なのです! お姉様もお揃いのブレスレットを着けているのです!」
わたしがセレスタお姉様の方を向くと、セレスタお姉様もニコリと微笑んで自分のブレスレットを他の者に見えるようにしてくれた。
「ええ、春休みにクリスと一緒に贈り合ったのですわ」
「まあ! セレスタ殿下もクリスティア殿下もとても仲が良いのですね!」
グレーテにそう言われたわたしとセレスタお姉様はお互いの顔を見て頬を緩めた。
そんな風に皆で話していると、お茶会の時間が終わりに近づいて来た。皆で帰り支度を済ませると、わたし達は立ち上がり今日のお礼を言う。
「本日はありがとう、グレーテ、ヒルダ。とても楽しい時間を過ごすことが出来ましたわ」
「礼には及ばないよ、セレスタ殿下。私達も楽しかったからね」
「二人ともありがとうございました! もしよければ、また一緒にお茶会しましょうね!」
「もちろんです、クリスティア殿下。次の機会を楽しみにしています」
皆で微笑み合ってお茶会は終了となる。わたしとセレスタお姉様は、グレーテとヒルダに見送られながら寮に続く道を戻っていく。
夕日を受けながら歩いていると、セレスタお姉様が今日の感想を聞いてきた。
「今日のお茶会は楽しめましたか?」
「とても楽しかったです! グレーテもヒルダもとても良い方でした!」
わたしがニコニコしながらそう言うと、セレスタお姉様も表情を崩す。
「クリスが楽しめたのなら良かったですわ。学園が始まったら同じ学年の子を招いてみると良いですわよ」
「はい、お姉様!」
そう言って頭を撫でてくれるセレスタお姉様の手は温かく、わたしは幸せな気持ちで寮へと戻ったのだった。




