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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第二章 学園で楽しく過ごしたい!
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バーベキューと宿泊

 それからしばらく皆でワイワイと遊んでいると、魔動車が目的地に到着したようだ。窓の外の景色が動かなくなり、運転席に座っているローゼから声がかかる。


「皆様。本日の宿泊場所に到着しました」


 そう言いながらローゼが客室の扉を開けてくれたので、わたし達も外に降りて大きく息を吸い込んだ。今日の宿泊場所は道の途中にある広場のような場所だ。


 今回の移動は皆で楽しみながら学園に向かうため、ここで夕食をとり停車した魔動車の中で宿泊することになっている。


 わたしは初めての外での宿泊に興奮し、魔動車を降りたきょうだいの顔を見回す。


「今日はここで食事をして泊まるのですね!?」

「そうだ。クリスもちゃんと手伝うんだぞ?」

「もちろんです! ヘリオドールお兄様!」


 学園では理由がない限り従者を付けないことになっているので、食事や宿泊などもある程度は自分で行える必要がある。そのための練習として今日の食事と宿泊はきょうだいで話し合って、自分達で準備することにしたのだ。


 段々と日が暮れて来たのでローゼと一緒に皆で夕食の準備をするが、わたし達きょうだいはそれぞれ魔法を使えるので、準備はそう難しいことではない。


「ヘリオドール、コンロを持ってきてくれ」

「持ってきたぞ、姉上。こっちが炭だ」

「ああ、ありがとう」


 ヘリオドールお兄様が設置したコンロに炭を置き、カーネリアお姉様が火魔法で火をつける。


火よ燃やせ(フランメ・ブレンネン)


 カーネリアお姉様が火をつけている横でエメラルお兄様やセレスタお姉様、アレキサンダーお兄様も夕食の準備を進めていく。


「エメラル、煙を払ってくださる?」

風よ吹け(ヴィント・ブラーゼ)。これでいい? セレスタ姉さん」

「ありがとう、エメラル」

光よ照らせ(リヒト・ベロイヒ)。明かりはこんなものでいいかな?」

「大丈夫です! ありがとうございます、アレキサンダーお兄様!」


 燃えた薪から出て来た煙をエメラルお兄様が風魔法で逃がし、アレキサンダーお兄様は光魔法で辺りを照らす。


 それぞれが自分の得意な魔法を使う中、わたしは学園に到着するまで魔法の使用を禁止されているので、ローゼと一緒にせっせと食材やテーブルなどを魔動車から運び出しているところだ。


「ローゼ、こんな感じで良いですか?」

「ええ、クリスティア様。お上手ですよ」


 わたしは食材を運び終えると、細かく切られた食材をドンドン串に刺していく。次々と串が出来上がっていくのを見ていると、自分も役に立てている気がしてとても楽しい。


「こちらも準備できましたわ、クリス!」

「ありがとうございます! セレスタお姉様! 食材をそちらにお持ちしますね!」


 そうして皆で協力すると、あまり時間をかけずに夕食の用意ができた。セレスタお姉様の声を聞いたわたしはせっせと準備した食材をコンロの方へ持って行く。


 今日の夕食は肉や野菜を焼いて食べるバーベキューだ。わたしは本の中でしか見たことがない夕食の風景に目を輝かせる。


「自分がこのような食事をできるなんて思っていなかったので感動です……!」

「そう言ってくれると一生懸命準備した甲斐があったね。さあ、夕食を始めようか!」


 アレキサンダーお兄様の号令を聞いた皆は、やる気満々で串に刺さった肉や野菜を焼き始める。


 肉の油が下に落ちるとジュウと音がして、美味しそうな匂いが辺りに広がっていく。煙はエメラルお兄様が上手く逃がしてくれているので、煙を意識せずに楽しむことが出来ている。


「いただきます!」


 わたしは焼けた串を手に取ると、まずは野菜にかぶりつく。


 少し癖の強い色とりどりのパプリカは焼かれたことで香ばしい風味となり、普段とは違う味わいになっている。他にも黄色い粒々の触感が楽しいトウモロコシや白くて少し辛味のあるタマネギなど次々と野菜が焼きあがっていく。


「次はこちらです!」


 わたしは程よく焼かれて美味しそうな匂いを発しているシュヴァインの肉にもかぶりつく。肉汁が口の中で弾ける様は、いつもの食事では味わえない豪快さがある。


 普段の食事とは全然違う食べ方に驚きながらも、わたしは肉、野菜、野菜、肉、肉と次々に食べ続ける。


「む!む!」

「むーちゃんもたくさん食べて下さいね!」


 むーちゃんにもお皿を用意して一緒に食べていると、アレキサンダーお兄様が串と皿を持って、わたしの方に近づいてくる。


「クリス、美味しいかい?」

「はい! 美味しいし、とても楽しいです! むーちゃんも喜んでくれています!」

「むー!」


 むぐむぐと口を動かしていたむーちゃんが美味しいと言うように鳴くと、アレキサンダーお兄様も楽しそうに表情を崩す。


「普段の食事と全然違うからもっと戸惑うかと思っていたけど、クリスが楽しそうで何よりだよ」

「わたし、このように皆で準備しながら食事をするのが夢だったのです!」


 わたしがニコニコしながら答えると、アレキサンダーお兄様もニコニコと笑いかけてくれる。


 それからしばらくは皆も焼きながら食べていたが、小休止のために一旦焼くのを止めると、ワイワイと話を始める。明日には学園に到着するので、その話もしておかなければならない。


 わたしはむーちゃんを抱えて、エメラルお兄様とセレスタお姉様に話しかける。


「エメラルお兄様! セレスタお姉様!」

「あら、クリス。どうしましたの?」

「二人に学園のことについて聞いてみたいと思ったのです!」

「なんでも聞いてよ、クリス」

「ありがとうございます、エメラルお兄様! それでは……」


 わたしは肉や野菜の刺さった串が置かれているテーブルを見る。


「今日みたいな食事を学園ですることもあるのですか?」

「うん、一同に集まって食事をすることはたまにあるんだ」

「わたくしも課外活動や研究会の集まりで、今日のように食事をしたことがありますわ」

「わあ! 今から楽しみになってきました!」


 わたしが期待に胸を膨らませて二人の話を聞いていると、カーネリアお姉様やヘリオドールお兄様も話に加わって来る。


「神に捧げる祭りは大魔法祭もあるから、見どころがたくさんあって楽しいぞ」

「ああ、去年はエデルシュタイン王国が優勝したから、今年も何とか優勝したいところだな」

「大魔法祭ですか?」


 聞いた覚えのない言葉に皆が盛り上がっているのを見て、わたしは首を傾げる。


「ああ、クリスは見たことがなかったか……大魔法祭というのは神に捧げる祭りの期間中に学園で開催される学生達のお祭りだ」

「なんですかそれは!? とても楽しそうではないですか!」

「とても楽しいぞ! 大魔法祭では国ごとに分かれてどの国が一番か競うんだからな!」


 去年はカーネリアお姉様が武術大会に出場して優勝し、総合でもエデルシュタイン王国が優勝したらしい。他にも魔法大会や学年ごとの出し物、屋台の売り上げなどで競い合うので、毎年とても盛り上がるらしい。


「それに今年のエデルシュタインは全学年に王族がいるからね。なんとしても負けるわけにはいかないんだ」


 そう言ってアレキサンダーお兄様もやる気満々といった感じで話に入ってきた。


 今年のエデルシュタインはわたしが入学することで全学年に王族がいる状態なのだ。アレキサンダーお兄様のやる気も分かる気がする。


「わたしも頑張りますね!」

「ああ、その意気だ。クリスも頑張ってくれ」


 アレキサンダーお兄様に頭を撫でられながら、わたしは気合を入れて大魔法祭に臨もうと決意を新たにする。


 皆でワイワイと講義のことや研究会のこと、寮の食堂はこの料理が美味しい、美味しくないと言った話を続けていると、段々と夜も遅い時間になって来た。


 わたし達はセレスタお姉様が準備してくれた水を温め、交代で湯浴みを行っている間に手分けして夕食の片づけを進めていく。最後のセレスタお姉様が湯浴みを終えると、就寝の時間となる。


 わたし達は魔動車に戻ると、トランプ大会で決めた通りのベッドへと潜り込む。わたしはセレスタお姉様の隣で二段ベッドの上である。


「お休みなさい、むーちゃん」

「む~」


 むーちゃんを寝床に置いてからベッドへ上がると、奥の方にセレスタお姉様が既に寝転んでいた。わたしはそれが何だか面白くて、セレスタお姉様へと声をかける。


「セレスタお姉様、今日はとても楽しかったですね。皆で遊んで夕食も食べて……わたし、今がとても幸せです!」

「これからもっと楽しくなりますわよ、クリス。まだ学園にも到着していませんもの」


 わたしの言葉にクスリと優しく笑い、セレスタお姉様は答えてくれる。わたしは毛布をかぶるとセレスタお姉様と話を続ける。


「それにお姉様と眠るのも初めてです。魔法を授かってから初めての事ばかりです!」

「そうですわね。わたくしも楽しそうにしているクリスを見るのはとても楽しいですわ」


 そうしてセレスタお姉様とクスクス笑いあっていると、段々とまぶたが重くなってくる。わたしは今日の楽しかったことを思い浮かべながら眠りについたのだった。

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