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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第一章 きょうだいと楽しく過ごしたい!
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セレスタお姉様と呼び寄せの呪文

「おはようございます、クリスティア様」

「おはようございます、ローゼ」


 いつものようにローゼに起こしてもらうと、朝の支度をしながら考える。


 体内の魔力を制御して『生命活性』の魔力量は三十で固定できるようになったが、『精神活性』の魔力量は十から増やしていなかった。


『精神活性』の魔力量を増やしたら集中力が上がるそうなので、あとでお母様に相談してみようなどと考えているうちに朝の支度は完了していた。


 わたしはローゼを連れて食堂へと向かうと、まだ全員集まっていないようだ。一度食堂を見回すと、お父様とお母様に向けて挨拶をする。


「おはようございます。お父様、お母様」

「おはよう、クリスティア」

「おはようございます、クリス」


 二人に挨拶した後はいつもの席に座る。セレスタお姉様のいない隣の席を少し寂しく感じながら、わたしはお母様に話しかける。


「お母様、『生命活性』が安定してきたので、『精神活性』にも魔力を流してみたいのですが、よろしいでしょうか?」

「そうですね……今発動してみて問題がなければ良いですよ」

「分かりました。発動してみますね、お母様」


 発動するところを見るため、お母様はわたしのことをじっと見つめてくる。


 わたしは集中して『精神活性』の魔力量を二十にする。それにつられて、少しだけ『生命活性』と『魔力活性』にも流れてしまったので、すぐ二つに流した魔力を止める。


 やはり、しばらくの間『生命活性』に魔力を流し続けたことで、魔力制御が上達しているようだ。魔力を流すのも止めるのも早くなっているように感じる。


 わたしは一息つくと、それぞれの魔力量が問題ないことを確認する。今の魔力量はそれぞれ『生命活性』三十、『魔力活性』十、『精神活性』二十となっている。


「お母様、できました! 少し制御が乱れましたが、すぐに戻せました!」

「なら良いでしょう。あまり無理をしないように気を付けるのですよ」


 そう言ってお母様はわたしから視線を外すと、食堂の入り口に目を向ける。


 すると入り口のところで待っていたのか、きょうだいがぞろぞろと入ってきた。わたしが集中していたので、入らずに待っていてくれたようだ。


「おはようございます、皆様!」


 挨拶を済ませて皆が席に座ると食事が始まり、今日のお茶会の場所を決めるためにわたし達は話し始める。


「お茶会の場所はどうしますか? わたしはまだ城の中も良く分かっていないのですけど……」

「そうですわね……城の庭園はいかがでしょうか?」

「私はお茶会の場所にこだわりはないから、庭園でも構わないぞ」

「僕が紹介できるのは植物園くらいだけど、こないだ行ったばかりだし庭園でいいと思うよ」

「俺も賛成だ、今日は庭園でいいんじゃないか」

「私もそれでいいと思うよ、クリスは庭園でもいいかな?」

「もちろんです! どこでもわたしは楽しいので大丈夫です!」

「それでは決まりですわね! お茶会は庭園で開催しましょう!」


 わたしは皆と話しながらお茶会の会場を決めている今の時間も楽しく思える。ニコニコとしながら賛成の意を示すと、お茶会の会場は庭園に決まった。


 皆でワイワイと食事を終えると、お茶会の時間までは一旦解散となる。


 わたしは魔導器について相談するため、隣に座っていたセレスタお姉様に声をかけた。


「セレスタお姉様、この後少し時間はありますか? 杖に宝石を付けるので見ていてほしいのですが……」

「ええ、構いませんわ。それではこのままクリスの部屋に向かいますわよ」


 セレスタお姉様が快く頷いてくれたのを見て、わたしはほっと胸を撫でおろす。セレスタお姉様が立ち上げると、手を繋いで二人でわたしの部屋へと向かった。


 わたし達が部屋に入り椅子に座ると、すぐにローゼが杖と宝石をトレーに乗せて用意してくれる。


 昨日アレキサンダーお兄様に作ってもらった魔導器の杖は、細かい装飾がされており、とても美しい。透明な宝石もそれに劣らず輝いており、瞬く星のようにキラキラと光を反射している。


 ローゼが持ってきてくれた杖を見て、セレスタお姉様は不思議そうな顔をする。


「あら、わたしと同じ形の魔導器ですわね」

「ええ。わたしにとって魔導器はお姉様の物が一番印象的だったので、お兄様に頼んで同じ形にしてもらいました!」

「アクセサリーと一緒でお揃いですわね、クリス!」


 そう言って頬を緩めたセレスタお姉様は、腕につけたブレスレットをわたしに見えるようにしてくれたので、わたしも笑顔で自分の指輪をセレスタお姉様に見せる。


 二人で仲良く笑いあった後は、杖に宝石を嵌める時間だ。わたしは柔らかい布の上に乗った宝石を布ごと手に取ると、トレーの上に置かれた杖の穴に慎重に置く。


 魔銀で囲われた穴の上に宝石を乗せると、魔銀が輝きを増幅しているようで先ほどよりも宝石が綺麗に輝いて見える。


 一度深呼吸をすると、セレスタお姉様にどうすれば良いか確認する。


「ふう……! 次はどうすれば良いのでしょう、お姉様」

「そこまでできたらあと少しですわ。この間のように手に魔力を流して、杖に触れてくださいませ」

「魔力を流して指輪の大きさを変えた時と同じですね?」


 わたしの問いかけにセレスタお姉様は頷く。杖に手を当てて、この間と同じように魔力を流していくと、以前よりも滑らかに魔力が流れているのを感じる。


 しばらく手に魔力を流し続けると徐々に魔導器の魔銀部分が変形して、宝石をしっかりと固定する形になった。


 本当に宝石が固定されているのか心配で、わたしが軽く杖を動かすと宝石がキラリと光を反射して輝く。どうやら穴にしっかり固定されており、宝石が簡単に外れることはなさそうだ。


 わたしは杖を手に取ると軽く振ってみる。動くたびにキラキラと輝く宝石がとても可愛らしい。


 わたしも目を宝石のようにキラキラと輝かせて、セレスタお姉様へ勢いよく振り向く。


「凄いです、お姉様! 宝石を付けたおかげで、杖がとても可愛らしくなりました!」

「ええ、クリス。良かったですわね!」


 杖を手にしてわたしが喜んでいると、セレスタお姉様はわたしの頭を撫でてくれた。


 それからしばらくの間、色々な角度から杖を見てうっとりとしていると、どこからともなく声がかかってきた。


「――ス! ――リス! クリス!」


 はっとしたわたしが横を振り向くとそこには心配そうな顔をしたセレスタお姉様がいた。わたしが反応したことにホッとしている様子だ。


「大丈夫ですの? 杖を握ったまま呆けていたようですけれど……」

「あまりに杖が綺麗だったので見入ってしまっただけです、お姉様」

「それならいいのですけれど……」


 セレスタお姉様はそこで一度言葉を切ると、そのまま話を続ける。


「まずクリスには、杖を呼び寄せる呪文を教えようと思いますの」

「杖を呼び寄せる呪文ですか?」

「ええ、杖を手に入れた者が最初に覚える呪文ですわ。まだ魔力が杖に完全に馴染んでいるわけではありませんが、呼び寄せるだけならばできますわ」


 そう言いながらセレスタお姉様は杖を呼ぶための呪文を教えてくれた。わたしは杖をテーブルの上に置くと、手をかざして杖をじっと見ながら集中する。


 呪文を唱えて魔法を発動する際に必要なのは、魔力を外側に放出して魔法で起こることを想像することだ。


 わたしは杖が手に飛んでくるように想像すると呪文を唱える。


魔導杖よ来い(マギシュ・アルフ)


 呪文を唱えるとテーブルに置かれた杖がピクリと反応して、少しずつ動き出す。ブルブルと一度震えると杖は飛び上がり、わたしの手の中にピタリと収まった。


 わたしは自分の手の中に収まった杖を見ると、自然と笑顔がこぼれてしまう。


 初めて呪文を唱えた感動に打ち震えていると、横で見ていたセレスタお姉様も満足そうに頷いている。


「きちんとできましたわね、クリス!」

「見てください、お姉様! わたしちゃんと呪文を唱えられました!」


 わたしが杖を握りしめて手を振ると、セレスタお姉様も嬉しそうに微笑んでいる。セレスタお姉様は杖を呼ぶ呪文を教えて、もう大丈夫だと思ったのか椅子から立ち上がる。


「それではこの後のお茶会の準備があるので、わたくしは失礼いたしますわ。あまり杖で遊んでいて遅れないようになさいませ」

「はい、ありがとうございました! また後でお会いしましょう、お姉様!」


 そのあとわたしは呼び寄せの呪文を何度か試して満足したので、お茶会に向かう準備を始めた。

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