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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第一章 きょうだいと楽しく過ごしたい!
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家族と食卓

 わたしとアレキサンダーお兄様は魔導器を作った後、少し休憩してから城に帰ることにした。受付に戻ると、ディアナがわたし達を見送るために待っていた。


「今日はお越しいただきありがとうございました。アレキサンダー殿下、クリスティア殿下。またのお越しをお待ちしております」

「ありがとうございます、ディアナ! 今日はとても楽しかったです!」


 そう言ってディアナは微笑むと深く頭を下げる。わたし達は笑顔でディアナの見送りを受けると、魔動車に乗って城へと戻った。


 わたしが魔動車の中で口元を緩ませながら杖を見ていると、いつの間にか城へと到着していたようで、魔動車の動きが止まっていた。


「城に到着しました。アレキサンダー様、クリスティア様」


 ローゼに声をかけられてわたしとアレキサンダーお兄様は魔動車の外へと出る。すると、魔動車から降りた途端二人に声をかけられる。カーネリアお姉様とヘリオドールお兄様だ。


「おお、クリス。帰ってきたか」

「お帰り、クリス。久しぶりだね」

「ただいま戻りました。カーネリアお姉様、ヘリオドールお兄様。何か御用でしたか?」


 二人は昨日の夕食にはいなかったので、今日帰ってきたのだろう。長旅で疲れているのか、ところどころに汚れが目立っている。


「いや特に用があるわけじゃないが、クリスがそろそろ帰ってくると聞いたから、挨拶しようと思って待っていたんだ」

「そうだったのですね、ありがとうございます。カーネリアお姉様」

「姉上ばかりずるいぞ、俺もクリスのこと待ってたんだからな」

「もちろん、ヘリオドールお兄様もありがとうございます。とても嬉しかったですよ」


 三人でクスクスと笑いながら顔を見合わせていると、アレキサンダーお兄様が苦笑しながらカーネリア姉上とヘリオドールお兄様に話しかける。


「とりあえず二人は着替えてきた方がいいんじゃないかな。もう少しで夕食の時間だろう?」

「それもそうですね、兄上。ほらヘリオドールも行くぞ」

「引っ張らないでくれ、姉上! クリス、また夕食のときに話そうな!」


 カーネリアお姉様に引っ張られながら、ヘリオドールお兄様は城の中へと入っていく。二人を見送るとわたしとアレキサンダーお兄様も城の中に戻ることにした。


 部屋に到着すると早速湯あみと着替えだ。部屋の中には浴槽もあるが、今日は時間がないため洗浄の魔道具で体を洗って終わりにする。


「さあ、クリスティア様。夕食まであまりお時間がありませんので、お仕度を済ませていきましょう」

「よろしくお願いします、ローゼ」


 ローゼはそう言いながらてきぱきとわたしの服を脱がせて、洗浄の魔道具に魔力を注いでいく。すると、洗浄の魔道具から自分の体温より少し温かいくらいのお湯が出始めた。


 しゃーという音とともに細い線となって出てくるお湯を浴びていると、汚れと疲れが一緒に流れていくような心地になり、とても気持ち良い。しばらくしてローゼが洗浄の魔道具を止めると、今日の湯あみは終わりだ。


 ローゼが温風の魔道具を手に持ってわたしの髪を乾かしてくれる。温かい風が出てくるのを正面から受けてしまい、目をしぱしぱと瞬かせているうちに髪は乾いて、着替えが始まる。


 ローゼはクローゼットの中から普段わたしが来ている部屋着を持ってきてくれる。部屋着といっても寝間着とは違って、人前に出ても恥ずかしくはない恰好だ。


 そこまで手早く済ませても、夕食の時間にはぎりぎり間に合わなかった。少し遅れてわたしが食堂に到着すると、他の家族は既に席についていた。


 わたしだけ遅くなったのは長い髪のせいだろうと一人で納得し、定位置となったセレスタお姉様の隣へと腰を下ろす。


「遅れてしまい申し訳ありません」

「いや、構わない。これで全員食堂に集まることができたのだ。皆でクリスティアの快復を祝おうじゃないか」


 わたしが遅れたことについて謝罪していると、お父様が笑ってそう言ってくれた。今日からは家族全員で夕食をとることができると思うと、わたしの心も弾む。


 お父様の言葉を皮切りに食事が始まり、皆からわたしに快復祝いの言葉がかけられると、話はどんどん盛り上がっていく。


「おめでとう、クリス。元気になったみたいで安心したぞ。明日からは俺とも一緒に遊ぼうな」

「ヘリオドールよりもクリスはわたしと遊びたいよな? 明日は私とセレスタと三人でお茶会でもしようじゃないか」

「それはいいですわね、カーネリアお姉様。わたくしもクリスとまたお茶会したいですわ」

「だったら僕も混ぜてよ、セレスタ姉さん。とっておきのハーブティーをクリスに飲んでほしいと思ってたんだ」

「わたしも皆とお茶会できるのはとても楽しみです。アレキサンダーお兄様はどうされますか?」

「わたしも参加していいのかい? それなら私もとっておきのお菓子を出そうじゃないか」


 皆で話しながら進んでいく食事はとても楽しい。皆でワイワイと明日からの予定を確認してどうやって遊ぶか相談している時間は、少し前まで考えられなかった。


 今となってはこれがわたしの日常なのだと思うと、自然と頬が緩んでいく。


 わたしはこの日常を与えてくれた神様に感謝して一生懸命に祈りを捧げる。皆で一緒にこれからも過ごしていきたいと願いを込めて神様に届くように祈りを捧げた。


「それでは、明日はお茶会にしましょう。楽しみですわね、クリス」

「ええ、セレスタお姉様! 明日が楽しみですね!」


 明日の予定が決定するころには食事が終わって、食後のお茶の時間になっていた。お茶を一口飲むと、わたしはカーネリアお姉様に目を向ける。


「そういえば、カーネリアお姉様とヘリオドールお兄様だけ帰りが遅かったのは何故ですか? セレスタお姉様と比べて一週間ほど遅かったですよね?」


 セレスタお姉様は春休みに入ってすぐ帰ってきたので、神授式の翌日にはもう城にいたはずだ。それを言われたカーネリアお姉様は苦い表情をしている。


「実は学園の近くにある洞窟に寄っていたら、帰りが遅くなってしまってな……」

「洞窟ですか?」

「ああ、強い魔獣が出て素材採集にちょうどいいから、学園から帰るときはよく寄るんだ。それでヘリオドールも一緒に行ったんだが、少し時間がかかってしまったんだ」

「それで二人は帰りが遅かったのですね……」


 わたしがヘリオドールお兄様に顔を向けると、ヘリオドールお兄様も疲れたのか溜息をつきながら頷いている。


「大変だったよ、クリス。俺も最近は強くなってきたんだけど、それを知った姉上が洞窟に誘ってきてさ。姉上がもう少しいけるってどんどん先に進むから、気付いたら結構深くまで潜ってて、戻ってくるのに時間がかかったんだ」

「ヘリオドールだって楽しそうに魔獣と戦っていたじゃないか。私だけのせいではないだろう?」

「結局二人とも止め時が分からなくて、帰ってくるのに時間がかかったなら二人のせいだ。無事に帰って来られたんだから良かったよ」


 そうアレキサンダーお兄様がまとめると、話はうやむやとなって二人の責任の押し付け合いは終了した。


「それで何か良い素材は取れましたの?」

「ああ、結構色々な素材が取れたから、あとで皆にも確認してもらおうと思う。セレスタにも回復薬に使えそうな素材をいくつか採ってきたぞ」

「ありがとうございます、ヘリオドールお兄様! わたくし、回復薬を作る素材が足りなくなってきたところでしたの」


 ヘリオドールお兄様とセレスタお姉様は仲睦まじく二人で素材の話をしているので、わたしはカーネリアお姉様へと目を向ける。


「カーネリアお姉様は研究会には所属しているのですか? わたしも春から学園に入学するので、参考までに聞いておきたいのです!」

「私は武術研究会に所属している。クリスも入るか?」


 研究会に勧誘してくるカーネリアお姉様は、目を輝かせて身を乗り出してくる。


 そんなことを言われても、わたしは武術よりも魔法の研究がしたいのだ。わたしは困り顔で何とかカーネリアお姉様を諦めさせようと言葉を発する。


「いえ、わたしは魔法の研究をしたいので、武術は……」

「武術研究会はやめといた方がいいぞ、クリス」


 わたしがそう言うと、セレスタお姉様と話していたはずのヘリオドールお兄様が話に入ってきた。


 ヘリオドールお兄様は眉間にしわを寄せているが、何か嫌なことでもあったのだろうか。それを聞いたカーネリアお姉様も顔を真っ赤にしてヘリオドールお兄様に言い返す。


「何を言うんだ、ヘリオドール。クリスが怖がっているじゃないか!」

「怖がられるようなことをしている姉上が悪い。大体この間、月に一度の武術大会で皆をボコボコにしていたんだから間違ってはいないだろう?」


 それを聞いた他のきょうだいも遠い目をしているので、ヘリオドールお兄様の言うことは正しいのだろう。わたしは武術研究会に参加させられないよう、カーネリアお姉様に向き合った。


「わたし、武術研究会にだけは所属しないようにします!」


 わたしがそう言うとカーネリアお姉様は悔しそうな顔をしていたが、それをアレキサンダーお兄様が慰め始める。


「まあまあ、クリスは魔法に興味があるみたいだから……魔道具研究会なんていいんじゃないかな? 魔法を魔道具で再現するのは楽しいよ」

「ずるいですわ、アレキサンダーお兄様! さりげなくクリスを勧誘しないでくださいませ! わたくしと一緒に医療研究会で頑張りませんこと? クリス」

「姉さんだって勧誘してるじゃないか!」

「アレキサンダーお兄様が先に勧誘するからですわ! クリスはわたくしと一緒に学園生活を送るのが一番ですわ!」

「姉さんばかりずるいよ、僕だってクリスと一緒に遊びたいのに!」

「そんなこと言ったら俺だって――」

「まあまあ、皆落ちついて――」


 話が白熱しつつも皆で楽しく話していると、時間が過ぎるのがとても早く感じる。わたしは賑やかになってきた食堂を見渡し、これからのことを考え期待に胸を膨らませるのだった。

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