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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第一章 きょうだいと楽しく過ごしたい!
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アレキサンダーお兄様と魔導器

 船の形をした二人乗りの飛行の魔道具を片付けてもらうと、わたし達はアレキサンダーお兄様の研究室に向かうことにした。


「それではここで失礼いたします。また何かございましたらお呼び出し下さい」

「ありがとうございました、ディアナ! とても楽しかったです!」


 わたしが笑顔で礼を言うとディアナも深々と礼をしてくれる。研究室の案内はアレキサンダーお兄様がしてくれるので、ディアナとはここでお別れだ。


 帰る時は見送ってくれるそうなので、その時にもう一度会えるだろう。わたしはその時を楽しみにアレキサンダーお兄様と一緒に研究室へ向けて歩き出す。


 実験棟から離れ、少し歩くと研究棟と呼ばれる建物が見えてきた。どうやらそこにアレキサンダーお兄様の研究室があるようだ。


 研究棟に入ったわたし達だったがしばらく歩いていると、アレキサンダーお兄様の研究室に到着した。


「さあ、着いたよクリス。ここが私の研究室だ」

「どんなものがあるのか楽しみです!」


 目の前には白い扉があり、その横にはアレキサンダーお兄様の名前が書かれている。


 白い扉をアレキサンダーお兄様が開けると、中には人が入れるくらい大きな箱が置いてあるのが見える。


 わたしが目を輝かせながら研究室の中に入ると、壁際にはごちゃごちゃと色々な物が置かれた机が見える。


 お茶を飲むテーブルは別に用意されているようで、わたしは空いているテーブルに案内された。


「そこに座って少し待っててくれ。今お茶の準備をするから」

「ありがとうございます、お兄様」


 アレキサンダーお兄様がお茶を淹れている間、わたしは珍しい物がたくさん置かれている研究室の中をキョロキョロと見回していた。


 テーブルの上にお茶を置くと、アレキサンダーお兄様もわたしの隣に着席する。


「お待たせ、クリス。何か面白い物はあったかい?」

「面白い物ばかりです、お兄様! あの大きな箱は何でしょう? 実験棟にもありましたよね?」


 わたしがそう言って指差したのは、入った時に見えた大きな箱だ。アレキサンダーお兄様はにこやかに答えてくれる。


「あれは錬成器と呼ばれる、魔道具を作る魔道具さ。クリスが楽しみにしていた魔道具作りは、あの錬成器で行われているんだ」

「錬成器! 魔道具作り! 早く見たいです!」


 わたしは魔道具作りが見られることに興奮して、錬成器の方を見る。アレキサンダーお兄様は苦笑しながら、それを止める。


「まだ準備ができていないからね。あとで必ず見せるから少し待っていておくれ」

「分かりました……楽しみに待っています!」


 わたしは一度深呼吸をすると、続いて机の方に目を向ける。わたしは頬を膨らませて、アレキサンダーお兄様に注意する。


「それと……お兄様、机の上は綺麗にしないといけませんよ!」

「ごめんごめん。つい作りかけの魔道具を机の上に置いておく癖があってね。色々と魔道具が置きっぱなしになっているんだ」

「作りかけの魔道具ですか?」

「ああ、試作品や魔導器も色々とあるよ」


 アレキサンダーお兄様も苦笑しながら机の方を見る。わたしも机が散らかっていることよりも、机に置かれた物が気になってきたので、注意をやめてアレキサンダーお兄様にたくさん質問をする。


 それからは部屋の物について質問しながら、アレキサンダーお兄様とお茶を楽しんだ。


 お茶が一段落すると、アレキサンダーお兄様に散らかった机まで連れて行ってもらい、私の魔導器作りを始めることになった。


「何をすればいいんですか?」

「まずはどんな形にするかを決めてくれ」


 そう言うとアレキサンダーお兄様は散らかった机の魔道具を『空間収納』でしまうと、宝石の嵌っていない魔導器を次々と取り出し始める。杖、箒、盾、剣、そして銃。


 いくつかの魔導器が取り出されると、アレキサンダーお兄様は一息ついて口を開く。


「これはきょうだいが使っている魔導器だけど、クリスはどれがいい? 別の形にもできるから好きなのを選んで良いよ」

「どれにしましょう……! 」


 そう言っている間にもアレキサンダーお兄様は魔導器を取り出す。弓、槍、トンファー、手甲、鎌などわたしの良く知らない魔導器まで出てくる。


「……どれにする、クリス?」

「う~ん……」


 何だかお兄様が疲れているように見えるが、まだまだ取り出し続ける。


 鎖のついた鉄球や大槌、斧、扇、楽器や本など、もはや魔導器と言っていいのかわからない物まで出てきた。もう机に乗りきらないので、そのまま床に置いている。


 アレキサンダーお兄様は息も絶え絶えといった様子で口を開く。


「クリス、もういいかい……?」

「……大丈夫ですか、お兄様?」

「少し休ませてもらってもいいかな……『空間収納』から物を取り出すともの凄く疲れるんだ……」

「そう言うことは早く言ってください、お兄様! しばらく休んで下さい!」


 どうやらアレキサンダーお兄様はわたしのために、『空間収納』を使いすぎたらしい。お茶を飲んでいたテーブルまで連れていき、少し休んでもらう。


 ぐったりとしているアレキサンダーお兄様が休んでいる間に、わたしは魔導器を選ぶことにした。


 やはり利便性を考えると杖だろうか。セレスタお姉様が使っていたので、使い方も教えてもらえるだろう。しかし、扇など一見して魔導器に見えない物も良いかもしれない。


 わたしが頭を抱えて悩んでいると、少し休んで回復したアレキサンダーお兄様がわたしのところに戻って来た。


「どれにするか決まったかい?」

「……セレスタお姉様と同じ、白い杖にしようと思います。お兄様」


 悩んだ結果わたしが選んだのは、杖だった。使いやすさもあるが、セレスタお姉様と同じ物にしようと思ったのだ。


「分かった。これから準備するから横で見ていてもいいよ」


 そう言ってアレキサンダーお兄様は、錬成器の右側にある箱のふたを開け、その中に色々な素材を入れていく。木の枝、何種類かの魔石、粉のような物、白色の液体。ずっと横で見ていたが、何を入れているのか分からなかった。


 わたしが眉間にしわを寄せていると、それに気付いたアレキサンダーお兄様は苦笑する。


「そのうちクリスにも分かるようになるよ」


 ふたを閉めると、錬成器の前面にある隙間から設計図を入れていく。そこまで準備するとアレキサンダーお兄様は振り返りながら言う。


「さあ、準備できたよ。あとはこのボタンを押すだけだ」

「わたしが押しても大丈夫ですか……?」

「ああ、自分の手で最後のボタンを押した方が愛着を持てるだろう?」

「分かりました。それでは、いきます!」


 アレキサンダーお兄様はそれを見て楽しそうに笑っている。わたしはドキドキと心臓を高鳴らせながら、錬成器のボタンを押す。


 カチッとボタンが奥に押し込まれる音がすると、錬成器の色々な場所が光り始め、ガタガタと音が響き、揺れ始める。それに驚いたわたしは、錬成器から飛びのく。


「ひゃっ!」


 飛びのいた先にはアレキサンダーお兄様がいて、わたしを受け止めてくれた。


「おっと、大丈夫かい?」

「お兄様! 錬成器からガタガタと音がするのですが、大丈夫ですか!? わたしが触ったせいで壊れてしまったんでしょうか!?」

「説明が足りなかったね……大丈夫だよ、クリス」

「本当ですか……?」


 アレキサンダーお兄様は頭を撫でてくれるので、わたしはそれを信じてじっと錬成器を見つめる。そのままアレキサンダーお兄様と話しながら待っていると、チンと高い音が鳴って錬成器の動きも止まった。


「できたみたいだよ、クリス。早速取り出してみようか」


 そう言われてわたしは、アレキサンダーお兄様と一緒に錬成器の左側に回り込む。そこは扉のようになっており、錬成器を開けることができるようだ。


「さあ、クリス。開けてごらん」


 アレキサンダーお兄様に促されて、わたしが錬成器の扉を開けると、そこには一本の白い杖が置かれていた。


 わたしは恐る恐る錬成器の中に入ると杖を手に取る。


「わあ……! セレスタお姉様と同じ杖です!」

「杖を取ったら出てきてもらえるかな、クリス」


 自分の手にある杖をまじまじと見ていると、アレキサンダーお兄様から声がかかる。わたしが錬成器から出ると、そこにはニコニコと嬉しそうに笑っているアレキサンダーお兄様がいた。


「どうだい、クリス。自分で作った杖は?」

「とても嬉しいです! ありがとうございます、お兄様!」


 錬成器から出てきたわたしは、自分の杖をじっくりと眺める。それは以前に見たセレスタお姉様の杖と全く同じ物だった。唯一違うのは手元にぽっかりと空いた穴だけだ。


 わたしが杖をじっくりと見ていると満足そうな顔をした、アレキサンダーお兄様が声をかけてくる。


「あとはこの間セレスタと一緒に買いに行った宝石を穴に嵌めれば完成だ。そこの留め具が魔銀でできているから、宝石を嵌めた後で魔力を流せば宝石が外れることはないよ」


 アレキサンダーお兄様が言うには、宝石が自分の魔力に馴染むまでには少し時間がかかるらしい。穴に宝石を嵌めてからしばらくすると魔力の通りがよくなるそうだ。


「それが私からクリスへの入学祝いだ。大切にしてくれると嬉しいな」

「絶対大切にします! ありがとうございます!」


 杖を握りしめたわたしはアレキサンダーお兄様を見上げると、満面の笑顔で礼をする。


 わたしは自分だけの魔導器を手に入れたことが嬉しくて、手の中にある魔導器をしばらくの間じっと眺め続けた。

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