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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第一章 きょうだいと楽しく過ごしたい!
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エメラルお兄様と秘密の場所

「おはようございます、クリスティア様」

「おはようございます、ローゼ」


 今日もいつものようにローゼから起床の挨拶を受けて、目を覚ます。


 昨日はセレスタお姉様とお出かけができて、とても楽しかった。満足感を胸に眠りについたためか、いつもよりよく眠れた気がする。


 わたしはベッドから体を起こすと、軽く伸びをする。


「ん~」

「今日の体調はいかがでしょうか、クリスティア様」

「絶好調です、ローゼ!」

「クリスティア様が元気なようで、私も嬉しいです」


 わたしはローゼの方を向くと、元気良く返事をする。ローゼはそんなわたしを見て、ニコニコと微笑みを浮かべている。わたしはベッドから降りると、朝の支度を始める。


 ローゼに支度を手伝ってもらいながら、今日の予定を考える。


「今日はどうしましょう、ローゼ。他のきょうだいは城にいるのですか?」

「今日はセレスタ様とエメラル様がいらっしゃいますね。どうされますか?」

「それでは二人にお茶会をしたいと朝食の時に言ってみましょうか。今日は天気も良いですからね」


 部屋の窓からは明るい光が差し込んでいる。わたしは目を細めながら外を眺めながら、お茶会に思いを馳せる。わたしは両手を握りしめて、ローゼの方を振り向いた。


「部屋では何度かお茶会しましたが、外では初めてなので楽しみです!」

「はい。そのためにも早く支度を済ませて、食堂へ向かいましょう」


 支度の手が止まっていますよと言われて、わたしは慌てて支度を再開した。


 支度を済ませ食堂に向かう途中、偶然出会ったセレスタお姉様に声をかけられた。


「ごきげんよう、クリス」

「おはようございます、セレスタお姉様。昨日は楽しかったですね!」


 昨日のことは何度思い出しても楽しい気持ちになり、頬が緩んでしまう。セレスタお姉様も自分のブレスレットにちらりと視線を向けると、はにかむように笑顔を浮かべる。


「ええ、本当に楽しかったですわね! 今日はどうしますの?」

「お姉様とエメラルお兄様を誘って、外でお茶会をしたいと思っていたのです。お姉様は今日の予定はいかがですか?」

「そうですわね……問題ありませんわ。一緒にお茶会しましょう、クリス!」


 少し考えたあとセレスタお姉様は頷いてくれた。今日のお茶会の話をしながら、わたし達は仲良く食堂へ向かう。


 食堂に到着すると、お父様、お母様、エメラルお兄様が既に着席している。


「皆様、おはようございます」


 わたしとセレスタお姉様が皆に挨拶をして、席に座ると朝食が始まる。わたしは早速エメラルお兄様にお茶会の話をすることにした。


「エメラルお兄様、今日の予定はいかがですか? わたしとセレスタお姉様でお茶会をしようという話をしていたのです」

「いいよ。僕もクリスとお茶会するのが楽しみだったんだ」

「ありがとうございます、お兄様!」


 エメラルお兄様は表情を緩めるとそう言ってくれた。これで今日は三人でお茶会をすることに決まった。


 わたしが期待に胸を膨らませていると、エメラルお兄様とお茶会の相談を始める。


「クリス、お茶会の場所はもう決まってる?」

「いいえ、これから決めるところです。今日はいい天気なので、外でお茶会したいと思っているのですが……」

「それなら丁度いい場所を知ってるから、お茶会の場所は僕に任せてもらってもいいかな?」

「分かりました。楽しみにしていますね、お兄様!」


 どうやらエメラルお兄様にはとっておきの場所があるらしい。わたし達はお茶会のことをワイワイと話しながら、楽しい朝食を過ごした。


 朝食を終えて部屋に戻ろうとすると、お母様に呼び止められる。どうやらお母様も一緒に部屋まで来てくれるそうだ。


 わたしはお母様と手を繋ぎながら部屋へと向かうと、お母様は心配そうにこちらを見つめている。


「クリス、体調はいかがですか? セレスタとエメラルの言うことをちゃんと聞いていますか?」

「お母様、もう大丈夫です! 『生命活性』も安定してきて、昨日も町で楽しく過ごせましたもの!」

「ならいいのですが……気を付けて過ごすのですよ、クリス」

「もちろんです、お母様!」


 わたしはもう大丈夫だと伝えるため、繋いだ手をぎゅっと強く握る。お母様も安心したようで、わたしの手をぎゅっと握り返して微笑んでくれた。


 部屋までお母様に送り届けてもらうと、わたしはお茶会の準備を始める。


「ローゼ、昨日のシュネーバルはまだ残っているでしょうか?」

「ええ、クリスティア様。保存の魔道具にしまってあります」


 そう言ってローゼは部屋の隅にある大きな箱を指し示す。保存の魔道具は、物の劣化を抑える効果があり、食品や花などの劣化しやすい物に使われる魔道具だ。


「ではお菓子はそれを持って行きましょう。お茶はどうしましょう?」

「そうですね……今回はクリスティア様のお好みのお茶にしましょうか。次回以降はセレスタ様やエメラル様が好む物を用意しましょう」


 今日のお茶会はセレスタお姉様、エメラルお兄様とお菓子を持ち寄って外で行われる。今回のお茶はわたしが用意するが、わたしはまだお茶会の経験が少ない。


 そのためまずは二人の反応を見て、次からは二人好みの物を用意しようという話になった。


「二人がどのようなお菓子を持ってくるのか楽しみですね! ローゼはお茶会の場所のことは知っているのですか?」

「ええ、先ほどエメラル様からお聞きしました。ですが、クリスティア様にはまだ秘密だそうです」


 ローゼは悪戯っぽく片目をつぶり、指を立てると口元にあてる。


「セレスタ様とご一緒に魔動車で移動しますので、到着してからのお楽しみですよ。クリスティア様」

「分かりました……楽しみにしています、ローゼ!」


 そうしてローゼと会話しながらお茶会の準備をしていると、セレスタお姉様との待ち合わせの時間になっていた。


 待ち合わせ場所には既にセレスタお姉様の姿があり、魔動車も用意されているのが見える。わたしはセレスタお姉様を見つけると、テクテクと歩いて近づく。


「お待たせしました、セレスタお姉様」

「今日は楽しみですわね、クリス! お菓子もちゃんと持ってきましたわ!」


 そう言うとセレスタお姉様は自分の手に持ったバスケットを見せてくれる。中身は分からないがとても楽しみだ。


 わたし達が話をしていると、魔動車の準備ができたようでローゼから声がかかる。


「それでは参りましょうか。セレスタ様、クリスティア様」

「はい、ローゼ。どこに連れて行ってくれるのか楽しみです!」


 二人で客室に乗り込むと、魔動車は目的地に向けて出発した。今日は布で窓が隠されており、外が見えないようになっている。客室には明かりがついているので暗くなることもない。


「お姉様も目的地はご存知ないのですよね?」

「ええ、教えてもらっていません。ただ、心当たりはありますわ」


 わたしが首を傾げながら聞くと、セレスタお姉様は微笑みながら頷く。


「そうなのですか?」

「ええ。でも楽しんでもらいたいので、クリスには内緒ですわ!」


 セレスタお姉様はそう言うと、先ほどのローゼのように指を立てて口元にあてた。わたしはそれを見てクスクスと笑いをこぼした。


 そんな会話をしているうちに、目的地に到着したようで魔動車が止まる。


 わたしが早く降りたくてうずうずしていると、先に降りたローゼが扉を開けてくれる。その瞬間、爽やかな花の匂いがわたしの鼻を通り抜けていく。


「いい匂いがします……!」

「到着しました。セレスタ様、クリスティア様」


 ローゼがそう言って、魔動車から手を引いて降ろしてくれる。地面に足をつけて周りを見回すと、綺麗な花がたくさん咲いていることに気付いた。


「わあ~~!!」


 わたしは目を輝かせて、周りを何度も見回す。赤や白、ピンクに黄色など春らしい色の花が咲いていてとても綺麗だ。


「お姉様、見て下さい! お花がたくさん咲いていて、とても綺麗です!」

「ええ、何度見ても素晴らしいですわね……」


 セレスタお姉様の手を引っ張りながらそう言うと、セレスタお姉様も優しい微笑みを浮かべて、わたしの頭を撫でてくれる。


 しばらく花の香りを堪能しながら、周りをキョロキョロと見ていると、エメラルお兄様がまだ来ていないことに気付いた。


「そう言えば、エメラルお兄様の姿が見えませんが、どちらにいらっしゃるのでしょうか?」

「エメラルならあそこにいますわ、クリス……」


 セレスタお姉様が少し呆れて指を差したのは空だった。そう言われてわたしが上を見上げると、点だった物が徐々にこちらへ近づいて来ることに気付いた。


「あれがエメラルお兄様なのですか?」

「ええ、魔法で空を飛んでいるのですわ」

「え!?」


 以前エメラルお兄様から空を飛ぶことができると聞いていたが、実際に飛んでいるところを見ると興奮が治まらない。


 少し待っていると箒にまたがったエメラルお兄様が地面に降りてきたので、わたしはエメラルお兄様に駆け寄る。


「お待たせ。クリス、姉さん」

「エメラルお兄様! 風魔法で空を飛んできたのですか!?」


 わたしが目を輝かせて見つめると、エメラルお兄様が照れ隠しなのか、笑顔でわたしの頭をぐりぐりと撫でてくる。


 少し遅れてわたし達のもとに来たセレスタお姉様は、呆れた表情でエメラルお兄様に話しかける。


「お待ちしていましたわ、エメラル。随分と格好付けた登場ですこと」

「クリスに飛ぶ姿を見せようかと思ったんだ。クリス、どうだった?」

「驚きました! わたしも早く飛べるようになりたいです!」


 わたしが興奮して箒を見ていると、エメラルお兄様の手元に緑色の宝石が光っていることに気付く。


「この箒がエメラルお兄様の魔導器ですか?」

「うん、この間は見せられなかったからね。どうだい? クリスも箒型の魔導器が欲しくなったかな?」

「そうですね……もう少し考えてみます!」


 わたしが笑顔でそう答えると、エメラルお兄様も満足そうに笑う。そのままエメラルお兄様はこの場所の説明をしてくれる。


「ここは植物園。城の敷地内にあって、花や木なんかの植物を研究してるんだ」

「だからこんなにたくさん花が咲いているのですね!」

「ああ、春は綺麗な花もたくさん咲いているから、クリスに見せたかったんだ」


 エメラルお兄様が箒を地面に突き立て片手を広げると、地面からたくさんの花が咲く。色とりどりの花が一瞬のうちに咲く光景はとても綺麗で、わたしは感嘆の息を吐く。


「わあ……!」

「改めまして……ようこそ植物園へ! 歓迎するよ、クリス!」

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