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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第一章 きょうだいと楽しく過ごしたい!
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セレスタお姉様と贈り物

 セレスタお姉様と手を繋ぎながら人混みを歩いていると、スピネルに連れられて町を歩いたことを思い出す。


 それと同時に先ほどお世話になったお菓子屋のことを思い出す。わたしは隣を歩くセレスタお姉様を見上げると声をかけた。


「お姉様、帰る前にお菓子屋にお礼を言いに行きたいです!」

「クリスがお世話になったというお菓子屋のことかしら?」

「はい! お姉様が見つかったら買いに行くと約束したのです!」

「いいですわよ。それでは行きましょうか」


 わたしは今度こそしっかりと手を繋いで、美味しそうな匂いのするお菓子屋へと向かう。お菓子屋に到着すると、こちらを見て目を丸くした店員が話しかけてくる。


「嬢ちゃん、姉ちゃんに会えたのか! 心配してたんだが、良かったぜ」

「先ほどはありがとうございました、おかげ様でお姉様にも再会することができました!」

「クリスがお世話になりましたわ。わたくしからもお礼させてくださいませ」


 わたしとセレスタお姉様が礼を言うと店員は、照れたように顔を背けて頬をかいた。


「お礼なんていいって! それに坊主のおかげで姉ちゃんに会えたんだから、礼を言うなら坊主に言いな!」

「はい! スピネルにもお礼を言って別れました!」

「それは良かった。まあ礼がしたいって言うなら、お菓子を買ってくれると嬉しいぜ」

「もちろんです!」


 店員がそう言ってシュネーバルの山を指差すと、わたしは一歩前に出てシュネーバルを選ぶ。どれにしようかと悩みながら味を決めると、わたしは口を開く。


「わたし、これが食べたいです! ローゼ!」


 わたしがそう言いながら後ろを振り向くと、そこにはローゼとセレスタお姉様が笑いながら立っている。わたしも二人と再会できた喜びを噛みしめ、二人に笑顔を見せる。


 ローゼに会計を済ませてもらうと、店員にもう一度礼を言ってお菓子屋を離れる。


「また町に来た時は寄ってくれよな、嬢ちゃん!」

「ええ、ありがとうございました!」


 それからしばらくテクテクと歩いていると、魔動車が停めてある町はずれの広場に辿り着いた。わたし達が魔動車に乗り込むと、ローゼが出発の合図をして魔動車は走り始める。


 出発して一息つくと、セレスタお姉様と今日のことについて話をする。


「クリスは今日一日過ごしてみて、体調は大丈夫でしたの?」

「ええ、お姉様。もう普通に過ごす分には問題ないみたいです」


 一日中『生命活性』の魔力量を三十にしたまま過ごしていたが、もう特に意識していなくても普通に過ごすことができている。


「流石に迷子になってしまったときは、焦ってしまいましたけど……」

「そうですわね……わたくしもきちんと見ていなくてはいけませんでしたのに……」


 迷子の話をすると、セレスタお姉様がその時のことを思い出して俯いてしまった。わたしが勝手に飛び出して行っただけなのに、セレスタお姉様に辛い思いはさせたくない。


 そう思ったわたしは話題を変えることにした。


「でも、そのおかげでスピネルと仲良くなることができましたよ!」

「そうですわね……悪い方ではないので、学園では仲良くするといいと思いますわ」

「はい! わたし、また一つ学園が楽しみになりました!」


 セレスタお姉様と楽しく話をしていると、いつの間にか城へと到着していたようで、窓の外の風景が止まっていることに気付いた。


「セレスタ様、クリスティア様。城に到着しました。」


 ガチャリと扉が開くと、ローゼがこちらに向けて手を差し出す。二人で魔動車から降りると広々とした城の庭が広がっており、とても気持ちがいい。


「ん~」


 わたしが気持ち良さに伸びをしていると、セレスタお姉様が手を差し出してくる。


「さあクリス、城に入りましょう。少し冷えてきましたわ」

「はい、お姉様!」


 わたしはセレスタお姉様と手を繋ぐと城の中へと向かう。


「まだ夕食までは少し時間があるので、クリスの部屋でお茶会しませんこと? 贈り物も渡したいですもの!」

「いいですね! そうしましょう、お姉様!」


 お茶会の約束をしたわたし達は、城に入ったところで一旦別れて後で合流することにした。


 わたしが部屋に戻ってローゼにお茶の支度をしてもらっていると、セレスタお姉様が先ほどの宝石店の袋を持って部屋にやって来た。


「こちらにどうぞ、お姉様」

「ありがとう、クリス」


 わたしはセレスタお姉様に椅子を勧める。席はもちろんわたしの隣だ。わたしが席に座ると二人のお茶会が始まる。テーブルの上には既にお茶とお菓子が並んでおり、お菓子は先ほど買ったシュネーバルを用意して貰った。


 セレスタお姉様はお茶を一口飲み、先ほど宝石店で購入した贈り物を取り出すと、満面の笑みでわたしに差しだしてくる。


「クリス、こちらを貴女に贈りますわ!」

「ありがとうございます、お姉様! 開けてもいいですか!?」

「もちろんですわ! 開けてみて下さいませ!」


 セレスタお姉様は目をキラキラと輝かせて、わたしが贈り物の入った袋を開けるのを見ている。わたしも何が入っているのか楽しみで、自然と笑みがこぼれてしまう。


 袋の中には小さな箱が入っており、中身を想像すると胸が高鳴る。わたしは確かめるようにゆっくりと箱のふたを開けていく。


 中にはわたしの目の色によく似た水色の宝石の嵌った指輪が入っていた。わたしは喜びのあまり、勢いよくセレスタお姉様の方を向く。


「お姉様! 着けてみてもいいですか!?」

「ええ、着け方を教えて差し上げますわ!」


 セレスタお姉様が笑顔で指輪の着け方を教えてくれる。


「これは魔銀でできているので、魔力を流すと大きさを変えることができますわ!」

「仕立て屋で聞いた魔布と似ていますね。魔力はどう流せばよいのでしょう?」


『生命活性』で魔力を制御しているので、魔力の流し方は分かる。だが、体の外に魔力を出したことがないわたしは首を傾げる。


「『生命活性』を使う時のように、手に魔力を集めてみてくださいませ」

「分かりました、やってみます!」


 わたしは目を閉じて集中すると、魔力の流れを左手へと向ける。なんとなく手に魔力が集まったと思ったところで目を開けて、わたしは魔力の集まった左手をセレスタお姉様に差しだす。


「お姉様、できたと思います」

「それでは指に着けますわね。どの指がいいかしら?」

「中指に着けたいです!」


 セレスタお姉様が箱から指輪を恭しく取り出すと、わたしの中指に通してくれる。すると、少し大きかった指輪が魔力を吸収して、わたしに合った大きさへと縮まった。


 わたしは目を丸くしてぴったりの大きさになった指輪を見つめる。


「綺麗です……!」


 わたしが目を輝かせると、指輪の宝石も笑っているようにキラリと光る。それを見て、わたしは胸がいっぱいになり、セレスタお姉様に抱き着く。


「お姉様!」


 セレスタお姉様は目を細めるとわたしの頭を優しく撫でてくれる。わたしもお姉様に抱き着く力を強くして喜びを示す。


「クリス! わたくし、潰れてしまいますわ!」

「ごめんなさい! 指輪をもらったのが嬉しくて、つい力を入れすぎてしまいました!」


 わたしはハッとしたように離れると、咳払いをして気持ちを立て直す。それでも嬉しさはなくならず口元が緩んでしまう。


 指輪を着けた手をぎゅっと握りしめ、セレスタお姉様に感謝の気持ちを伝える。


「ありがとうございます、お姉様! わたし、大事にしますね!」

「ええ、大事にしてくださいませ! クリス!」


 わたしとセレスタお姉様は一度落ち着くと、椅子に座り直す。わたしは少し冷めてしまったお茶をローゼに淹れ直してもらう。


「ローゼ、お茶を淹れ直してもらえますか?」

「かしこまりました、クリスティア様。少々お待ちください」


 ローゼは一度後ろに下がると、トレーにお茶を乗せて持ってきてくれた。そこには先ほどわたしがもらった物と同じ袋も乗っている。


 わたしはその袋を手に取ると、笑顔でセレスタお姉様に差し出す。


「セレスタお姉様、こちらをお姉様に贈ります」

「え……?」


 まさか自分がもらえるとは思っていなかったのか、セレスタお姉様は目を丸くして固まってしまった。


 わたしがセレスタお姉様に笑顔で袋を渡すと、セレスタお姉様もゆっくりと袋を開ける。


 その中には澄み渡る空のような水色の宝石が輝くブレスレットが入っていた。


「これは……?」

「わたしからの贈り物です、お姉様」


 数秒置いてセレスタお姉様はわたしの言葉の意味を理解したのか、目に溜まった涙があふれ出す。


「クリス……」

「着けてみてもらえませんか? お姉様」


 わたしがそう言うとセレスタお姉様はブレスレットを装着してくれる。腕を揺らす度に水色の宝石が輝いてとても綺麗だ。


 わたしは左手の中指に着けた指輪を見せると、セレスタお姉様に笑いかける。


「これでお揃いですね、お姉様!」

「クリス~~!!」


 わたしは抱き着いてくるセレスタお姉様を受け止める。しかし、勢いが強く後ろに倒れそうになる。


「お姉様! 危ないです! 倒れそうです!」

「クリス~~!!」


 セレスタお姉様はわたしの言葉に構わず、頬ずりをしてくる。しばらくの間セレスタお姉様は頬ずりをすると、落ち着いたようでわたしから離れていく。


 気を取り直したセレスタお姉様は、うっとりしながら自分のブレスレットを眺めている。


「それにしても、いつの間にブレスレットを選んでいましたの? 全然気づきませんでしたわ……」

「セレスタお姉様がわたしの指輪を選んでいる間です。クラウスに相談して選びました!」


 わたしはセレスタお姉様がアクセサリーを選び始めた時、戻って来たクラウスに相談してブレスレットを選んでいたのだ。


 悩んだ結果、水色の宝石が嵌ったブレスレットを贈ったが、わたしの指輪と同じ水色だとは思っていなかったのでとても驚いた。


 セレスタお姉様が一度ブレスレットを揺らすと、手をぎゅっと握りしめ満面の笑みを浮かべる。


「わたくし、大事にしますわね! ありがとう、クリス!」

「わたしの方こそ、ありがとうございます! 大事にしますね!」


 二人でアクセサリーを見せて笑い合う。今日は色々あったが、一日の最後にセレスタお姉様の笑顔が見られて良かった。


 こうして、わたしの初めてのお出かけは終わったのだった。


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