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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第一章 きょうだいと楽しく過ごしたい!
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セレスタお姉様と宝石店

 迷子になったことを注意されながら、セレスタお姉様とローゼとの昼食を終えると、わたし達は宝石店に向かった。


 宝石店は昼食を食べた店から近い場所にあるらしい。わたしはセレスタお姉様の手をしっかり握りながらテクテクと歩く。


「宝石店はどのような場所なんですか?」

「そうですわね……魔導器に嵌める宝石はもちろん、宝石を使ったアクセサリーなども置いてありますわ」

「宝石を使ったアクセサリーですか?」

「ええ。腕輪や指輪、首飾り、髪飾りもありましたわね」


 セレスタお姉様は空いている方の手で指折り数えながら、どんなアクセサリーがあるのか教えてくれた。わたしはその話を聞いて、宝石店への期待で胸を膨らませていく。


「クリス、到着ですわ!」

「こちらが宝石店なのですか?」


 わたしはそれを聞いて首を傾げる。セレスタお姉様が指し示しているのは、看板で何とか宝石店と分かるくらい地味な店だった。


 見た目で言えば先ほどの仕立て屋の方が目立っていたくらいだ。わたしは率直な感想を口にする。


「何だか地味な見た目ですね……」

「あら。見た目は地味かもしれませんが、お店の中は凄いですわよ」


 そう言うと自慢するように胸を張るセレスタお姉様。セレスタお姉様がそこまで言うのであれば、きっと店の中は凄いのだろう。わたしはわくわくした気持ちで店へと向かう。


 ローゼが扉に手をかけると、ぎぃと木がきしむような音がして扉が開いていく。店内には煌びやかな宝石やアクセサリーが並べて飾ってあり、映えるように照明が当てられているのでとても輝いて見える。


 澄み渡る空のような水色の宝石が嵌ったブレスレット、細かい装飾がされた緑色の宝石が美しい指輪、輝く赤色の宝石が綺麗な首飾りなど様々だ。


「わあ……! キラキラと輝いて、とても綺麗です……!」


 わたしがほうと息を吐くとセレスタお姉様もニコニコと笑っている。わたしが店内を見回していると、店の奥から一人のおじいさんが出てきた。


「おお、いらっしゃいませ。セレスタ殿下。お久しぶりですね」

「ごきげんよう、クラウス。今日は妹の魔導器に嵌める宝石を買いに来ましたの」


 クラウスと名乗るおじいさんはニコリと笑い、わたしの方を向く。


「お噂は伺っております、クリスティア殿下。お会いできて光栄です。クラウスと申します」

「エデルシュタイン王国第六王女、クリスティア・エデルシュタインと申します。よろしくお願いしますね、クラウス」


 わたしもクラウスの方を向くと挨拶を済ませる。それよりもクラウスはわたしのことを知っているような口ぶりだった。わたしはクラウスに訊いてみる。


「クラウス。わたしの噂と言うのは……」

「ああ、病に臥せっていたクリスティア殿下が、快復なされたという噂ですよ。実際にお会いすると、とても可愛らしいお方だったので、驚いてしまいました」


 どうやら悪い噂ではないようで、わたしはホッと胸を撫でおろした。クラウスは優しい目でわたしを見つめ、ニコニコと笑みを浮かべている。


 わたしとの話を終えたクラウスは、セレスタお姉様に向けて口を開く。


「魔導器に嵌める宝石は何色を御所望ですか?」

「高品質の宝石を全て見せてもらえませんこと? 用意してもらえれば、クリスに自分で選んでもらいますわ」

「かしこまりました、セレスタ様」


 そう言うとクラウスはゆっくりとした動作で、店の奥へ入っていった。わたしはセレスタお姉様と話しながら、店内を見て待つことにした。


「セレスタお姉様、宝石は高品質の方が良いのですよね?」

「そうですわ。品質が高いほど魔力の伝導率が高く、強力な魔法を使うことができますの」


 セレスタお姉様は腰のベルトから白い杖を取り出すと、宝石の部分をわたしに見せてくれる。


「わたくしの魔導器の宝石はこれですわ。これも高品質な宝石ですの」

「何度見ても綺麗な宝石ですね……!」


 杖の宝石を見つめてわたしがうっとりしていると、クラウスがトレーに宝石を乗せた状態で持ってきてくれる。


「こちらが当店で取り扱っている最高品質の宝石になります、クリスティア殿下、セレスタ殿下」

「とても美しいです!」


 わたしは目を輝かせて宝石を見つめる。赤、青、緑、茶、黄、紫、そして透明。そこには十個ほどの色とりどりな宝石が並んでいる。


「クラウス、魔導器に嵌める宝石に選び方はあるのですか?」

「そうですね……多くの方はセレスタ様のように、自分の属性魔法に対応した色を選ばれますね」


 クラウスの言葉によると、宝石の選び方には品質と色という二つの要素があるそうだ。小さくて魔力伝導率が高い物ほど高品質となり、自分の属性魔法に対応した色を選ぶことでより強力な魔法を使うことができるらしい。


 わたしはふんふんと頷きながらクラウスの説明を聞く。セレスタお姉様も頷いて、自分の魔導器を見下ろす。


「わたくしは水属性に適性があるので、青色の宝石にしましたけれど、クリスは好きな色の宝石を選ぶことができますわ」

「そうなのですか? どの色にしましょう?」

「自分がより強く使いたい属性魔法の色を選べばいいのですわ」


 わたしは全属性に適性があるため、どの色の宝石でも対応しているらしい。火の赤、水の青、風の緑、土の茶、光の黄、闇の紫。どれを選ぶのも自由だ。


 わたしがクラウスに用意して貰った宝石に目を向けると、どの宝石もキラキラと輝いていてとても綺麗だ。


 わたしが視線をさまよわせながら悩んでいると、その中で一際輝いている透明な宝石に目が留まる。


「クラウス、この宝石は何でしょう? とても綺麗ですが、他の宝石と違って属性の色ではありませんよね……」

「クリスティア殿下のおっしゃる通り、こちらは属性に対応した宝石ではありません。しかし、この宝石は他の宝石よりも高品質で、色々な魔法を使うことができますよ」

「そうなのですね……」


 クラウスの言葉を聞いてわたしは考える。


 わたしは全属性に適性を持っているため、どの宝石も対応しているらしい。しかし、わたしは属性を決めず、色々な魔法を使ってみたいのだ。


 そのため、他の宝石よりも高品質である透明な宝石は、わたしに最適なのではないかと思い始めた。


 属性魔法に対応していなくても、『魔力活性』で魔力を上げることができれば、強力な魔法も使えるかもしれない。


 わたしがそれを二人に伝えると、二人は難しい顔をする。


「確かにそれならば、この宝石が良いかもしれませんが……」

「いけませんわ、クリス! 『魔力活性』を使うのは許可できませんわ!」


 セレスタお姉様が心配そうな表情でわたしを見つめてくるが、わたしも力強くセレスタお姉様を見つめ返す。


「今すぐのことではありません、お姉様。わたしが学園で魔法を学び、きちんと魔力を制御できるようになってからのことです」

「……分かりましたわ、クリス。でも今はまだ『魔力活性』はダメですからね!」


 わたしがそう言って説得すると、渋々ながらセレスタお姉様は頷いてくれた。わたしは満面の笑顔で振り返ると、クラウスに声をかける。


「それでは、クラウス。こちらの透明な宝石にします」

「かしこまりました、クリスティア殿下」


 クラウスは宝石の乗ったトレーを持って、店の奥へと下がっていった。一番の目的である魔導器に嵌める宝石を選んだわたし達は、飾られているアクセサリーに目を向ける。


「アクセサリーも素敵な物ばかりですね!」

「ええ、クリス! 素晴らしい物ばかりでしょう?」


 わたしがそう言うとセレスタお姉様は嬉しそうに頷き、アクセサリーを見ながらぽんと両手を合わせた。


「そうですわ! もし良ければ、クリスのアクセサリーを、わたくしに選ばせてもらえませんこと?」

「嬉しいですが、いいのですか? お姉様」

「ええ、わたくしからクリスへの入学祝いですわ!」


 わたしがセレスタお姉様をちらりと見ると、セレスタお姉様は大きく頷いた。


「分かりました、お姉様! ありがとうございます!」


 セレスタお姉様はわたしの言葉を聞くと、店内を見回しながらアクセサリーを真剣に選び始める。


「クリスには何が似合うかしら? 指輪やブレスレットも素敵ですし、首飾りも可愛いですわね……」


 セレスタお姉様がわたしのためにアクセサリーを選んでいる姿を見ていると、とても心が温かくなる。


 そうしている間に店の奥からクラウスが戻ってきたので、わたしは思いついたことをクラウスに相談することにした。相談を終えると、クラウスは笑顔で店の奥へ下がっていく。


 それからしばらくすると、セレスタお姉様はわたしのアクセサリーを選び終えたようで、華やかな声を上げる。


「決まりましたわ! クラウス、こちらを包んでもらえませんこと?」

「かしこまりました、セレスタ殿下」


 クラウスは礼をすると、セレスタお姉様が選んだ物を持って店の奥へと下がっていった。セレスタお姉様はわたしの方へ振り向くと、満面の笑みを浮かべた。


「クリス、アクセサリーは城に帰ってから渡しますわ! 楽しみにしていてくださいませ!」

「ええ、楽しみにしています! お姉様!」


 わたしも笑顔でそう答えると、ローゼがクラウスから商品の入った袋を受け取っているのが見えた。贈り物が楽しみなわたしはそれを見て、さらに頬を緩める。


 その後、しばらくセレスタお姉様と一緒にアクセサリーや宝石を見て楽しみ、店を出ることにした。


「またのお越しをお待ちしております。セレスタ殿下、クリスティア殿下」

「ええ。また来ますわ、クラウス」

「綺麗な宝石をたくさん見られてとても楽しかったです。また来ますね、クラウス」


 わたし達は二人でクラウスに挨拶をすると、クラウスもニコニコと笑って見送りをしてくれた。


 ローゼが開けてくれた店の扉を抜けると、茜色に染まった空が目に入る。その眩しさに思わず目を細め、わたし達は帰りの道を歩き出した。

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