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悪役令嬢は氷結の戦乙女  作者: marumarumary
第一部 氷結の戦乙女
4/34

舞踏会 ~悪役令嬢は虐めをかわす~

王太子妃選びの予選の様なもので、参加者の中から3~5名が選抜されるものと設定しています。

聖騎士候補2および3の者が登場します。

アレン頑張れ!


~王城、舞踏会場~


いよいよ社交界デビューの日が来た。

ゲームでは、この舞踏会で王太子の婚約者が決まった設定だった。

王太子に惚れたカサンドラが強引に婚約者になるのだが、もちろん私はそんなことしない。

そもそも、私は10歳から自宅に引き籠っており、王太子どころか誰とも交流が無い。

だから、ゲームの強制力があったとしても無理筋だと思うのよ。

私は、この舞踏会では社交界デビューと言う義務を果たすだけだ。

さすがの父も、筆頭侯爵家としてこれだけは許してくれなかった。

まぁ、まだ乙女ゲーム『5人の聖騎士と悲愛の魔王』は始まってもおらず、アレンとダンスして飯食って帰るだけだ。現時点で平民であるヒロインも居ないし。

それか、アレンの交友を広げる助けになれば良いが・・・。



”クリスティン侯爵令嬢、カサンドラ様並びにグレゴリー伯爵令息アレン様ご入場です”



「カサンドラお嬢様、さあ行きましょう。」


アレンから促され、私はゆっくり手をアレンへと差し出す。

「うふふ、頼もしいわねアレン。」

アレンは、そう言われてまんざらでもなさそうにカサンドラの手を取った。


二人が入場すると場内は一層賑やかとなった。

”あれがクリスティン侯爵秘蔵の令嬢か!”

”にこやかに微笑まれて、噂の冷淡令嬢と違うようだが”

”まるで花が咲いた様ではないか。”

二人に注がれる視線が熱い。


「凄いわねアレン!皆様貴方に注目しているゎ。」

と小声で耳打ちした。

するとアレンは怪訝そうに

「ご冗談を。注目されているのは・・・いえ、その、それでも良いです。はい。」

「 ? 」

アレンたら、意外と恥ずかしがり屋だったのね。

それとも、ゲーム内の様にねじ曲がった心の表現なのかしら。


正面に真っ直ぐ進み、鎮座する王太子に丁寧にお辞儀をする。

ここで、王太子としばし歓談と言うところだろうが、軽い挨拶程度の会話で済ませる。

王太子はにこやかに笑っている。実に爽やか高青年。

王太子ジークフリートは、金髪碧眼、見目麗しく、聖騎士候補、もちろん攻略対象者、王道中の王道の人。

でも、今は可能な限り避けるのが得策だ。

早々に王太子の前から抜け出し、入場セレモニーは終了。

後はしばしの自由行動、料理を食べるのは今しかないわ。

名残惜しそうなアレンを引っ張って、立食テーブルの方へゴー!


~~~~~~~~~


うんうん。どれも美味しい。

さすが王家の料理人。

当家の料理も美味しいとは思うが、普段、私は粗食に徹しているので、ここでの贅沢料理は凄く美味しく感じる。

最後に、ケーキを食べたいな~と、アレンにおねだりしてみる。

「ねえアレン、あれも食べてみない?」


「えっ、まだ食べるのですか? 普段節制しているのに良いのですか?」


「もう、今日くらい良いでしょ。 でね、半分こにしてほしいの!」


「うん、そう言うことなら分かりましたよ。しばしお待ちを。」



アレンが外した隙に誰かが近寄って来る。

「何やら楽しそうですね。私にもいただけますか?その半分こってやつを。」


「え! ジーク・・・フリート・・・様? ど、どうしてこちらへ?」

だって、ついさっき話したじゃん。


「それは深窓の御令嬢が来られたら、もっと話したいでしょう。私も男ですから」


「まぁ、深窓のって、私は単なる引き籠りですから。」


「ん? 引き篭もり…ですか? それはともかく、もう少しお話しませんか?」


アレンに目線で助けを求めるが、2歩も3歩も下がっている。

こんにゃろめ! 早くケーキを渡しやがれ。

ケーキを受け取り、丁寧に真っ二つする。


「・・・・。はい、半分こですよ。」

と言いながら一つをパクリと食べる。

ふふっ、この状況は置いておいて、予想どおり超美味しいー。

・・・と王太子を見るとこちらをうかがい微動だにしていない。


ん? そうか、フォークが無いから食べられないのか?

仕方が無いので、残りのケーキをジークフリートの口に運ぶ。

パクリと食べるジーク。


「どうですか?」

美味しいよね?と同意を求めるように聞いてみる。


王太子は驚いた様な顔をしていたが、

「うん、美味しいね。多分、貴方が食べさせてくれたからかな。」

と爽やかに返答して来る。


しまった。私が使ったフォークで食べさせてしまった。

しかし、あざとい男だな王太子は。前世の私なら絶対言わないわ、こんなセリフ。

何とかこの場から逃げなければ・・・・うふふと苦笑い。


辺りを見回すと楽団が準備をしている。

「ジークフリート様、そろそろダンスの時間ですわ。お相手の方がお待ちになっているのではないですか?」


「う~ん、それは残念。この後ダンスもお願いしますね。」

と言ってあっさり去って行った。

ふう、ダンスなんかするものか、さっさと逃げるに限る。


「アレン、隅っこに行きましょう。壁の花が最善だわ。」

「壁の花…ですか?」

怪訝そうなアレンと2人でそそくさと壁側へ向かう。




数メートル進んだところで事件は起きた。


"バシャ"


どうやら、私は某令嬢に水をかけられた様だ。


「あら、ごめんなさい。うっかりしてましたわ。おほはほほ。」

なんの悪びれも無く、美しい令嬢が冷淡な目つきでポーズだけの謝罪をしてくる。


「いえ、私こそぼんやりしてましたわ。申し訳ありません。」

パッとドレスを払うと水を弾き、綺麗に元通りとなった。

「ほら、ご覧の通り大丈夫ですわ。では、失礼します。」

綺麗な子なのに残念だなーと思いながらも踵を返す。


そこへアレンが慌てて突っ込んでくる。

「いやいやいやいや、今、思い切り水かけられてましたよね。」


「まぁ、良いじゃない。これくらい可愛いものよ。」


「でもですね、侯爵令嬢に向かって…。」


「ううん?、今の誰?」

驚いて立ち尽くしている某令嬢をチラ見しながら聞いてみる。

彼女は何やら真っ赤な顔で地団駄を踏み出したが・・・


「いや、知りませんけど。」


「じゃ、なおさらね。おそらく最上位貴族、四大公爵家のどこかね。

 多分、彼女の心の中で、色々許せない事があったのよ。

 それに、ドレスは元に戻ったし被害は無いわ。」


「…魔法、使いましたね。」


「そうそう、王城の中では禁止よね~。だから内緒よ。」


「まさか、詠唱なしで出来るとは…、貴女はいったい。。。。」


「だから、こんな小娘が魔法を使ったなんて誰も思わない。

 この舞踏会で初めて楽しいと思ったわ。やれば出来るのね。」


   「・・・!」


「さあ、ダンスが始まるわ。私たちも行きましょう。」


「・・・、なんだか納得出来無いけど、お嬢様が楽しいなら俺はそれで良いです。」

 カサンドラが屈託無く笑うところを見るのは、初めてかもしれない。




王太子カップルは、やはり1番の注目の的。

邪魔にならない様に少し端の方で踊ることにした。

しかし、しばらくすると潮が引く様に周りから人が居なくなった。

悪役令嬢はやはり避けられるものなのか。

まあ良い、どうせ今回限り。気にしない。


しばらく踊っているとアレンから

「お嬢様、皆様お嬢様に注目していますよ。」

と耳元で囁かれる。入場時の意趣返し?


「あらやだ、なんの冗談かしら。

 ふふっ、でも悪い気はしないわね。」

 ちょっと王太子ペアと張り合ってみようかしら。

「アレン、やるわよ。」

と耳打ちし、中央へ移動する。


”おおー”と、歓声が上がり一際場内が盛り上がる。

見事な二組によるコントラスト。あちらが”静”ならこちらは”動”だ。

練習の成果とアレンの魅力が全開だ。


~曲の終了に合わせ締めのポーズ~


見事決まったところで端へはける。


「上手く行ったわねアレン。」


「ええ、良い感じでした。」


「ちょっとバルコニーで休んで来るわ。」


「では、私は何かお飲み物をお持ちします。」


「ありがとう。お願いね。」


~バルコニー~


「ふう。」

夜風が気持ちいい。

そしてこの星空。

うん、この世界の夜空は悪くない。

さて、いつまでこの世界に居られるのかな。


「レディ、失礼、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

振り返ると、にっこりと薄ら笑いを浮かべた貴族然とした若者がいた。

う、まさかの攻略対象者。

現宰相の息子で、公爵家令息、オクティビア・グレイス。

ジークフリートの右腕だ。次期宰相が何しに来たんだ?


「はい、私はクリスティン家のカサンドラと申します。お初にお目にかかります。」

と淑女の礼を丁寧に取る。


「素晴らしいダンスでしたね。パートナーの方も素晴らしくて、将来を決められた方なのですか?

 ・・・おっと失礼。まだ名乗っていませんでしたね。

 私は、グレイス家のオクティビアと申します。」


と言うことは、そっち方面の偵察と言ったところか。

「まぁ、公爵家の・・・オクティビア様。

 本日のパートナーは一族の者ですゎ。特にそう言った関係ではございません。」

 と、愛想笑いとともに返しておく。


「そうですか。それは良かった。

 ところで、先ほどの見事な切り返しは・・・、魔法ですね?」


ギクっ、見ていたのか。こちらの話が本命のようだな。

「さあ、何のことでしょうか?」


とそこへアレンがグラスを持ってやって来る。

「アレン、丁度良かった。貴方の事を褒めていたところですわ。」


アレン(そういう風には見えなかったが)

「・・・・・・。」


「こちらは、グレイス公爵家のオクティビア様です。

 そして、こちらがグレゴリー伯爵家のアレン様です。」


バチVSバチVSバチVSバチ


「よろしく。」


「お目にかかれて光栄です。以後お見知りおきを。」

アレン(ムカついてつい睨んでしまったが、俺の目的は顔を得ることだ。

    俺としたことが、公爵家令息に張り合ってどうしようって言うんだ。)


「では、私達はこれで失礼しますわ。オホホホホ。」

さっさとこの場を去るに限る。

義務は果たしたし、後は帰るだけだ。



「ちっ、」

逃げられたか、まあ良い。知りたいことは知り得た。

オクティビアは、やや不満ながら主君であり友でもあるジークの元へ向かった。

”続きを読みたい”と思った方は、ブックマーク・評価”5つ星”をよろしくお願いします。

作者のモチベーションも上がりますので、ぜひよろしくお願いします。

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