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魔法使いの夏  作者: mizuki.r
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エピローグ

 ランドゥールの北部に広がるソーリューズの森。そこへ向かう道はブドウ畑の間を縫って続いている。

 冬も近いある日、すでに収穫を終えた畑の間を抜ける馬の背に森へと向かう三人の旅人がいた。

「あの森だよ。あそこが聖なるソーリューズだ」

 ローウェンが一瞬馬を止めて、すぐ先に広がる森を指し示した。

 同じ馬の背から、寒風に頬を赤くしたティータが息を吐く。

「ようやく辿り着けたのね」

 一人は病人、一人は投獄と拷問による怪我。あまり芳しくない二人の体調をいたわりながらの旅がようやく終わろうとしている。

「教会はよく黙っているね」

 ロクリスがいぶかしむようにつぶやく。

「本当はもっと厳しくしたいんだろうけどね。ここは中央教会から離れているし、なにより自由な気風で古くからの習俗がまだ生きている土地だから、ヘタに押さえつけようとすればかえって反発を招く。それに、こちらもあまり教会を刺激しないようには気はつけてるよ」

 彼らは馬を進めて森の中へ歩み入る。

 広葉樹はすでに色づき、ほとんどが葉を落としていた。木々の隙間から日差しが差し込み森の中は意外に明るい。

 見上げたティータの表情が夢をみているようなものになる。

「きれい。こんな浅い場所でももうきらめいているのね」

「ああ、でも奥の方はもっと濃いね」

 ローウェンの表情が嬉しそうに緩む。

「そりゃあよかった。二人がそういうなら安心したよ」

 ロクリスが不思議そうに首をかしげる。

「だが、森で暮らす癒し手の方がここは力の場所だとおっしゃっていらしたんだろう?」

「うん。でも、俺には見えないからね。こことあの水場が本当に同じようなものなのかわからなくて心配だったんだ」

 ティータは小さく笑う。

「ローウェンに見えないのってなんだか不思議ね」

 彼は手綱を手に肩をすくめる。

「俺はただの楽師だからね」

「ただの? ではないだろう」


 ランドゥールは古き伝説の残る地。

 自らを封じた魔法使いの伝説が息づき。

 力の場所を抱く聖なる森トゥールーズには癒しの魔女が住み。

 神の歌い手は、ただその音楽の力で、神々の器となりて奇跡をあらわす。

 その日、約束の魔法使いと次代の癒しの魔女を伴い、神の歌い手がランドゥールの地に帰還した。

 神話の時代とは比ぶべくもないささやかな力しかない者たちではあったけれど。



およそ、流行とは外れた地味な作品にお付き合いいただいてありがとうございました。

少しでも、楽しんでいたたけていたら嬉しいです。

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