友人とは
拙いが、演出は見事。特に最後の荘厳なる魔法を見れたこと、まことに幸甚であった。
そう陛下から言葉を賜った。急なアドリブだったため仕方ないと思う一方、良し悪しがよく分からないため予め知っていても変わらないなとも思う。
ハルトギルマスさんに促され、僕達はこの場から去ることになった。
正直なところ、あんな大勢の観衆の前で宣言されるとは思っていなかった。
けど、プライベートで言うよりも観衆の前で告げたほうが効果があるって言われてしまったら何も言えない。
ともあれ、登城の用は思っていたより早く済んだ。だから残りは秘境に向かう準備に当てることにする。
必要なものは…………あれ? 家にあるもので大体賄えるような気がする。
「ん? どうしたんだ? そんな深刻な顔をして何か悩み事かよ?」
「……どうしましょう、秘境に行くにあたって必要な物を考えていたんですが、大体家にあるんですよね。折角準備に当てようと思っていたのに……」
「……鍛錬でもしたらいいんじゃないか?」
「はあ。まぁそうですね。そうしますか」
「頑張ろうね!」
「そうだね! 頑張ろう!」
「おい……」
家に送ってもらい、早速とばかりにアリーチェと鍛錬を行う。
僕達の鍛錬に気づいたのか、皆が次々に集まってきて、思い思いに鍛錬を始めていく。
「あはは、みんな集まってきたね」
「そうだね! ……ねぇ、エルナー? メローネたちはやっぱりお留守番?」
「彼ら次第だよ。一応ラーシャーさん達は十分戦力になるって判断だけど、心が伴ってないとも言ってた。アルト達が決断して、行くと決めたのなら僕は拒まないよ」
僕としては一緒に来てほしいけれどね。ただ、人数が多いと戦力としてはいいかもしれないけど、その分リスクも大きいんだよね。
烏滸がましいかもしれないけれど、いざという時手が回らず助けられない事だってあるだろうし。
それでもアルト達が経験を積みたいと願ってくれるなら、僕はそれに応えるつもりではいるよ。
「それなら、俺たちも連れて行ってほしい。友人として協力したいし、冒険者として成長したい」
「アルト。南の秘境に呼ばれてはいるけど、安全とは限らないよ? それでもいいんだね?」
「ああ。みんなで話し合ったんだ。邪魔になったら見捨ててくれて構わない。迷惑ならそう言ってくれればいい。二人が見ている景色を、俺たちも見てみたいんだ」
嬉しい事を言ってくれる。僕達と同じ景色を見たい、か。けどねアルト、君は分かってないよ。
「迷惑だなんて思わないよ。そもそも、そう思うのなら初めに拒む。皆の努力はこの二年ずっと見てきたし、それに見合った成長もしている。皆も身体強化は身に着けてるし、戦力としてなら『雷牙』からも十分って言われてる。それを、邪魔になったら見捨てろ?」
自分でも、驚くくらいに頭にきているみたい。想いを吐くのが止められない。
「ふざけてるの? アルトは友人を邪魔だと思ったり、見捨てたりするの? しないよね? それを僕達がするとでも言うの? それってさ、僕達が狭量だって言ってるんだよね?」
「違うッ! すまん、俺の言葉が悪かった。同じことを言われたら、俺もきっとエルナーみたいに怒ると思う……。軽率だった、エルナー達に甘え過ぎていたな」
「甘えてくれていいよ。僕達も甘えさせてもらってる。言い換えるなら、頼りにしているんだよ。歳の近い友人が、僕達の求める光景を望んでくれている。これがどれだけ嬉しい事か」
僕とアリーチェにとって、アルト達は唯一ともに研鑽できる友人達だ。その存在のありがたさは言葉にできるほど安くはない。
だから、卑下する言葉は許さない。上でも下でもなく、対等で在ってほしいんだ。
「ねえ、アリーチェ。エルナー君って凄いね。大人っぽい」
「昔からエルナーってあんな感じなんだよ。本当に子供か? って村の人達に笑われてたんだよね」
アリーチェとメローネの会話が聞こえ、思わずアルトと見合わせると一気に気が抜けたよ。
お互い苦笑いだ。
「なんつーか。エルナーが熱い奴って分かって何よりだよ」
「失敬な。僕はクールな男だよ。目指すはジン!」
「目指してる時点で駄目じゃねーか」
アルトと笑い合う。これでいいんだよ、友人ってそういうものでしょう?
「二人とも笑っている所悪いのですが。アルト、そろそろ向かったほうがいいのでは?」
「ん? ああ、そうだな。なあエルナーとアリーチェ、よかったら一緒に来てくれないか?」
「あ、そうだね! アリーチェ、一緒に来て!」
「それは良いんだけど、どこに行くの?」
「冒険者ギルド!」
「若い連中が、ああやって繋がって行くところを見ると、なんだか感慨深いな」
「ちょっとぉ、ラーシャーってばオジサンっぽいわねぇ」
「言い方……」
△ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽
「パーティー名の変更をお願いします」
「理由をお聞きしてもよろしいですか?」
アルト達の用事とは、パーティー名の変更のようだ。受付のお姉さんとは意味合いは変わるけど、僕も気になる。
「はい。俺たち五人、これからは『黄金の誓約』と共に行動をするためにも、それに相応しいパーティー名が必要なんじゃないかって話になって。それが理由ですね」
「……なるほど。皆さんはそれでいいんですね?」
「「「「はいっ!」」」」
なんだかワクワクしてきた。アリーチェも笑みを隠そうとして失敗しているし。
僕達と共に在る為に、相応しい名前を。そんな事を考えていてくれたのかと思うと、どうしてもね。
嬉しいものだよ。それだけ、僕達との繋がりを大切に思ってくれているって分かるから。
「では、新しいパーティー名をお願いします」
「『金の足跡』でお願いします」
判断に困る名前が出てきた。そこにどういった意図が介在しているのだろう。
「これは私の好奇心なので、お答えしなくても構いません。よろしければ、そのパーティー名にした理由をお教えしていただけますか?」
おお、お姉さんいい仕事をしてますね!
そんな僕の考えが顔に出ていたのか、僕の方を見やってウインクを一ついただきました。
イタタタタッ! アリーチェ、なんで抓るのかなッ!?
「構いませんよ。俺たちは『黄金の誓約』についていくことになると思います。彼らの歩んだ道のりを、挑んだ難所を、至った景色を。そう言ったものを記して伝えていきたいという考えがあります」
「ぜひ頑張ってください応援しています!」
うわビックリした! 急に後ろから『風の道』の例の女性が声を上げたものだから思わず肩が反射で跳ねたよ。
僕達の足跡を記すという部分はともかくとして、確かに秘境に関しての記録は必要だと思う。
けど、誰がそれを執るのだろうか。後で訊いてみよう。
「わかりました、ありがとうございます。では、『金の足跡』に変更処理をしてきますので待合室でお待ちください」
奥へ向かうお姉さんを見送り、待合室に着くと早速ラムダを捕まえて訊いてみることにした。
「ねえラムダ。記して伝えるって言ってたけど、誰が記録を執るの?」
「あはは、僭越ながら僕が。小さい頃にさ、たまたま行商の人が絵本を持っててね、好意で読ませてくれたんだ。それで僕も、こういうのを描いてみたいなって思ったんだ」
「素敵な夢だね! 応援するよ! あ、でもそうするとモデルは僕達になるの?」
「もちろん! エルナーとアリーチェなら凄く映えるからね!」
「ああ、余計なこと言ってしまった……知らなければダメージは少なかったものを……」
自爆しました。くそう。
「ねえラムダ。その時はちゃんと可愛く描いてね?」
「もちろん! 頑張るよ。幸いなことに、メローネっていう厳しい監督が居るからね。アリーチェは可愛く、エルナーは格好良く描かれているかチェックするって息巻いてたから」
「ラムダ! 余計な事言わないのー!」
その、アリーチェさん? なんでそんなに乗り気なの?
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