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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
幾星霜に誓う泉の守護者
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常時依頼

 次の日も浄化作業も、ものの数分で僕が疲労困憊となり、解散の流れを辿った。

 『風の道』から二人が付いてくれているけれど、なんだか申し訳なく思う。

 とはいえ、身体強化を扱えるようになった彼らは、今の僕にとっては是非とも居てほしいのも事実だった。


「というわけで、他に何かやれることはないかと思いまして」


 冒険者ギルドの受付のお姉さんに頼ってみた。困ったような表情を浮かべているけど、さもありなん。

 ここは冒険者の行動の指標を指す場であり、仕事の斡旋の場であり、決して相談窓口などではないのである。

 それでも嫌な顔をせずに対応してくれるのはさすがのプロと言ったところだろう。僕はただの迷惑な客な訳だけど。


 言い訳をすると、一応掲示板を見て迷子のペット探しや老夫婦のお手伝いと言った依頼をやろうとし、居合わせた先輩方に止められたのだ。

 なんでも、そういった依頼は新人冒険者の為にあり、僕達が溝さらいを受けるきっかけとなった慣れるための依頼なのだとか。

 わざわざ教えてくれた先輩方に礼を言って別れて、どうしたものかと困っていたら受付のお姉さんと目が合ったのだ。そうして先ほどの発言に至った。


「特に問題が無いのであれば、常時依頼をしてはいかがでしょう。どのランクでも受け付けていますしそちらの剣を馴染ませるのにも丁度いいのではないでしょうか」


 僕の腰に佩いている剣を見やりながら、受付のお姉さんは言う。

 普段から冒険者を相手に窓口となっている為か、そういった点を参考に実力を測るという変わった特技が培われるらしく、冒険者の男性は、受付のお姉さんの誰かとお付き合いできれば成功間違いなしなのだとか。そう『黄金の畔』で酔った誰かが教えてくれた。


「そうですね……。アリーチェもいいかな?」

「うん、問題ないよ」


 疲労困憊と言えど、簡単な魔法なら行使に問題はないし、体の方も精細さは劣るものの動かすのに支障はない。

 加えて、常時依頼の魔物は凡そ低ランクの魔物が多い為、余程油断しない限りは大丈夫と判断した。


 受付のお姉さんにお礼を言い、手を振って「頑張ってください」と言われたので僕達も笑顔で返答して冒険者ギルドを出たよ。

 その一瞬後に建物の中から歓声のようなものが沸き上がっていたが何かあったのかな?


「お、出るのか? 依頼かな?」

「はい、東の街道付近の森に居る魔物の間引きですね。常時依頼です」

「そうか、それは助かるよ。頑張っておいで」


 見知った門兵さんと軽くやり取りをし、街道に沿って東へと進む。

 常時依頼は、それ自体は冒険者ギルドにとってまるで旨味が無い。取れる素材も無くは無いけど価値は低く、それでいて数ばかりが多い。

 報酬を払うだけ赤字になってしまうのだ。ではどうして依頼として成り立つかと言えば、国が補償を出しているからだ。

 常時依頼の出されている場所は往々にして人の出入りがあり、かつ魔物が潜むのに適した場所、あるいは増えやすい魔物が住みついている場所だ。

 兵を出すには支出が多く、また放っておくと被害が尋常ではなくなってしまう。


 そのため冒険者のような専門家たちに間引きを依頼しているのだ。

 これが想定よりも効果を発揮していて、新人たちは訓練の一環として、ベテラン達も連携の確認や向上と言った形で利用し、報酬を得られる。

 他にも、討伐証明を得るために倒す目的以外に刃を通す訓練だったり、人型、動物型の動きの癖を学ぶ機会にもなる。

 冒険者にとってはメリットが多いのが常時依頼なのだ。


 門兵さんの言う助かるというのは、そこを通る人の被害がそれだけ減り、急な軍事行動が無くなって王都の治安維持に支障が出なくなるとのことだった。彼らはとても真面目なのだなと感心してしまったよ。


「もうそろそろ目的地だね」

「うん。ここではウルフとゴブリンが多いんだよね?」

「そうらしいね。ただ、たまに小人の国に生息する鳥の魔物も出たりするらしいから気を付けよう」


 享楽鳥(ワンダーバード)と言っただろうか。鳴き声が笑い声のように聞こえることからそう呼ばれるようだ。


享楽鳥(ワンダーバード)の鳴き声が聞こえたら即座に上空を警戒してください。襲撃を行う前に鳴き声を放つ習性がありますので」

「それって、相手にばれたら襲撃失敗するのでは?」

享楽鳥(ワンダーバード)は主に風の魔法を使います。刻まれたり、急な突風で動きを阻害されたりと厄介な相手ですので油断は禁物ですよ」

「魔法を使う魔物は、初めてだね。もし遭った時はよく見ておかないとだね!」


 向上心があって何よりだ。まぁ出遭わないに越した事は無いのだけれど。

 それでも心構えだけはしておこう。秘境ほどではないけれど、何があるか分からないからね。


 目的地の森に辿り着き、じっと森の様子を窺ってみる。

 普通の森だ。虫の鳴き声、鳥の歌や森のさざめき。僕は今普通の森に感動していた。


「普通の森だ……」

「普通の森だね……」

「最初に入った森が秘境というのは、間違ってますよ二人とも……」


 いやまあ。それを言われたら何も言えない。

 地図魔法でゴブリンのマーカーを示すと一部、集まりすぎて真っ赤になった部分がある。


「集落か、厄介だな」

「集落ですか? それってゴブリンの上位種が率いてたりするんです?」

「ああ。大体はホブゴブリンが率いる十数匹程度の規模だが、これはちょっと、いやかなり多いな。魔王様、どのくらいいるかはわかりますかね?」


 試しにカウントを意識して地図に触れると、光のような点が現れた。もしやと思って集まっている部分を囲うように指を進めて円を描くと、円の横にカウントが現れた。何でもありだなぁ、さすがレスター兄様のプレゼントだ。


「百三十ちょっとですね……。周囲に出ているのも含めれば百五十ほどにはなりそうです」

「魔王様、これは討伐隊案件です。すぐに戻り報告をするべきです」


 僕も討伐できるなどと自惚れてはいない。けれど看過できないカウントが表示されているんだよ。


 <生存:5>


 無言でこのカウントを指さし、『風の道』の二人とアリーチェに示す。どう思う? と。


 二人は驚愕に目を剥き、アリーチェは僕を決意の眼差しで見つめてくる。

 一つ頷き、口を開くよ。


「「行こう!」」


 口元がつり上がる。不謹慎だけど心底楽しい。これでこそ冒険者だ。


 『風の道』の二人も意を決してくれたようだ。弓を手に、気配を薄く。対して僕とアリーチェは魔力を練って存在感を露にさせる。


 それぞれが身体強化を行い、僕とアリーチェは『風錬』を追加で纏うと目的地に向けて駆けだす。


 進路上には多くのゴブリンがいる。それに交じってウルフも散見された。

 素早くウルフをマーカーに浮かべ、索敵を行っていく。

 僕達は一直線に駆けている。道中邪魔な魔物は僕とアリーチェが斬り払い、追ってくるか接敵しそうな魔物は『風の道』の二人が、走りながらも凄まじい精度で頭を射抜いていった!


 ふと思いつきで、<生存:5>をタップすると、マーカーが生えた。青いマーカー、つまり敵意無し。

 当然か。僕達の事を知る相手ではないだろう。それらのマーカーは偶然か、こちらに近づいている。


 逃げている、という事を窺い知れる。安堵したよ。

 ゴブリン達に蹂躙されていないと知れただけで、笑みが浮かぶというものだ。


「まもなく生存者と接触します! 二人は追手のゴブリン達の牽制と生存者の保護! アリーチェは僕と足止め!」

「「ハッ!!」」

「わかったッ! 踊るよッ!」


 牙を剝く。いよいよ生存者が視認できる距離に至り、僕とアリーチェは森を跳ぶッ!

 上から生存者を超え、木々を足場にゴブリン達へと斬りかかるッ!


 ザシュウウウウッッ!!


「「「「「――ッ!?」」」」」

「皆さん! こちらへ!」

「俺たちは『風の道』だ! 足止めしてるのが『黄金の誓約(ゴル・プレッジ)』の魔王様と黒姫様だ!」


 その紹介には異議を立てたい。『黄金の誓約(ゴル・プレッジ)』だけでいいじゃないか。

 まあ。今はそんな暇はないけどねッ!


 舞台は森、敵はゴブリン。僕とアリーチェは狭く密集したこの場で鋼と踊るッ!

 腕を、脚を、腹を、首を。円を意識し撫でるように斬りつけていく。

 そうしてようやく僕達に気づいたゴブリン達は。死んだ同胞に目もくれずアリーチェに下劣な目を向けていやがった。


 ああ、不愉快だ。

 ゴブリンどもよ、蝕む雷撃はいかがかな? たんと味わうといいよッ!

お読みいただきありがとうございます!

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