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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
幾星霜に誓う泉の守護者
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秘境の抱える問題

 気さくな人体模型こと、タナカさんと雑談しつつどうしても気になる点があった。

 なぜメイド服なのだろうか。確か、地下で屍蝋となっていたのは少年のような気がしたのだけど。


 視線が服に向いているのが分かるのか、タナカさんがスカートを摘まんで言う。


「気になりますか? 気になりますよね! 男の子ですもんね! やはり女子の格好には興味ありますよね!」

「え、女子?」

「女子ですよ?」

「「え?」」


 ほら、鎧も困惑してるじゃないか。……鎧?

 じっと鎧を見る。こいつ喋ったぞ。君も憑依したのか!


「あー、魔王様。俺は括られて死んでたやつだ。よろしくな」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 彼にも訊きたいことはあるけど今はタナカさんだ。


「女子云々は置いときまして。なぜメイド服を着ているのです?」

「置いとかれた! そして裸で居ろと!? 魔王様大胆ですね!!」

「酷い風評被害を受けた気分ですね。それでなぜメイド服を着ているのです?」

「流されたっ! さすが魔王と呼ばれるだけありますね……強い……ッ!」

「それでなぜ――」

「ごめんなさい面白そうと思ったんです、許してください」


 そんな理由か。そこでゲラゲラ笑い転げてる鎧君、床が傷むので止めていただきたい。

 別に服装については自由にしてもらってもいいのだけど、拘りというほどでもないけど足りないというのは気になる質なんだよね。


「ヘッドドレスはどうしたんです?」

「――ッ!?」


 両手両膝を床についてタナカさんは項垂れた。


「魔王様も大概だよなぁ」


 失礼な。僕はタナカさんほど笑いに命かけてないよ!

 ……おや、いつの間にか皆がこっちを見ている。折角なので皆にも紹介しよう。


「皆さんこちらに。紹介します、この人体模型はタナカさんと言い、家でメイドとして働いてくれるみたいです」

「おや、私メイドとして働くと言いましたっけ」

「そうですか、残念です」

「タナカと申します! メイドとして誠心誠意働きますので、皆様どうぞよしなに!」


 直角のお辞儀を披露してくれた。タナカさんの扱い方が分かってきた気がするよ。


「で、こちらの鎧が……そういえば名前聞いてなかったですね」

「あー、じゃあガードで。俺はこの屋敷の警備を担当しようと思ってる。よろしくな!」


 おぉ、頼もしいね。手が空いた時にでも戦闘訓練をすれば守りは盤石になりそうだね。

 皆もどうやら、好意的に受け入れてくれたようだ。

 丁度いい。このままミーティングに入ろうか。



  △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



「さて、早速ですが。秘境の憎悪の原因が分かりました」


 一気に緊張感が高まるのを肌に感じ、新しく淹れてもらった紅茶で口を潤す。


「結果から言えば、原因はここ、王都にあります」

「なんだと? それは解決できる原因なのか?」


 ハルトギルマスさんの言葉ももっともだ。解決できないような物だったら手の打ちようがない。


「大丈夫です。ただ、解決はできても問題は残りますね。そこは後程説明します。それで肝心の原因ですが、用水路の汚染のようです」


 中央にある噴水が霊泉と呼ばれるものであること、その霊泉の水が地下水脈を通って秘境に至っていること。

 汚染された水が秘境にまで至り、秘境の主が激怒していること。


「あの『悪食の森』は、吸い上げた汚水の穢れを廃棄して生まれた森です。さらに言えば、秘境に生きる全ての生き物の憎悪をも乗せていたようです。その憎悪の剥く先が、北にあるここ、王都です」


 沈黙が場を支配している。脅威だった『悪食の森』の原因がこちら側にあったのだと言われれば当然だろう。


「一つ確認したいことがあるのですが、皆さんは妖精について知っていることはありますか?」

「妖精だと? お伽話くらいでしか聞いたことないが……」

「お伽話だとぉ、祝福を授ける者達って話だったわよねぇ」


 この場合、妖精のお伽話というのは所謂伝承が形を変えて伝わっているものだ。

 だからこそ、まさかという表情を浮かべてしまうのだろう。


「秘境の中心には、綺麗な泉があります。ここ王都の霊泉が始まりとすれば、秘境の泉は(つい)の霊泉という事になりますね。そしてその終の霊泉には妖精が棲んでいます」


 そこまで聞き、ギルマスさんが特に青ざめている。

 終の霊泉の現状を慮っているのだろう、その状況を生んでしまった土地で、できたかもしれない解決を重要視していなかったのを悔やんでいるのかもしれない。


「その泉の穢れを吸い上げ、『悪食の森』となった場所に投棄した存在こそが秘境の主である、泉の守護者たる巨大な樹木です。かの存在と偶然意思を通わせることが出来たために、知ることが出来ました」

「エルナーが倒れた時だよね? そっか。エルナーの事だからきっとその樹木さんと何か約束したんだよね?」


 よく見てるなぁ、さすが付き合い長いだけはあるね。


「正解。さすが頼りになる幼馴染だね。これから二年で、この王都の用水路全てを浄化するよ」

「秘境を助けるんだね!」

「うん、そして二年後改めて秘境に向かうよ。解決したら来いって言われたからね」

「楽しみだね! 頑張ろうッ!」


 未だ沈痛な表情をしているギルマスさんを見やり、最も重要な事を頼むよ。これを成さないといつかまた人はやらかすだろうから。


「ギルマスさん、ここで先に言った問題の事です。国王陛下に陳情できる人に心当たりがあれば伝えてほしいのですが、今後用水路を穢す行動の一切を禁じる法を、作ってもらえないか相談してくれませんか?」

「再発防止、か。わかった、そのくらいなら任せてくれ。それ以外には何かやれることはあるか?」


 他に、か。秘境とは関係ないけれどついでに頼んでしまおう。

 金庫から書類を取り出してハルトギルマスさんに手渡す。


「この書類、過去に地下の子達に関係した人物の名簿のようです。他にも売買記録や誘拐の実行犯の名簿ですね。用心深い商人で助かりました。これで、足りますよね?」


 湧き上がる怒りをニヤリと笑うことで報復の意を示したよ。正しく受け取ったギルマスさんもニヤリと嗤う。


「十分すぎる。あぁ、任せてくれよ。幸いなことに偉い御仁と知り合いでなあ?」

「よくわかりませんが私達関連ですね? クフフ」


 クフフ、と笑い合う。なぜかタナカさんも交じっていたが気にしてはいけない。

 ガードさんに頭を掴まれ、引きずられながらタナカさんが退場していった。緊張感を一瞬で霧散させるとか何者だ。


「ふぅ……。とまぁ、原因と解決方法はそんな感じです。ここまでで何かありますか?」

「エルナー、いいかしら?」

「ん? どうしたの母さん?」

「私とレックスは村に戻らないといけないけれど、やれることはあるかしら?」


 ふむ、村で出来ることか。防衛はもちろんだけどゴブリンやウルフなら、ガイルさん達が一蹴しそうだね。となれば……あ、そうだ。


「えっと、王都で南の村の再建のための資金を出すから、なるべく早く生活ができるよう彼らを護ってあげてほしいかな」

「わかったわ。ふふ、いいお金の使い方ね。安心したわ」

「そうだな。さすが俺たちの息子だぜ」


 それはもう。母さんに何されるのか分からない恐怖を好き好んで味わいたくないもん。使い方を間違えるわけにはいかないプレッシャーは、大きいんだよ父さん……。


「そういえば、どうして父さんと母さんはさっきギルマスさんを連れて行ったの?」


 ハルトギルマスさんの肩がビクッと跳ね上がった。何があったんだ。

 父さんと母さんはにっこり笑っているだけだ。ギルマスさんに聞くしかないのだろうか?


「……二つ名」

「『鉄鬼』と『魔女』だねっ!」

「やめろ『黒姫』ェェェェッ!」


 二つ名がそんなに嫌なのかな、父さんと母さんの笑顔が黒くなった気がする。

 カッシュさんをチラ見する。なぜか僕を目が笑ってない笑顔で見ていた。何故バレた。

お読みいただきありがとうございます!

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