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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
幾星霜に誓う泉の守護者
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南の秘境・2

 再度秘境にアタックすることになった。

 先ほどの場所は少しトラウマ気味になってしまったために位置をずらして入る。


 という事で現在一キロメートルほど西の場所で挑んでいる訳だけど……やっぱり秘境なだけあって一筋縄で行く訳が無かった。


「蜂の次はッ! 蜘蛛かよッ!!」

「幸い一匹です! 足止めできればなんとか倒せませんかねぇッ!?」

「馬鹿言うなッ! あんなに木々を使って飛び回りながら追いかけてくるような化け蜘蛛と戦えるかッ!?」


 ですよねぇ! 足止めとか言ってみたけど方法が思いつかないよ!!


 胴体ですら一メートル程もあり、いわゆるアシダカグモを巨大にしたようなソイツは、木々の幹を足場として高速で飛び回っている。

 恐ろしい事にこの蜘蛛は僕達をどこかに誘導している節さえある。逃げ回りながら可能性を模索するには余裕が無さ過ぎた。


 僅かに開けた場所に出ると、その周囲には日の光によって僅かに輝く規則正しい模様が木々の間に張り巡らされていた。


 巣である。まごうことなき住処(ネスト)だった。あちこちに様々な生き物が絡めとられており、あの恐ろしい蜂の姿までもがあった。


「誘われたぁッ!? エルナー、どうするのー!?」

「そのまま、まっすぐ!」


 こんな短期間に緊急退避用転移が二度も……この森どうなってるの?


「はぁ……いやとんでもないな秘境ってのは。蜘蛛一匹でここまで恐ろしい目に遭うとは思わなかった……」

「普通に動くだけでもぉ、狩ろうと思えば狩れたって感じよねぇ……。それでも住処(ネスト)に誘い込んだのはぁ私たち全員を捕らえる為って事よねぇ……」


 森に入ってすぐにこんな状況なのだ。洞人や巨人の国は如何ほどの犠牲が出たのだろうか……。

 途轍もない、これが秘境か。厳しいけれど、それでこそだ。

 あぁ、楽しい。気分が高揚してくるよ。僕は今全くと言っていいほどの未知に挑んでいる。

 満たされていく、けれどまだまだ足りやしない。渇きにも似たこの欲は踏破すればいくらか潤うのだろうか。


 その時のことを想うと、どうしてもニヤついてしまうんだ。


「あはは……。エルナー楽しそうだね?」

「ごめん、でもどうしても抑えられなくて。途轍もなく険しい環境。厳しい生存競争。その最奥には何があるのか、何がいるのか。何も分からない。あぁ、だから知りたい!」


 僕自身、何を話しているのか曖昧な状況で。アリーチェの問いに熱が溢れた僕は想いの丈を漏らしていたよ。

 僕の根源はいつだって冒険ありきだ。今まさにその絶頂に居るといってもいいのにこの熱を抑えることは無理に等しいッ!


「レナから聞いてたけど、本当に冒険が好きなんだねー」

「どの冒険者よりも冒険者だな!」


 熱は伝染する、それはどの漫画で知ったのだったか。皆の表情から困惑が消えていたよ。

 さぁ、次は何が出てくるのだろうか、蛇か、ムカデか。また蜂や蜘蛛だろうか。

 なんだっていい、それぞれに遭って逃げて、それでいて観察をすればいい。


 まずは知ることだ。動きを、生態を、その環境を。

 知ることで出来る対応は多くあろう。ならば僕達が取れる方法は一つに限る。


「少しずつ、地図を埋めていきましょう。それで多くを見ていきましょう。幸い僕の地図魔法はこの森に対して有効です。さっき確認した蜂や蜘蛛をマーカーして分布図を示せばほら……絶望しかありませんねっ!」


 笑顔でそう言った。仕方ないんだよ、この地図の有様を見たら誰だって絶望すると思う。


「「「「真っ赤じゃないかッ!!!」」」」


 未だ入ってない森の部分ですらマーカーが示している。間を縫って移動するとかもはや不可能なレベルであった。

 そんなのを見れば『雷牙』が叫んだのも頷けるというものだよね。


 何度でも言おう。秘境という環境はとんでもないほどに困難だ。生き物は純粋に強く、森という環境は僕達の行動を阻害する。そして何よりも秘境には意思が見受けられるという事。


 アンデッドを倒し黒い森を引き剝がした僕らを一応は認めているのだろう、転移の兆候は見られない。

 けれど易々と進ませるなどありえないのだろう。明らかに村から中央寄りに敵対マーカーが集中しているのが見てわかる。


「この分布、やっぱりというか端の方は比較的に薄いですね。次はこの辺りを攻めていきますか?」

「だな、ヤバそうならまた逃がしてくれよ?」

「もちろんです! それじゃあ行きますかー」


 三度目の挑戦は東端からだ。他の場所よりはだいぶ薄いからそれなりには進めるだろうと皆が思っていたに違いない。

 けれどそんな思惑は入って数分もしないうちに打ち砕かれた。


 目が合った。チロチロと細長い舌を出し入れし、ソレの瞳孔は縦に割れている。顔の部分だけでもヒト三人は飲み込めるであろう大きさを持つ蛇であった。


 チロチロ、チロチロと舌の動きに視線が行ってしまう。だから気づいたときには既に大蛇は口を開けていて――。


「――ッ!?」


 シュバアアアアァァァァッッ!!


 咄嗟に放った暴風が大蛇の顔を押し退けるッ! 慌てて西へと走って逃げるも視界に映る地図には自動的についたマーカーが追ってきているッ!


 けれどそれを知らない皆は走る速度を緩めてしまった!


「まだ! 走れッ!」


 焦りから命令してしまう。何故撒いたと思ったのだろうか。

 そうして気づくのは、僕らの出す音以外には何も聞こえないのだ。あれほどの巨体を音もなく移動する?


 耳は目と同じくらいに重要だ。音が聞こえないというだけで安心してしまうくらいに。


 接敵、してしまうッ!


『シャアアアアアァァァァァァッッ!!』

「『スタンボルト』!」


 バリィィィィィッッ!!!


 雷撃にのた打ち回る大蛇……へ、び?

 巨大な顔、平べったい体躯、そして短い尾……。ツチノコ?


「なんでだよッ!?」


 こんなのは想定外だよ! 普通蛇だと思うよね? 思わずツッコミ入れるのも仕方ないよねぇッ!?

 衝撃的過ぎて追撃も逃げるのも忘れてしまった。しかし本当になんでだ?

 いや、太古の森という事なら居てもおかしくない……のかなぁ?


 いけない、考察は後だ。今はこの難所をどう乗り切るかが大事だッ!


「…………なんでだよッ!?」


 逃げた! 逃げたよあのツチノコ! いや良いんだけどさぁ!

 おかしい。これまでよりずっと疲れた。ツッコミ疲れという奴だろうか?

 頭の処理が追い付かないんだよ。この森で遭遇した蜂と蜘蛛はどっちも凶悪が過ぎていたから。


 思わず両手両膝を地面につけて項垂れてしまった僕の背にくーちゃんが止まる。くーちゃん……。


「あいつ追いかけてきてたのか……すまんエルナー。あろうことか油断した……ッ!」

「エルナー君、とりあえず村に戻ろう? ボクも少し頭を整理したい……」

「…………そうしましょう」


 くーちゃんがどいてくれたので立ち上がって地図魔法で転移する。あぁ、疲れた……。


 今日のアタックはこれまでという事で日が暮れるまで状況の整理に努めた。

 さすがに皆も蛇だと思ってたらしくあの姿に面食らっていたそうだ。

 けれどそれ以上に僕の乱れ方に驚いたそうだ。


「それにしても、まさか逃げるとは思いませんでした。全部が全部凶悪な生き物なんだとばかり思ってましたが」

「そう珍しい事でもないよ。自然界にだって生き残るために変わった進化をする動物だっているんだから」


 クゥナリアさんにそう言われて納得した。確かにあの無音の能力は生き残るのに適した形だと思う。それにあれ程に攻撃に適した能力もない。捕食に逃避両方に適した進化を果たしたツチノコはあの森で生きる資格を得たのか。


 厳しい世界ではそう言った能力も必要なわけだね。


「なるほど、ではあの体も進化の結果なんですかね」

「あれはむしろ退化よねぇ。締め殺す体を捨てるのは攻撃手段を放棄する事だしぃ」


 あ、やっぱりそうですよね……本当になんなんだ。

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