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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
幾星霜に誓う泉の守護者
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エルナーのやらかし

 ある程度の運用方法を考えてから寝ることにして、目が覚めた今日。

 凄まじく体中が痛いです……。


「エルナー! おはよう! ……大丈夫?」

「お、おはようアリーチェ……だめかもしれない……」

「そんなっ!? 死んじゃ駄目だよエルナーッ!」


 何を勘違いしたのか、それとも僕の冗談が冗談に見えなかったのか。アリーチェが勢いよく僕を揺さぶった!


「ごめん、ごめんなさい。死なないから揺さぶらないで痛い痛いッ!?」


 アリーチェをなんとか宥めて部屋を出ると朝食の匂いが僕の胃を苛んだ。

 そういえば昨日は朝に食べたきりだったな、と思い至ると余計にお腹空いた。


 動きづらい。体が思うように動かせない。全身から痛みが湧いて出るような感じだろうか。

 歩く補助をしてくれるアリーチェに感謝しかないね。いなかったら壁に寄りかかりながら歩くか這って行くしかなかったと思う。


 村ではいつも食べていた朝食でお腹を満たして、ゆっくりしていたら家に誰かが訪ねてきた。

 村唯一の医者であるバウ爺さんだった。


 どうやら昨日僕の状態を知って色々と準備してくれたらしい。

 けど、バウ爺さんは僕の診察をするでもなく何やら磨り潰したり刻んだりの作業をしている。

 前世で嗅ぎなれた薬の匂いが漂ってくる。調薬しているのだろうか。


 小さな壺に入れた湯の温度を簡単に確認して、作業していた物をすべてお湯に入れる。順番などなく、一気にだ。

 壺の中を回すように振り、飲みやすそうな形の容器に湯を濾して注いで僕のもとに置いた。


「薬湯だ。飲みなさい」

「あ、ありがとうございます……。すごい、匂いですね」

「滋養強壮と簡易じゃが鎮痛の効果も見込めるよう調合したからの。凄いのは匂いだけじゃあるまいて」


 つまり味も凄いんですね? 覚悟がいる。

 とりあえず少量口に含むと覚悟したような苦みはわずかにしか感じられなかった。湯の温度も丁度いい。

 苦みの代わりとでもいうのか、適量なら爽やかなハーブの香りであっただろう強烈な香りが、鼻を抜けていった。


 飲みづらさが強い。これなら強い苦みのほうがよかったかもしれない……。

 意を決して一気に煽り、飲み干した。すると体の内側から、カッと熱を持った感覚になった。


「しばらく鼻は使い物にならんが、効果は確かじゃぞ。あとは安静にしておけば良い」

「はい、ありがとうございます。しかしこれ、だいぶ薄く作ったらきっと美味しいでしょうね」

「……ふむ? 薄めて、か。どれ、ちょっと作ってみようかの」


 そう言ってその場で作業を始めたバウ爺さん。そんな事してていいのかとも思うけど差し当たって患者はいないのだろう。

 だから僕は所感を述べることにした。


「この強烈な香りを和らげれば飲みやすくなると思いますし、苦みもアクセントになっていいと思います。ただ味に雑味があったのでそこも改善するといいかも」

「香りを弱く……葉のまま蒸すかの。一先ずこの工程で試してみるかの」


 そう言って準備を始めたので僕が魔法で湯を作った。なんだかんだ言っても楽しいから仕方ない。

 調薬の時に見た手際の良さですぐに作り終えるとバウ爺さんは直ぐに試飲した。

 満足気に頷いているからたぶん美味しくできたのだろう。


「これはいいの。坊も飲むか?」

「その……鼻がおかしいのでたぶん飲んでも分かりません……」


 そうじゃったのー、そういって呵々と笑うバウ爺さんに苦笑いで返したよ。


 この茶を村に広めるぞと息巻いて帰るバウ爺さんを見送ってこれから何をするかを考える。

 まず僕は今動けない。やることがいきなり制限されてしまった。

 本を読むにも、そもそも本が無い。僕の家では母さんが記した魔法の研究書が唯一の本と言ってもいい。


 そこで思いついた。地図魔法の行動範囲を今のうちに広げておくのはどうだろうか。

 もちろん歩けないので地図魔法で記録されてる端に転移して広げていく作戦だ。


 一先ずは南から行こう。昨日の戦場に跳ぶと周囲には何もない。ただただ草原が広がっていた。

 ざっと見まわすだけで地図が埋まっていく。その端にまた転移をして徐々に埋めていくと遠目に森らしきものが見えた。


 その森の端が地図に反映されるくらいの距離で一旦やめて、今度は西に地図を埋めていく。

 森の端が見えない。行けるところまで繰り返し跳んでいると、かなり高い山が連なって南北に広がっていた。


 ここを終点として、今度は東を埋めていく。

 驚いたことに、東の終点も山脈となっていた。西の山脈との違いは、木々が生い茂っているように見えるところかな。

 人族の国において南の終点はこの秘境の森のようだ。


 この辺りで、僕の悪癖とも言える部分が顔をのぞかせた。気になるのだ、この山脈がどこまで続いているのか。

 普段なら誰かしら止めてくれる人が近くに居た。それに甘えて自由にやってきていたのだろうね。

 僕は今、好奇心に任せて北へと転移で跳び続けていた。


 結果から言うとどこまで続いているのか分からなかった。

 やむを得ない事情が出来たために断念したのだ……。


 そう、お尻が超痛い。


 僕はずっと地面に座ったまま転移を繰り返していた。結果として、その場に石があったりちょっとした凹凸があったりとかで徐々にダメージが蓄積していったのだ……ッ!


 悲しいくらいに情けない理由だった。僕は人知れず涙をぬぐったよ……。


 部屋に転移して着替えて、部屋を出るとなにやら外が騒がしかった。

 事情を聴くため外に出てすぐの事だった。


「あーーーっ! エルナーいたーーーーッ!」


 アリーチェの叫びが僕の耳に響いた。どうやら僕を探していたらしい……。どこかで見たような光景だった。

 そう、そうだよ。いきなり転移して居なくなったら何事かと思うのが普通だよね。また、やらかした。


 それはもう、怒られたよ。父さんと『雷牙』には散々に怒られて注意され、アリーチェや母さん、『風の道』には泣かれてしまった。


「バウ爺さんの薬湯飲んで、安静にすることって言われたからなるべく動かないで何かできないか考えて……転移で地図を埋めようとしたんだ」

「安静にしなきゃだめだよっ!」

「う、うん。ごめんアリーチェ。えっと、それでまず秘境近くまで範囲を広げてから東西の端まで繰り返して――」

『安静にしてなきゃだめですのー!』

「はい……ごめんなさい……。……東西の端には大きな山脈があって、南北に連なってた。北にどこまで続いてるのか気になって、つい」


「エルナーは安静にさせたら駄目だな。それか誰か付けないといけない。絶対こいつやらかす」


 ラーシャーさんが辛辣! 他の皆まで頷いてるし……。まぁ確かに僕が悪いって思うから仕方ないんだけど……。


「うぅ……。結局、端が分からないまま戻ってきたんだ。その、お尻が痛くなって……」

「……診せなさい」

「えっ!? いや大丈夫だよ!?」


 だから待って、お願いまって母さんにじり寄ってこないでッ!?

お読みいただきありがとうございます!

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