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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
冒険者生活の始まり
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地図魔法

 原因は分からない。けれど異常な事態なのは把握した。

 敵対の赤いマーカーはゆっくりと僕たちの生まれ育った村へと近づいている。


 数は、わからない。密集してる上に広く展開している。


 急いで階下に駆け下りたよ。マナーがなっていないけど、緊急事態なんだ、許してほしい。


「アリーチェ! 急いで支度して! 村が危ない!!」

「えっ!? ……ッ! わかったッ!」


 理由を聞かないで支度をし始める、と言っても外した剣帯を付けて防具を締め直すだけだけど。


「おいエルナー! いきなりどうした、何があった!?」

「詳しくはあと! 僕たちの村の南から敵たくさん!」


 気が急いているせいでかなり適当な答えになってしまっている。

 村を飲み込まんとするほどの赤いマーカーが迫っているんだ。一秒でも早く助けに向かいたい!


「後で詳しく聞くからなっ! いくぞっ!」

「えっ、来てくれるんですかっ!?」

「当たり前だろうがッッッ!」


「エルナー! 準備できたよ!」


 『雷牙』も来てくれるのはありがたい。僕が準備を整えていると『風の道』も声をかけてくれたよ。

 周りの人たちも、僕の様子が尋常ではないのが気になるのか視線を集めてしまっている。

 けれど、僕は自重なんてするつもりはないよ。


 ――地図魔法展開。ターゲット、僕、アリーチェ、くーちゃん、『雷牙』、『風の道』。


   ポイント指定、南の村、僕の生まれ故郷。


   座標間、転移ッ!


 

 正直に言うと、成功するという確信があったわけじゃない。

 ただ、この魔法は僕の固有魔法としてレスター兄様からプレゼントされたもの。

 ならば、僕の今のすぐにでも駆け付けたいという想いに応えてくれるんじゃないか、そう感覚的に感じてはいたんだ。


「ッ!? な、エルナーか!?」

「父さん! 状況は!?」


 転移してすぐ近くに父さんが完全武装してこちらを驚愕の面持ちで見ていた。

 当然か、いきなり現れたらそれはビックリするよね。

 けれど、今はそんなことに気を取られている場合じゃないんだよ。


「あ、あぁ。南の秘境が急に拡大した。その影響で大量のアンデットがここより南の村を襲ったんだ。幸い南に詰めてた兵が妨害工作して、村人含めて全員が無事だが……」


 村が一つ消えた、と辛そうに言った。


「父さん、僕には固有魔法があるんだ。『地図魔法』っていうんだけど、それでこの村の異常を知ったんだ。それで、アリーチェと『雷牙』、『風の道』を連れて転移してきたんだ」

「色々、聞きたいことはあるが。エルナー、助かる!」


 余計な時間は使えない。そんな感じだ。


 ようやく自失状態から復帰したベテランチームも参加し始めたよ。


「つくづく、とんでもない奴だ。その地図魔法とやらは俺らにも見れるか?」

「うん、共有するよ」


 地図魔法を視覚化する。地図が描かれている場所は僕が実際に見た場所、真っ白な部分はまだな事。

 赤いマーカーが敵対を意味することを伝え視覚化すると、一瞬の驚きがあったものの、すぐに作戦を立て始めたよ。

 さすがベテラン。優先順位がはっきりしていたよ。


「ひどいな、これ全てがアンデッドか」

「南から避難してきた兵によると、予兆は全くなかったようだ。夜に気づいたら既に村が包囲されていたようだな」

「アンデッドが戦術を組んだのか? いや、違うな……秘境の『主』か」


 知らない単語が出てくるね。好奇心は今は封じ込めておくよ。


 父さんからアンデット戦のアドバイスを貰う。僕は火を主体に、とにかく頭を潰せと言われたよ。

 アリーチェも第一に首を落とす事、次点で足を斬り落とす事を意識するよう伝えられていた。


 母さんも合流し、それぞれがどのポイントで戦うかの最終確認をする。


 僕は左翼、母さんが中央、クゥナリア先生が右翼を担当。

 それぞれの間は当然隙間がある。その為左翼と中央の間にアリーチェ、風の道。中央と右翼の間に父さんと『雷牙』。

 僕たち魔法使いは、可能であれば範囲殲滅を望まれたよ。



 それぞれが配置についてしばらく。アンデットの集団がいよいよ見えてきた。

 生者の気配を感じ取ったのか、アンデッドウルフの集団が走ってくる!


 中央、右翼の方面から爆炎が上がった。辺りが暗いだけにいやに目立つ。

 僕も迎撃をしないとね……!


 土と火の場を広範囲に作る。派手さはいらない。持続性を優先させる。

 地面を泥に。表面を赤熱させ……地獄の入り口を創造する!


「『マッドラーヴァ』」


 駆け込んできたアンデッドウルフが次々と落ちていく。腐った肉体は瞬時に燃え果てて地獄の沼の底へと誘われていくよ。

 立ち止まる? 構わないよ。この溶岩はね、見えるだけが全てじゃあないんだよ。


 頃合いと見る。さぁ、『マッドラーヴァ』の真骨頂のお披露目だよ!


「『イラプション』ッッッ!!」


 ドガアアアアアァァァァァッッッ!!!


 立ち止まり、迂回するように立ち回っていたアンデッドたち。それらをさらに囲うように地面が捲り上げられ赤熱した泥が襲い掛かる!

 中には、爆発に巻き込まれない個体もいたよ。けれど次の瞬間には舞い上がって冷え固まった土砂の群れが辺りに降り注ぎ押し潰す!!


 上手くいって何よりだ。熱を散らして土を均す。

 僕の眼前からアンデッドウルフの姿は消え去ったよ――。



     ― アリーチェside ―


「魔王様、凄い……」


 『風の道』の女の人が、エルナーの事をそう言ってるのが聞こえた。

 そうだよ、エルナーは凄いんだ。小さい頃から色々できた。私に冒険の事を教えてくれていたから、今こうして大切な村を護る為に戦えている。


 あぁ、にやにやしちゃう。もっとエルナーの凄さを知らしめたい。

 そのためにも、私も教えてもらった魔技を使って活躍しないといけないね。


 『風錬』。私が最も得意としている魔技。風の強さと向きを調整して移動や行動の補助をすることで、エルナーの言う黒い風になれる。


 カッシュ先生に使った『雷迅』は連続して使えないからここでは無理。

 持久戦になるって聞いた。だったら使う魔技は一つしかないよね。


「――『炎舞』」


 剣に炎を宿すだけ。たったそれだけ。けれど、私はこの魔技が大好きだ。

 エルナーに教えてもらった火の想像。くーちゃんの想いがのった首飾り。『炎舞』の炎の温度はこれ頼り。そして私の剣。

 三人の想いを寄せた魔技だから、私は大好きなんだ。


 さぁ、舞うよ。私の『好き』を分けてあげる。私の炎は、決して温くはないからね?


 身体強化を使う。そうして駆ける!

 円を描くようにくるくると、それでいて流れるように剣を薙いでいく。

 アンデッドを斬るたびに、ジュウ、ジュウと音が鳴る。


 同じ動きじゃ舞とは言わないよね、だから縦に斜めに炎を躍らせる。

 エルナーは見てるかな? くーちゃんは褒めてくれるかな?


 ――あぁ。炎が熱量を上げていく。


 まるで心を他所に体が勝手に動いているよう。


「綺、麗……」


 あはは、嬉しい! 『風の道』のお姉さんに褒められた!


 私はエルナーみたいに複雑に考えられないけれど、今やるべきことはちゃんとわかってる。

 エルナーを避けてくるアンデッドウルフが私をも避けていく。

 私の事も怖いのかな? でもね――。


 そっちはもっと、怖い女性(ヒト)が居るんだよ?


 そこから先へは絶対いけない。だってほら、エルナーの魔法に感動したレナさんが水平に吹き抜ける爆炎を放ってる。


 あはは、私の周りは凄い人がいっぱいいるね!


 頑張らないと、追いつけない。追いつけないと並べない!

 もっと、もっと、もっと、もっと! 私に経験を与えて頂戴?

 疲れなんて未だ遠い。疲れ果ててなお動けなければきっと並べない!


 私はね、エルナーに認められたいの。隣にいてほしいのは私なんだって。だから……。


「さぁ、おいで? 私の経験値達――」


 『炎舞』の残り火があちこちで立ち昇って私を照らす。

お読みいただきありがとうございます!

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