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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
冒険者生活の始まり
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冒険者たち

三人称です!

 冒険者ギルドのルールの一つとして、Cランク冒険者のうち数名、もしくはパーティーはギルドに待機しておくというものがある。

 これは緊急事態が起こった場合に即座に対処に動けるようにと定められたもので、なぜ数が多いCランク未満ではダメなのかという意見も一定数ある。

 が、Dランク以下ではダメなのだ。彼等にはまだ経験が足りないのだ。


 Cランクはベテランである。その経験は豊富にあるために緊急時に迷いなく動けるような人材はベテラン以外にはありえない。


 ギルドに詰める人材についてもCランク冒険者には別途にシフトが割り当てられている。

 そして割り当てられた冒険者にとってもこのルールは美味しいのだ。


 待機している冒険者には日当で銀貨五枚が充てられる。また、ギルド内での飲食についても自由だ。


 緊急事態など早々起こらない。だが起こらないから無駄だということでもない。

 いざという時の備えだからこそ存在したルールなのだ。



 その日も、とある冒険者パーティーが待機していた。


 彼らパーティー『風の道』は実に偏った編成をしていた。

 剣士二名・弓術士三名から成る彼らはしかして、全く隙のないと言われている。


 さもありなん。彼らがベテラン足り得る所以は、偏った編成が故に、そのフォローを呼吸するかのように行えるのだから。


 そんな『風の道』が待機を任じられた日に、とある有名なBランクパーティーに連れられた二人の新人が冒険者ギルドへと足を踏み入れた。


「あれって『雷牙』だよな? またラーナスタに来たんだな。って子ども?」

「おー、あの黒髪の子将来絶対美人になるな」

「金髪の子も凄く整った顔をしてるわね……。くふふ」


 馬鹿なことを言う仲間を、他が白い目で見つつ様子を窺っていると彼等、エルナー達が『風の道』に気づく。

 『風の道』が笑顔で手を振るとエルナーとアリーチェも輝かんばかりの笑顔で手を振り返し、それを受けた先ほど馬鹿を言った二人が見悶えた。


「「うっ……尊い……っ!」」


 不思議そうな顔をしつつエルナー達が冒険者登録を済ませ、死にそうな顔をしてるギルマスと話をしている様子を、ぼう、と眺めていると条件反射のレベルで席を立つ。


 『金髪の美少年』のエルナーはかの有名な『鉄鬼』と『魔女』の息子で、隣の『黒髪の美少女』は『鉄鬼』の弟子だという。


「まじか。確かに南の村に行ってからの期間を考えると納得はできるんだが……」

「またとんでもない新人が入ってきたものねぇ……」


「『魔女』を超えてるとか……なに? 『魔王』とでも呼ぶ?」

「いや、二つ名は早いだろ。まだFランクだぞ……? まぁ、事実ならその二つ名は賛成だが」


 エルナーの知らないところで二つ名が決まっていた。



 溝さらいをすると聞いた『風の道』は憐憫の目を向けた。

 例の用水路は年々酷くなっている。昔は今ほど悪臭を放ってはいなかったし、辛うじて底も見えていた。

 今ではもう汚水が流れる不衛生なモノとなり果てていた。


「あたし、ちょっと陰から様子見ておくわ……」

「まぁ、ここは大丈夫だろう。俺も気になるし頼んだわ」


 『雷牙』にもこっそりと伝えておき、陰から護衛をする弓術士の女性の目からハイライトが消えた。

 エルナー達が掬ったヘドロから立ち上る悪臭もあるが、その瞬間に使ったエルナーの魔法の凄さ、そしてその後に現れた住民の罵声。

 驚愕と怒りが、一瞬で感情を揺さぶったのだ。


 余談であるが、この弓術士の女性は先ほどのエルナー推しの女性ではない。

 ないのだが、次の瞬間にエルナーに心奪われることになる。


 ――あ?


 瞬間、火柱が立ち昇った。不思議と熱を感じなかったが、火柱の内側にあった物が煤すら残さず燃え尽きていた。


 エルナーの熱を失ったかのような冷たい視線とその強大な魔法を目の当たりにした女性は――。


「魔王、様」


 エルナー推しが増えた瞬間だった。




 エルナー達が戻るより前に、弓術士の女性はギルドに戻った。

 そして顛末を語るその様子がおかしい事に気づいた『風の道』のリーダーは悟る。こいつ落ちたな、と。


 そうして聞いているとエルナー達も戻り、『雷牙』が同伴していた意味を知ることとなる。


「使徒……様? まじか、もう情報が多すぎて訳が分からなくなってきたぞ……」

「ひとつだけ言えることがあるわ。私たちが、陰から彼らを護るのよ……」

「眼が怖ぇよ……」


 急に個性的になった仲間たちに戸惑うリーダーに、ギルド職員が近づいて今日の依頼は完遂したと知らせる。

 受付で報酬を得た彼は仲間たちに告げた。


「おし、それじゃ今日は飲み明かすか! 付き合え!」

「「「「おぉー!」」」」



 『風の道』は美味い酒がある『黄金の畔』へと足を向けた。酒だけではなく料理も素晴らしい逸品であるため割と常連である。

 酒と料理を頼み、さぁ乾杯! といったところで騒ぎが起きた。


「あぁ!? クソガキども!」


 瞬間、若干四名の目からハイライトが消えた。


(これは……やばいか?)


 考えが過った瞬間には既に行動に移っていた。ベテランが故の落ち着いた流れと言える。

 何とか宥めようと思っていたが、徐々に相手の言い分が雑になってくると、とうとう堪忍袋の緒が切れる事態となってしまった。


 怒りに任せて暴力が出ないよう制御していたのが功を差したのか、なんとか宥めることに成功した『風の道』リーダーは奥の席に相手を連れると、注文した酒を共に飲み交わす。


 愚痴を聞き、肯定してあげ、時に注意し、また肯定し……そうして無事落ち着かせることに成功した彼は流石と言えよう。


 そうして落ち着かせた相手がエルナー達に謝りに行くというので、元の席に戻り様子を見守ることになったリーダーは仲間たちに労われていた。


「さすがリーダー! 天然たらし!」

「うるせぇよ……はぁ、疲れた……」


 こんな時こそ美味い酒と美味い食事である。これらの前にすれば思わず笑顔になるというものだ。

 堪能しつつ仲間たちが何をしていたかを聞いて脱力することになるが……。


 そう、ここの食事は美味い。それらを食べ、さらに美味しい果実水を飲めばその笑顔は輝くというものだ。さぞ眼福であっただろうと恨みがましい目を向ければ当然、逸らされる。


 溜息を酒で飲み込み、エルナー達の様子を窺う。


――おじさん、一つ聞きたいんだけど。近所で、子ども達が外で笑って遊んでる姿を、見たいとは思わない?


 思わず目を見開いたリーダーは思う。見たい。しかしあの用水路付近でそんな未来はあるのだろうか?


 『雷牙』を見やれば、彼らも『風の道』を見ていた。そうして一つ頷いたのだ。


 確信する。この子らは成し遂げるだろうことを。自分らがかつて投げ出したことを。


 弓術士の女性が言ったことを思い出す。凄まじいほどの魔法の技術だと。それならば本当に可能なのだろう。

 あの用水路を浄化できたとあれば、それがどれだけの偉業なのか。

 エルナーは言ったのだ。あれは毒なのだと。病気の温床なのだと。


 そんな環境で過ごした男の心象を悟り、許したエルナー達の優しさを。


 リーダーは二人に対して強い好意を抱いたのだ。


「なぁ皆、提案がある。俺たちも暇を見て、彼らの手伝いをしないか?」

「はっ、リーダー何言ってんだ」


 だめか? と思ったのだろう。苦笑いを浮かべたリーダーは次の瞬間には腹を抱えて笑うことになる。


「俺は勝手にやろうと思ってたぜ!」

「そうそう、アリーチェちゃんだって頑張るって言ってるんだ。手を貸さないわけがないな!」

「エルナー君の笑顔の為ならなんだってするつもりよ」

「陰ながら魔王様の為に尽くすわ!」


「お前らどうしてそうなった! あははははは!」



 アリーチェの剣技の高さと身体強化の凄まじさ、エルナー直伝の魔技習得でリーダーが二人に心酔するのはまた別の話である。

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