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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
冒険者生活の始まり
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オリジナル魔技の脅威

 真っ暗な中どうやって見張りをするのかと思えば意外や意外。

 焚火は消えないようにしつつ時折周囲の気配を探るらしい。


「気配って、どうやって探るんです?」

「ん-、言葉にするの難しいな。肌に感じる違和感、というのか……?」


 困った。まるで参考にならない……。自分で出来そうなことを考えてみよう。

 まず視覚がほとんど意味を成さない。夜行性の動物はどうしてるんだったか……?

 蛇は熱の感知が出来る器官が、コウモリは超音波の反響で、猫は目の機能……。


 結構いろいろあるんだよね。タブレットで調べておいてよかった。


 とりあえず猫を真似してみよう。光の反射を利用してるんだったっけか……。

 光、光か。光源は焚火がある。一部を収束して反射……でいいのかな?

 魔力で網膜を保護して、水魔法を水晶体に被せて反射の調整。

 オリジナル魔技『夜目』! いざ実践!


「ぶっ!? ふっ、くくくくっ」

「くひゅっ、ひっふふふふ」

「え、どうしたんです?」


 おぉ、光を当てたかのようにはっきり見えるぞ! これはいい魔技なのではなかろうか!

 それにしても、どうして二人はこんな悶えてるんだろう?


「目、目が、くくくくっ! あっはははははは!」

「ピカーッ! って! あはははははは!」


 どう見えてるんだろう?


「どうした!?」

「何かあったの!?」


 あ、起きちゃった?まぁこれだけ騒いだら起きちゃうよね。あぁ、アリーチェも起きちゃったか。


「「「ぶふぅ!? あっははははははは!」」」


 えぇ!? なに、なんで?

 気になる。水魔法を少し前に展開して鏡のように……って!?


「ナニコレっ!? あはははははは!」


 僕の目が滅茶苦茶光ってる!!!



「恐ろしい魔技を開発しやがって……腹がねじ切れるかと思った……」

「エルナーのバカー! もぉー! 目が覚めちゃったよぉ! ……ふふふっ」

「ごめんって、思い出し笑いやめてよー」


 しかし、目でこれかぁ。なら耳とか熱とかもなにかしらありそうだね。


「カッシュ先生とクゥナリア先生もごめんなさい。まさかあんな状態になるとは思ってなかったんです……」

「ふ、ふふ……。ボクは全然かまわないよ。異常があって起きることはあるけど、こんな面白い経験は初めてだよ」

「そうだな! エルナーは本当に面白いやつだぜ!」


 カッシュ先生それどういうこと?

 ともあれ、もう一度寝てもらうためにくーちゃんにお願いしておいた。


『えぇ、わかりましたの。安心する温もりを維持するですの』

「お願いね。くーちゃんの優しい温もりは誰にも抗えないから……」


 そんなはずはないだろうって笑ってたカッシュ先生は即座に眠りについてたよ。


(それにしても、気配を探る方法は他にないのかな。そもそも気配って何だろう?)


 違和感、違和感か。五官で感じ取れるものなのだろうか? 今感じ取れるものを確認してみよう。

 まずは、焚火の光と熱。それに伴う空気の揺らぎかな。

 テント下の寝息と身動ぎの音。くーちゃんが維持してる魔法による魔力の揺らぎ―――うん?


 周囲五十センチメートルの範囲の魔力を意識化に置く。敢えて場は作らない。

 移ろう魔力をそのままに、感じ取れる魔力の流れを読み取る……あいたっ!? 痛い痛い頭が割れる!?


「おい、エルナー!? 今度は何した!?」

「いたた……周囲の魔力から、その範囲の情報を読み取りました……読み取りすぎて頭が割れるかと思いました」

「……よくわからないが、使わない方がよさそうだな」

「そうですね……はぁ、難しいなぁ」

「エルナー君、そんな簡単に出来たらぁ、私たちの立つ瀬がないよぉ?」

「あはは、それもそうですね。焦らず、けれど早急にできるよう努力します」



 それからは何事もなく朝を迎えて軽く食事を摂り、トイレを埋めて火の始末をし、テントを片付けて出発だ。

 道中は順調に進み、僕はずっと気配の探り方を考えていたらくーちゃんがあっさりと答えたよ。


『地図魔法を使うのはどうですの?』

「……あっ」


 僕は何故、アドバンテージをかなぐり捨てていたのだろうか。


 昼を少し過ぎたころに目的の村にたどり着いた。僕たちの村より大きい。さすがに王都に近いほうが発展するのは当然だね。


『エルナー、レスターの都合がついたから今晩は早めにお願いね?』

(おぉ、分かりました! 楽しみですね!)

『レスターからも、なにか伝えたいことがあるみたいよ?』

(そうなんですか?)


 気になるけど、今は宿の確保が先である。とはいっても施設があるわけではないらしいけど。


「王都に近い分、訪れる人もそれなりに居る。けれど村にそれほど人手があるわけでもないから、村の端に掘っ立て小屋がいくつか建てられてるんだ。そこを借りて一晩明かすんだ」


 そういえば、僕の村にもいくつか誰も住んで無い小屋があったなぁ。時々村の人が掃除してたっけ。


「村長に借りるの?」

「そうだな。一泊だと銅貨二十枚が相場になる」


 僕とアリーチェは首を傾げた。そういえば硬貨価値を知らない。


「レックス達は教えてくれなかったのか?」

「村では分け合ったり、物々交換が主流だったから……。たぶん、お金のやり取りが滅多になかったから忘れてたんじゃないかな?」

「あぁ……そうかもしれないな。というか、あの村かなり儲けてるよな……」


 村長との挨拶から小屋を借りるまでは非常にあっさりと終った。


 ということで小屋でお勉強の時間である。


「銅貨が一番価値が小さい硬貨だ。これが百枚で銀貨、銀貨が百枚で金貨になる。金貨百枚で白金貨となるが、これはそうそう出てこない。大口取引で扱われるくらいだな。一般の人だとまず見ることはない」

「出されてもお釣りに困りますしね」

「そういうことだ。さすがエルナーは理解力が高いな」


 漫画が僕の教材だったからね!


 ちなみに銅貨五枚でどれほどの価値かと言えば、一日贅沢しなければじゅうぶん食べられるとのこと。一晩素泊まりで銅貨二十枚。うん、そんなもんだと思っておこう。

 だって僕、前世でもお金の事よくわからなかったもの……。これが高いのか低いのかまだよくわからない。


 早めの夕飯を終えて、体を拭って寝ることに。

 随分早いと言われたから、慣れない見張りで疲れたんだと思うと答えたら何故か笑われた。目を光らせようか? くらえ、ピカーっ!


「や、やめろエルナー! やめてくれぇ!」


 ラーシャー先生、笑った罰だよ……クククッ。



 △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



「お久しぶりです、レスター兄様、エリカお姉様」

「久しぶりですエルナー。あぁ、会いたかったですよ」

「会うのは久しぶりね。あの子とも仲良くやっているようで何よりだわ」

「くーちゃんは、居なくなられたらもはや僕の生活が破綻します……」

「依存しすぎじゃない!?」

「冗談ですよ! ……二割ほどは」

「ほとんど事実ですね」


「ところでレスター兄様、僕に話があるのだとか?」

「エリカから聞いていましたか。はい。とても大切な話があります」


 どこか、怒りを称えた様子を見せるレスター兄様に、エリカお姉様はドン引きしている。はて、何かしただろうか……? 一時、訓練に打ち込みすぎてレスター兄様やエリカお姉様の事を忘れてた時期の事だろうか?


「「えっ……」」

「あ、心読んでますね?」

「こほんっ。エルナーの前世にかかわることですね。あなたの魂の定着を担当した者に罰を与えることにしました。あの者も深く後悔していましたし、罰を受け入れましたしね」

「……そうなのですね。それで、どのような罰なのですか?」


 レスター兄様は答えない。代わりにエリカお姉様に視線を移してる? エリカお姉様が頷くとレスター兄様が口を開いた。


「この世界に受肉させました」

「小人族の男の子よ」

「……? それが罰になるのですか?」

「数年は大丈夫よ。けれど、十年後は危険かもしれない。小人族の国は今、秘境と鬩ぎ合っているの」

「えっ!?」

「今に合わせて彼を二十年前に受肉させました。なので今は二十歳の小人族ですね」


 受肉した彼は今、冒険者として秘境の猛威と戦っているらしい。なんでも、いつか僕が冒険に赴くまで国を保たせるのが罰の内容らしい。

 エリカお姉様も、もしかしたら小人族が滅びるかもしれないと危惧はしていたようだ。だから彼の受肉は渡りに船と引き受けたらしい。


「その彼には申し訳ないですけど……まだしばらくは小人族の国には行けそうにないですね」

「えぇ、行くも行かないもエルナーに任せますよ」

「私としては手遅れになる前に行ってほしいところなのだけどね」


 小人たち可愛いのよねぇ、とエリカお姉様。


 それから時間になるまで久しぶりの会話を楽しんだよ!




「おはようございます! さぁ今日も張り切っていきましょう!」

「おはよう! 張り切っていこー!」


 僕のテンションに引っ張られたアリーチェが両手を突き上げる。うんうん、今日も可愛いね!


『二人とも、今日も元気で嬉しいですの』

「「くーちゃん!!!」」


 村を出てしばらく歩くと、遠目に目的地が見えてきた。僕とアリーチェのテンションも上がっていくよ!


「あちゃー、もう結構並んでるな。この様子だと昼を超えるな」

「王都の洗礼ですね!」

「意味が分からん……」


 だって考えて言ってませんもん!

 隣を歩くアリーチェも目を輝かせているし、くーちゃんも心なしか楽しそうに僕の頭の上で揺れてる。

 いよいよこの王都で、僕の冒険者生活が幕を開けるのだ、ワクワクしたって仕方がないと思うよ!


 そう、僕たちの冒険はこれからなのだっ!

お読みいただきありがとうございます!

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