来訪者
本日2話目です!
十一歳になりました!
僕にとって何より嬉しいのは、アリーチェの身長を超えたことである! よかった!
初戦闘の日から早くも三年。僕たちはひたすらに訓練を続けていた。
魔法を中心に訓練して現存する四属性をひたすらに発現させていった。
母さんはそんな僕をより溺愛し、エリカお姉様とくーちゃんの三人の女子会で僕がいかに凄いかを語り合ってるらしい。いったい何をやってるの……。
アリーチェは変わらず剣の訓練で、素振りが滅茶苦茶速くなった。僕の目じゃもう扇状の何かのようにしか見えない。これが一本の木刀と言われても信じられないよ。
そんな噓みたいな素振りをしてるのに、アリーチェの腕は細い。
父さんとの模擬戦でも、十数回に一回は勝つなど成長が目覚ましい事になっている。
ランニングも始めたよ。集中して、全力で戦うのは非常に疲れる。バテて動けなくなりました、じゃ駄目だからね。
そんな訓練を三年。父さんが言うには知る限りの王都の中堅冒険者にも後れは取らないだろう、とのことだ。
冒険者にはランクがある。けれどそれは冒険者になるときの説明まで楽しみにしているために、聞くのを拒んでいる。王都に行く日が楽しみである。
父さんたちは元上位冒険者と位置付けられていたらしい。そんな両親から訓練や勉強を指導されてきたのだから僕とアリーチェはとても恵まれてると言える。
余談だけど、アリーチェの両親から苦笑いで娘をよろしくね、と託された。
もうお淑やかに育てるのは無理な為、せめて好きなようにやらせたいとのことだ。理解のあるいいご両親だよね。僕のせいだとは思いたくない。
△ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽
もうすぐ十二歳というところで、人族の国『ラーナスタ王国』南方のこの村(名前はなく、南方の村で統一されているらしい)に、珍しく冒険者パーティーがやってきた。獣人パーティーである。
「あ、レナ!」
「え? あら! クゥナリアじゃない!」
「ってことは……おぉ、『雷牙』じゃないか!」
うわぁ、話に聞いてた雷牙の方々か! ご挨拶しなければ!
「あ、あの、えっと! ……あ、そうだ、こんにちは!」
「あぁ、こんにちは。レックス、この子はまさか?」
「俺とレナの子だ。優秀……なんだが、どうしたエルナー、なんでそんな緊張してるんだよ?」
「緊張するに決まってるよ! だってあの『雷牙』の方々なんでしょう!? 狼さんの獣人さんがリーダーならこの方がラーシャーさんでしょう!? あの格好いい台詞の人でしょう!?」
「お、おぉ? なんだなんだ、どうした……」
父さんこそいったいどうしたのさ! こんな素晴らしい人にそんなあっさりした態度は良くないよ!
「『共に生きる仲間が苦境に立たされているんだ。助けに向かわないなんて選択はなかったさ』なんてことをさらりと言える凄い人なんだから! 尊敬しかないよ!!」
「ぶふぅ!?」
「「あはははははははは!!!」」
「お、俺は褒められてるのか? 貶されてるのか?」
虎さんは噴き出して鳥のお姉さんたちは大爆笑。なんで?
「……ごめんなさい」
「いや、いいんだ。気持ちはよくわかったから頭を上げてくれないか……」
どうやら聞き様によっては馬鹿にしているような発言をしていたことを教えられ、血の気が引いた心地だった。すぐさま土下座を敢行して今に至る。
ちなみにアリーチェは虎さんこと、カッシュさんに肩車してもらいはしゃいでいる。背が高いもんね、後で僕もお願いしたい。
僕はというと両側に鳥のお姉さん、ルルゥさんとクゥナリアさんに挟まれて頭や背中を撫でられている。正面にはラーシャーさんだ。
「父さんから、ラーシャーさんや『雷牙』の皆さんの素晴らしさを聞いていまして、こうして実際に会えて興奮してしまい……。改めまして、エルナーと言います。尊敬する方々に会えてとても嬉しいです」
「私も、君のような子と会えてとても光栄だよ。ラーシャーという。よろしく頼むよ」
「はい!!」
「……なぁレックス? エルナー君は本当にお前達の子なのか? 性格も容姿もあまりにも違いすぎないか?」
「失礼だなお前……それ、お前の横でニコニコしてる魔法使いの目を見て言えるか?」
「……大変申し訳ありませんでした」
ラーシャーさんが僕の真似して土下座していらっしゃる!?
「父さん、母さん、なんてことを……」
わなわなと震える僕の様子を訝しんだ父さんの目が見開く。そうとも。僕にはくーちゃんがいるのだ!!
「さぁ、くーちゃん! この無礼な両親をやっておしまい……え?」
突然落下したアリーチェは綺麗な回転をして見事着地。芸術点は高いと思います!
じゃなくて、あの一瞬で『雷牙』の皆さんが父さん達と僕の間に並んで跪いている。なんで……あっ!
「お初にお目にかかります、使徒様。我ら獣人族はあなた様のご降臨を心よりお待ちしておりました。つきましては我ら『雷牙』、獣人国『コーカトリア』の総意を以てあなた様に仕えたく存じ上げます」
そう、そうだった。獣人の皆さんは使徒を信仰していたんだった……。でも、なんか思ってたのと違う?
『…………』
「えっと、ラーシャーさん? 獣人の方々は、くーちゃん、使徒をコーカトリアで手厚く保護したいとか、そういった考えはない……ですか?」
「そんな恐れ多いことが出来るかっ!?」
「ひぅ……」
「あ、すまない!?」
び、びっくりした。僕はとんでもない勘違いをしていたんだね……。
「い、いえ、僕の方こそ失礼なことを言いました。使徒を信仰しているとは聞いていたので、思わずそう言ったことのために強硬な手段を取られたりするのかって心配したことがありまして……」
ごめんなさい、と謝ると目を丸くした雷牙の方々。同時になんだかしゅんとしている。
「そうか、それもそうか。すまない、言われて初めて気が付いた。これは、我々の考えが足りなかった。不安を与えてしまい、本当に申し訳ない。許してくれ、エルナー……」
「許すも何も、誰も悪いなんてことはないです。どうしてもというのならば、僕は失礼なことを言ってしまった、皆さんも不安を与えてしまった。それらを水に流しませんか?」
さりげなく僕自身の失態をなかったことに……いえ、なんでもないです。
「……ありがたい申し出、是非とも受け入れさせていただくよ。感謝する」
「はい、それで、くーちゃん?」
『悪い方々ではないですの。『雷牙』の皆さん。私は『聖鳥クーデリカ』ですの。神の代わりにこの子、エルナーとこちらのアリーチェの守護を任じられているですの』
「「「「!?」」」」
わぁ、凄い狼狽えてる。信仰対象が守護する存在。そんな存在にさっきまでの態度とか?
うん、控えめに言って詰んでると思う。
でもね? 僕は雷牙の皆さんが大好きだ。会ってまだ短いけれど、信頼できる人たちなのは分かるよ。
「あの、僕から一つ提案というかお願いがあるんです。聞いていただけますか?」
「あ、あぁ。いや、はい。ご拝聴いたします」
……固い。けど今はそんなことを言うべきではないね。
「僕とアリーチェはもうすぐ十二歳になります。僕たちは冒険者となります。そんな僕たちの指南役と、一緒に冒険などをしていただけませんか?」
「「「「是非、お供させていただきます」」」」
アリーチェと見合わせて笑う。そうだよね、これは、よくないよね?
うんうん、いい笑顔だね。分かる、分かるよ。じゃあ、一緒にやろっか?
徐に近づいた僕たちに、ピクリと反応しただけで未だ跪いている彼らは成り行きを任せているのだろう。
決まってる。僕たちはいつだってそうだったから。嬉しさが溢れた時も、悲しさが溢れた時も。僕とアリーチェはいつでもそうだった。
僕はラーシャーさんとカッシュさんを。アリーチェはルルゥさんとクゥナリアさんを。
二人ずつ、間に入って両手で二人を抱きしめた。
「「よろしく、お願いします」」
くーちゃんが、僕たちを暖かな光で包み込んでくれていたよ。
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