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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
王太子の試練と眠れる災厄
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合流、されど

 コーカトリアが低い唸り声をあげ、こちらを警戒しているのか姿勢を低く構えている。

 睨み合っている訳じゃない。さっきまではレグナントさんと2人だけだったから無理だったけど、魔法の場を奪い合っているんだよ。

 千切れた3つの蛇尻尾の肉が盛り上がり、再生していくのを視界に入れつつ観察を試みるよ。


 しびれを切らしたコーカトリアが距離を詰めてくる。

 アリーチェとメローネは横に跳び、その突進を避けつつステップを踏んで、蛇尻尾をそれぞれ撫でるように斬りつける。

 小さく悲鳴を上げながら、それでも構わず僕の方へと突っ込んでくる。どうやら魔法を妨害した僕が気に入らないらしいね。


 あと数秒もすれば激突するかもしれないからね、結構なスリルを感じているよ。

 それでもなお、観察を継続する。大丈夫、信頼できる盾がすぐそこにいるからね。


「「おおおおおおおおッ!!」」


 重い質量同士がぶつかり合う激しい音と、より衝撃を与えるための爆発音が、草原の果てへと過ぎていく。

 カッシュさんとジンによる、爆発するシールドバッシュがまともに入り、コーカトリアはその巨体を浮かせて後方へと吹き飛び、何度も転がってようやく止まる。


 魔法が飛び、魔鉄製の矢が幾度も穿ち、黒と赤の風が踊るようにその体躯に傷をつけていく。


 僕のすぐ横を後ろから駆け抜けた影を視認すると同時に、コーカトリアの蛇尻尾が(うごめ)いた。


「……なるほど。『火精(イフリタ)』」


 視線に沿って、棒状の魔法の場を確認できた。ピンポイントに発動する石化の魔法だね。

 魔力の色から土の魔法というのも把握したよ。そこに混じり物というかね、僕が『虚質の紡錘(ぼうすい)』で使った、『魔王の呪い(誓約)』に似た負の感情も乗っているようだ。


 こんなことなら、コカトリスとの戦闘でもっと注視しておけばよかったかもしれない。そうすればもっとやりようはあっただろうに、後悔しきりだね。


 金色の蝶が蛇尻尾の目を塞いだよ。射線を奪った事で、石化の呪いは不発に終わる。


「ガアアアアアアアアアアアアッ!!」


 ラーシャーさんが咆哮と共に放つ『雷爪』がコーカトリアを撃つ。魔鉄の大剣が鈍色の体毛を易々と貫通し、深い傷を与え、雷撃が内部からその身を焼いていく。


『シャアアアアアアアアアアアアアッ!?』


 雷撃で体が硬直したコーカトリアを挟むように、アルトは背後から、ゾーイは正面から駆けていく。

 アルトは同年代のうちでは、ジンに次いで力がある。まともに受けようとすると、手が痺れるほどの重さがあり、さらに剣の技術も結構なレベルで修めている。

 ひとつ剣を振るうたび蛇尻尾を斬り、あるいは断ち、コーカトリアの無力化を進めていく。


 そしてゾーイだけど、ハルバードを構えた状態で走り距離を詰めたと思ったら、まだ攻撃範囲ではないはずなのに、突きを放った。


「『魔槍・穿(ゲイボルグ)』ッ!」


 突き出したハルバードの先端から、褐色の魔力が迸る。

 ゾーイが放った突きの速度と同等か、それ以上の速さをもってコーカトリアへと迫り、その胸を貫いた!


「す、すげぇ……」


 レグナントさんの驚嘆の声に同意しかない。


「ゾーイ、いつの間にあんな……」


 魔法ではなく、魔剣の一種なんだと思う。だからこその威力なんだろうし、なによりもハルバード自体にも同じ魔力が留まっている。

 というか、みんなゾーイをみて驚いているね? もしかして今初めて披露したのかな?


「ともあれ、これで――ゾーイッ! 離れてッ!」

「ッ!」


 アルトが斬り落としきれなかった蛇尻尾を、体ごとぶんまわしてきた。

 ゾーイはどうにか回避できたけど、アルトが吹き飛ばされ、受け身を取ったものの左腕が折れていた。


「くーちゃん! アルトをお願い!」

『わかったですの! アリーチェはエルナーの下に!』

「うんっ! メローネはアルトを守って!」

「うん! アルトー! 生きてるー!?」

「生きとるわっ!」

 

 ……一気に気が抜けそうになったけど。

 胸を貫かれたコーカトリアは、解体したコカトリスと照らし合わせると、確かに心臓があった部分だったはずなんだ。それなのにコーカトリア特有の魔力があちこちから集まりだして、再生させてしまっていた。


 ゾーイの攻撃で一瞬緊張感が弛緩した瞬間にそれだ。もし気づけなければゾーイも危なかったかもしれない。


「厄介すぎる……どうすれば倒せるんだろう……」

「エルナー! あれなに!? 普通の生き物じゃないよ!?」

「アリーチェ、あれはコーカトリア……かつて使徒キアラが、命と引き換えに『封印』した災厄の魔物だよ」


 みるみる再生していくコーカトリアを眺める事しかできず、集まりつつも聞こえた僕の言葉に顔をしかめる面々。


「レグ、大変なことになってるな……」

「ええ、本当に。異常事態ここに極まれりってところですね……」

「積もる話もあるが……まずはこの難局を乗り越えることを優先するぞ。まだやれるな?」

「もちろんです、ラー兄ぃ」


 とにもかくにも、コーカトリアを倒せなければどうしようもない。『封印』は方法がないから取れる手段では無いからね。

 目下の問題として、どうすれば倒せるのか、ということだろう。

 どれだけ攻撃を加えても、致命傷と思えるダメージを与えることができても、こうして再生されるなど反則にもほどがある。


 いよいよ再生が完了し、ますますもって憎しみのこもった視線を寄こしてくる。というか……。


「また大きくなってる……」


 3メートルほどの大きさとなり、蛇尻尾の太さもさらに大きくなっている。


「……アルト、腕は大丈夫?」

「クーデリカさまのおかげでなんとかな。それにしても……なんでエルナーってこういうのを引き当てるんだよ?」

「いや僕のせいじゃない……たぶん……きっと……」

「もう、アルト! エルナー君イジメてる場合じゃないでしょう!」


 いやメローネ、イジメられて無いからね?


「クーデリカ様ー、周りのコカトリス片づけるのに、アレやりませんかー?」

『アレですの? ……たしかに、ちょうどいいかもしれないですの』

「それじゃあ、いきますよー!」


 くーちゃんがクゥナリアさんの肩に乗り、膨大な魔力を励起させる。

 その魔力に交じらせるように、クゥナリアさんは風の場を薄く広く展開し、円を描くように場を限定させていく。

 導火線代わり、なのだろう。くーちゃんの魔力で発現した炎が風の場へと落ち……瞬く間に灼熱を帯びた炎の輪が僕たちを囲った。


 魔法が故にありえない現象も起きている。草原であるのにも関わらず、一切の延焼がない。

 その完璧な制御に、僕とラムダは感動してため息をついていたよ。


「んふふふ、ボクとクーデリカ様の共同魔法『炎輪結界』だよー。今はコカトリスの殲滅仕様だけど、『リリックサンク』でやった夜間の明かりではもっと高くまで上げていたんだよー!」


 夜空を赤く照らしていたのはこれか!


 焼き尽くされたコカトリスたちから、コーカトリアの魔力が溢れ出していく。それらが吸収されていき、存在感が増していくのを肌で感じる。


 それは気配を探れる皆からすれば、かなり怖い状況なんじゃないかな。実際レグナントさんは表情が引き攣ってるし、カッシュさんは牙を剥いて威嚇しているようにも見える。


 10の蛇尻尾と、コーカトリアがこちらを向いて大きく口を開き――炎弾、風刃、石槍、氷の棘を一斉に放ってくる。

 ずいぶんと派手な戦闘再開の合図だよ。金色の蝶を蛇尻尾の目に張り付けて石化の呪いを封じつつ、散開する。カッシュさんはクゥナリアさんとくーちゃんを守り、残りはコーカトリアへの攻撃だ。


 アリーチェとともに『浄魔の焔刃(フランベルジュ)』を行使するよ。負の感情に由来する魔力を扱っているからね、そういったものになら『浄魔の焔刃(フランベルジュ)』は有効なはずだから。

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