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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
冒険のための準備
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獣人の国

新キャラ達登場回。

三人称でお送りします!

 『獣人国コーカトリア』。

 この世界において初めに顕現した使徒の祝福を以て彼等獣人は誕生したとされている。

 そのためだろう。彼等にとっての神は使徒であり管理者は純粋に謝意を捧げる存在である。


 使徒の祝福を最も色濃く授かったのは狼であった。


 当時は魔物の大繁殖が発生し、あらゆる生物の生存域が狭まった。その際に実のところは現存している人種全てに使徒が派遣されているものの、表立って活動していたのは獣人たちの神となった使徒だけだった。


「獣人たちよ、我が子らよ。お前たちに与えられたのは知恵のみであることを申し訳なく思う。だが決して悲観することはない。子らよ。お前たちは勇敢で勇猛であり、蛮勇などではない。知恵を磨け。知識を築け。それが私が子らに望む唯一だ」


 そう言い残し、静かに消滅したのは今の『獣人国コーカトリア』の『首都キアラ』の地であった。

 彼はその地に居た強大な魔物となった、変異したコカトリスとの戦闘で限界を迎えたのだ。


 ――獣人国よ栄あれ。使徒様に報いるために。


 彼らの生存域を死守した使徒を崇拝する由縁となった。


 獣と呼ばれることを嫌い、知恵を磨いた。


 野蛮と呼ばれることを嫌い、文化を築いた。


 そうして長く続いた蔑みの時代を乗り越え、皮肉なことに獣人国は大陸有数の文化圏を誇ることとなる。



 『首都キアラ』に構える星詠みの塔。

 星を詠むのに適した塔内部に研究所を構え、情報を発しているその場所はその的中率の高さから国内では高い信頼がある。


 『世界の動向は星にて示される』


 その哲学の下、研究に研究を重ね続けているこの場所において衝撃の一報が奔った。

 研究所の所長が大慌てで王宮へ駆け込むも、衛兵によって止められる。


「お待ちください! アズル所長、本日はどのようなご用件でしょうか」

「おぉ、すまぬ。星詠みで一大事があったのじゃ。陛下に謁見を申し込みたい」

「一大事でございますか? 差し支えなければお教えしていただけますか?」


 明らかに興味が強いその様子に、アズル所長は思わず苦笑いを浮かべた。

 さもありなん。所長自らが駆け込むほどの一大事などそうそうありはしないのだから。


「うむ、使徒様がご降臨成された」


 この場にいるのはなにも衛兵と所長だけではない。周囲には御用商人や王宮で働く貴族なども多くいる。

 だというのにこの場から一切の音が消え去った。


 誰かが唾を飲み込む音が大きく響く。それが契機になった。


「た、直ちに陛下へお繋げ致します!」


 衛兵の駆ける音だけが響いていった。



「アズルよ、使徒様がご降臨成されたというのはまことか?」

「まことにございます、陛下」


 急遽準備が成された謁見は、果たしてその重大性に浮足立った重臣達の気配に騒めいていた。

 そのなかで、特に感慨深げに玉座に座る狼の要素が強い獣人にして、『獣人国コーカトリア』が国王アルバート・コーカトリア。

 その視線の先で自然体で立つ羊角とふさふさの白い髭が特徴のアズル所長である。


「そうか……そうか。して、使徒様はどちらに?」

「それが、方角は南東……人族の国『ラーナスタ王国』かと思われます」

「ふむ……今『ラーナスタ王国』で重大な問題は起こっていたか?」

「いえ、そういった情報も連絡も入ってはおりません」


 そう答えたのはレイナス宰相。象の獣人である。象の獣人は皆獣の血が濃く出る。


「ふむ、ご降臨成された目的は分からぬ、か。叶うならば我が国にてお過ごし頂きたいがそれは本望ではないだろうな」

「左様でございますな」

「であれば、次だ。関わらぬなどあり得ぬのだ。ならば此方から仕えに赴くべきか」

「でしたら、今ラーシャー様のパーティーが帰国しております」

「おぉ、ラーシャーか! 丁度良い。ラーシャーを呼べ」

「畏まりました」


 狼の獣人の冒険者ラーシャー。彼が率いるパーティー『雷牙』は『獣人国コーカトリア』における上位パーティーである。そしてなにより、ラーシャーはアルバート王の甥である。国王としては申し分ない人選だった。



「陛下、ラーシャーでございます」

「入れ」

「失礼します」


 アルバート王の執務室に通されたラーシャーは興奮しているのか、やや紅潮している。

 その様子を見やってアルバート王は思いがけず苦笑いをした。


「ラーシャー、無事の帰国安堵したぞ」

「はっ、ありがたく存じます、陛下」

「伯父でよい」

「はい、ありがとうございます伯父上」


 両者の仲は良好だ。ラーシャーからすればアルバート王は賢君であり尊敬する伯父だ。対し、アルバート王にとってのラーシャーは知識、実力共に優れた可愛い甥である。


「聞いていると思うが使徒様がご降臨成された」

「はい、驚きましたよ。まさか私が生きている時代にご降臨成されるなど……」

「ふっ、嬉しそうにしおってからに。ラーシャー」

「はっ」

「使徒様に仕える任、お前たち『雷牙』に任せたい。構わぬか?」

「栄誉にございますれば! 断ることなどありえません!」

「ハハハッ! そうか、そう言ってくれるか!」


 こうしてラーシャーのラーナスタ行きが決まった。




「というわけだ。勝手に決めてしまったからパーティーを続けるか否かはここで決めてくれ」

「続けるに決まっているだろう。俺はこんなチャンス逃したくないぜ!」

「そうだよねぇ、使徒様に仕えるなんて夢みたいねぇ」

「えっと、ボクもいいんですか?」

「当たり前だろう? 来てくれるなら心強いさ」


 パーティー『雷牙』は実にバランスの取れている。

 前衛の戦士であるラーシャーは大剣を使い、魔技にて放電を使いこなす。

 同じく前衛の虎の獣人カッシュ。彼は盾とメイスを使い、ついた二つ名は『移動要塞』である。

 中衛のルルゥは鷹の獣人で、彼女は弓の名手だ。

 後衛のクゥナリアは梟の獣人でルルゥとは幼馴染。魔法を得意とし、風と火を使いこなす。ボクっ娘である。



「これよりラーナスタでの活動になるな。もしかしたらコーカトリアに戻れないかもしれないから今のうちに思い残しの無いようにしておいてくれ」


 

 それから数日程休息日を設けた『雷牙』の面々が『首都キアラ』の城門に集うと、その周りには多くの人々が歌い始める。


 ――我ら使徒の子、この地を守護し繋ぐを誇る――


 ――理想を胸に、希望をその手に、我ら想いを紡ぐ者――


 ――父を想いて歩み往こう、我らが歴史を語り継ごう――


 ――悲しみの名を刻みし地に、我らが父キアラの名を刻まん――



 『雷牙』の四人はその合唱の間、胸に手を当て深く黙祷を捧げていた。

 ゆっくりと紡がれるその歌は、しかして力強く彼らを後押す。

 歌はまだ続く。けれど彼らは歩み始めた。 



 ――歩み続けるは我らが望み、願わくば永遠(とわ)に続かんことを――



 ゆっくりと城門を抜けた時、歌が終わる。

 振り返り深く、長く頭を下げる。

 男女の差など些細なことだ。『雷牙』の面々は地面に涙を零す。


 この歌は旅立つ同胞に捧げる歌だ。離れても同胞であるのだと知らせるための。

 別れた道をも歩み続けていったとしても、やがては同じ場所へと至れるのだと。


 そんな思いを乗せた合唱は城門を挟んてなお通じるのだ。我らの想いを持って行ってくれと。


 だからこそ、ラーシャーは吠えた!


「我ら『雷牙』はっ! 祖国コーカトリアを誇りにっ! 父キアラの想いとっ! あなた方の想いを連れてっ! 使徒様に捧げることを誓うッ!!!」


「「「「「おおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」




 かつて、獣人を蔑んだ人種は確かにいた。

 けれど彼らも獣人のある一点においては一目置いていた。


 彼等獣人は同胞を愛し、仲間を愛し、例え離れていても仁に篤い。


 かつて蔑んだ者は、こう記し残した。


 『やつら獣人一人を迫害することなかれ。その一人が全ての獣人を敵に回すことになるのだ』

お読みいただきありがとうございます!

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