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憧れた冒険へ【更新停止】  作者: 住屋水都
鋼の子守唄を地の底へ
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魔法生物

 ぐったりしてるカッシュさんとゴルトーさんは置いておき、他にも何か見せてくれと屈強さんたちに頼まれてしまった。

 そうは言っても、基本的に魔法は攻性のモノが多く、そうでないものは地味な見た目になる傾向にある。洞人族の、それも酔っ払いたちを満足させる魔法はそうそうあるわけでもなく、こういった場合の切り札である『火精(イフリタ)』のカードはすでに切ってしまった。


 断るのもなんか悪い気がして、困りながらもヒントを得ようとあたりを見回していると、中央に鎮座している巨大な鉄ゴーレムの塊が視界に入った。


 天啓を得た、というのだろうか。有名なロールプレイングゲームや漫画でおなじみだった、土魔法や錬金術なんかで定番となっている魔法生物。


 ゴーレムを作ってみよう!


 さしあたって、倒した大量の土くれゴーレムの残骸を足元に転送し、魔力を込める。

 世界の半分をくれるらしい、魔王のいるゲームでおなじみのゴーレムを参考に成形していく。違う点はレンガっぽい作りではない点だろうか。そのせいかもしれないけれど、のっぺりとしたゴーレムの形が出来上がった。


 結構イメージ通りに成形できたから、もうすこし欲張ってみることにする。

 隣で楽しげに見ているアリーチェをイメージして魔力を動かし、ぐねぐねとゴーレムがうねりながら形を変えていく。次第にアリーチェの特徴をとらえた、けれど微妙に違った姿のゴーレムの姿ができた。


「……エルナー?」

「……どうして怒ってるのかな?」


 もしかして勝手に似せたことを怒ってるのかと思っていると、アリーチェがおもむろにゴーレムの、サイドテールの部分を指さして睨みつけてくる。


「羽ピンが無い! これじゃ私じゃないよ!」

「え、そこ? 当たり前だよ。アリーチェに似せたけど、特別な思い出のある装飾を、たとえ作り物であろうと付けたりはしない。僕たちの特別は、僕たちだけのモノなんだから」

「え、う、うん……へへっ」


 照れが混じったような、しまりのない笑みだけど嫌いじゃない。そんな僕たちにあてられて、カッシュさんはまたお酒が甘くなったらしいけど知ったことではないのです。


 それはさておき。ゴーレムは形だけを作れば完成ではない。動かなければこれはただの土人形であり、魔法で作った意味がないからね。

 ここまで勢いで作ってきたけれど、困ったことになったぞ。動かすためにはどうすればいいんだろう?

 鉄ゴーレムや、脆すぎて視ていなかったけど土くれゴーレムにも(コア)はあったはず。そこになんらかの魔法的な命令があれば動くのかな?


 物は試しだ。

 濃縮した魔力を胸の部分に留め、イメージで魂のコピーをする。そうして固定させた(コア)を起点に、魔力を全身にくまなく満たしてみた。


『……ん……あれ? え、何で僕アリーチェの体……あれ、違う?』


 …………。まあ、うん。僕の魂のコピーならそうか。隣を見るのがなんか怖いなあ。

 袖を引かれる感覚があってね。覚悟を決めて確認してみれば、とてもいい笑顔をしておりまして。ヒトはどうして同じ表情なのに、別の感情を生み出せるのだろう。不思議ダナー。


『あ、なるほど、僕はゴーレムなのか。ならこうすれば……お、僕になったかな。ねえ僕、作るなら自分の姿にしてよ。すっごい恥ずかしかったんだけど!』

「あ、ごめんね。でも僕なら分かるでしょう? どうせ作るなら好きなヒトの姿を作りたいじゃん」

『分かるけどさ。せめて思考ルーチンはアリーチェのモノにすればよかったんじゃないの? できなくても似せることは、僕ならできたでしょうに』

「まあまあ。それで、体に不調とかあるかな?」


 そう言って、自分で勝手に姿を僕のモノと同じにしたゴーレムは、自身の体をあちこち触ったり、ストレッチをしてみたりと感触を確かめている。ある程度満足したのか、笑顔を浮かべて頷いていたよ。


『大丈夫そう。考え方は合ってるみたいだよ。ただ、関節が動かしづらいかな? 内骨格とかにして、体も伸縮性を持たせることが出来るなら、僕としては完璧』

「なるほどね。それなら骨格部分をより密度を高めて作って、体の部分は密度を緩くして、相対位置を魔力で固定してみればいいかな?」

『あ、いい感じだね。これなら満足だよ。ねえ僕、夢がかなったね!』

「確かに! それもこれも僕の協力があったからだね!」

「『あはははははっ』」


 いやあ、僕との対話ってこんなに有意義なんだね。全身が土色なのは仕方ないとして、細かい動きなんかの改善点なんかをスムーズにやり取り出来て開発が捗るよ。

 他にも何かできないかなと思考を巡らせていると、ゴーレムの僕が少し後ずさっている。何かと振り返ってみれば、これまた怖い笑みを浮かべたクゥナリアさんとラムダがいてね。ゴーレムは激しく首を横に振っていた意味を理解したよ。


「さて、エルナー君。ボクたちが言いたいことは、わかるよね?」

「これって土魔法だよね? 僕にもできるよね? できるって言え?」


 ラムダが興奮しすぎて性格変わってる怖いコワイ。

 というか二人とも、握力が強すぎる。掴まれてる僕の肩が悲鳴を上げてるんだけど!?


 助けて僕、ヘルプミー!


『ッ!? 体が勝手に!? おい僕、何を命令したのさッ!?』


 悲鳴と批難を上げながらクゥナリアさんとラムダを引き剥がそうとする、ゴーレムの僕。いやほんとごめん。命令したつもりはないんだけど、魔法的なつながりがここまで有効だとは思わなかったんだよ。


「……エルナーくぅん? 詳しく、教えて、くれるよねぇ……?」


 怖い、クゥナリアさんまで壊れた!

 ゴーレムは泣きそうな顔になりながら全力で首を振っている。器用だね、君。


「えっと、ひどく興奮しているみたいなので、落ち着いたら……」

「エルナーは僕たちが未知の魔法を使って平然としていられるのかい?」

「無理だね」


 腑に落ちてしまった。


 成形から核に込めるイメージなどを、隠すことなくすべてを教えると、クゥナリアさんは残念そうにするのに対して、ラムダは狂喜していた。恐ろしい事にゴーレムの僕を崩して試そうとしていたから、土くれの残骸を追加で転送したら、口を三日月の形に歪めて嗤っていた。


 結果としては、核の命令の部分で失敗していた。僕のように魂をコピーすると言っても、うまくイメージができなかったらしい。そこで、考えうる対応策を加えてみることに。


「簡単な動きの命令はできてるみたいだから、魔法生物らしく学習させるようにすればいいんじゃないかな?」


 そう、魔法的な人工知能である。一般的な動きや言語と、経験を吸収するという命令を加えて、ラムダが再び魔力を通すと、そのゴーレムは次第に動き始めた。嬉々としてラムダが色々教え始め、そこにクゥナリアさんも交じって非常に楽しそうだ。


 僕はと言えば、ゴーレムと頷き合って無事を喜んでいた。


「……そいつは、ゴーレム、だよな?」


 あまりに濃密過ぎた時間に、ここがどこなのかを忘れていた。

 屈強さんたちのみならず、グラントさんや鍛冶職人のみなさんまでもがこっちを見ていて、その動きも止まっている。当然ながら、誰一人として声を発していない。


「えっと……はい。即席で、作ってみた魔法生物(ゴーレム)です」

「そいつが、エルナーを僕って言ってるのは、似ている姿だからか?」

「僕の魂をコピー……複写したからですね」

「そいつは……可能な事、なのか?」

「……出来てしまった以上、可能なのでしょうね」


 質疑応答のような会話でも、実りというものは多くあってね。このやり取りをしている間に一つだけ気づいたことがあったんだ。


 このゴーレム製造、使えるぞ?

お読みいただきありがとうございます!

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