魔技(剣)と実践(魔法)
本日2話目です。
それからも午前は勉強で午後はアリーチェと遊ぶ生活を続けていた。
くーちゃんの事があってから変わったこともある。
アリーチェの髪型が変わったのだ。今までは何もせずまっすぐに下ろしていたが、くーちゃんの羽根ピンを貰ってからはサイドテールにしている。ピンのままだと難しかったそうで、開閉式の輪が追加されていた。
髪型一つで印象はかなり変わるので女の子ってすごいと思う。
僕自身のほうでは、一日交替で魔法の勉強と剣の稽古をすることになった。
父さんに剣を教えてって頼んだら凄く嬉しそうにしてくれたんだよね。
そのことをアリーチェに話したら、アリーチェも剣を習いたいと言い出してちょっとした騒動になった。アリーチェの両親はやりきれないよね……。
それでもアリーチェの粘り勝ちで、剣の稽古の日はアリーチェが家にやってくるようになった。
「えるなー! おはよう! おじさんとおばさん、おはようございます!」
「おはようアリーチェ。今日も頑張ろうね」
「うん!」
元気なアリーチェの笑顔で父さんも母さんもにっこにこである。僕?アリーチェといるときは大体にこにこしてるよ。
「じゃあ今日も素振りからだ。ただ振るんじゃなくて、丁寧にまっすぐだ」
木刀を握りしめて刃筋を確かめながらゆっくり振るう。
刃を立てた振り方をゆっくりと体に覚えさせていく。何度も反復することで自然と体が動き、より早く正確に振るえるようになるのだそう。
また、握りにしても力任せに握るのではなく小指を意識するのが大事だと教わった。
素振りを終えたら僕とアリーチェの二人で父さんに挑む。僕たちが自由に斬りかかるもまるで届く気がしない。当然と言えば当然であるが。
アリーチェが仕掛け、同時に反対側から僕も斬りかかる。これも戦術のうち、ってうぇぇぇぇ!?
何今の動き気持ち悪い! え、なんで僕とアリーチェの木刀が同時に弾かれたの!?
「……エルナー、性格がレナに似てきたな?」
「えっと、ありがとう?」
「いや……まぁ、うん。冒険者をやるなら理想的ではあるかな?」
「おぉ……!」
「えるなー、ぼうけんしゃになるの?」
「うん、冒険したいからね!」
今は冒険者になるための準備期間だからね。いっぱい体を虐めていろんな知識と技術を吸収するんだ……。
「えるなー、めがおさかなさんみたい……」
……まぁ、それはひとまず置いておこう。それより気になるのはさっきの父さんの気持ち悪い動きだ。
「ねぇ父さん。さっきの気持ち悪い動きってなんなの? なんで反対側の僕の木刀まで弾かれたの?」
「気持ち悪いって言うな!? あれも魔法の一つだ。属性はわからんがな」
「え? 分からないなんてことあるの?」
「なんせ魔法を放てないからな。けど、剣士で名を挙げた奴はだいたいが何かしら使えるな」
どういうことだろう。魔法が使えないけど使えている? でもおかしいな、どこかで似た感じの話があったはずなんだけど……。
「それってどんな感覚なの? ていうかどんな効果なの?」
「おー、どうしたエルナー……。アリーチェちゃん、エルナーに付き合ってもらってもいいかな?」
「うん! わたしもしりたい!」
「そっかー、ならそうだな。魔技について教えよう」
おぉ、魔技! 夢がある単語が出てきたね。
魔技とは誰もが持ってると言われてる魔力を用いた技術の総称で、父さんが使ったのは活性という。その効果は身体能力全般の向上。
他にも硬化というズバリそのままの効果を持つ魔技が使えるのだとか。
しかしそうか、恐らくだが活性は本当に誰もが使えるのだろう。体温調整のように火の魔力を使っているのかな。
根拠としてはやはり身体能力だ。血の巡りが肝だろう。
「えるなー? えーるーなー!」
「わっ! え、あーごめん。気になって考え事してたよ」
これは夜しっかりと考察しなくては……。
「まぁ、教えるといってもこんなのができるっていうだけなんだけどな。誰もができるようになるってもんでもないしな」
「わたしも、できるようになるかな?」
「魔法は想像力だから……たぶん個人の魔力的エントロピーが……そうなると個人差に……」
「はぁ、まったく。エルナー! 気になるのは分かるがアリーチェちゃんを放置するなっ!」
「うわぁ!? ご、ごめんなさい!?」
「あはは、えるなーおこられた!」
僕、怒られた。反省……。でも気になるんだよね。
午後は川辺で遊び、夕飯を食べて自室のベッドでゴロゴロしつつ魔技について考える。
父さんは魔法の一つと言っていた。魔力を使っているのは確かなのだろう。
漫画ではどうだっただろうか。似たケースで言えば『気』だろうか? でも何かが違う。
そもそもどういった発現が成されているのだろう。活性は身体能力の向上だった。その原理は?
分からない。分からないことばかりだ。父さんの言い方だと魔技に関しては魔法より詳しく解明されていないみたいだし。
あぁ、楽しい。今はまだ遠くに出ることはできないけれど、今だってこんなにも未知がある。
魔法の勉強が実践になったら少しは考察は進むかな。
剣の稽古で疲れていたのか、いつの間にかぐっすりと眠っていたよ。
△ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽
「母さんも、魔技を使えるの?」
少し気になっていたのだ。魔法使いである母さんなら分かるのかなと思って聞いてみると、なんだかきょとんとしている。え、その反応は予想してなかったんだけど……。
「母さん、魔法使いだから魔技は使えないわよ?」
「え?」
一応は魔法のカテゴリになっているが、形態として別物らしい。
魔法学院でも研究はしているそうだが結果は芳しくないらしい。というか魔法学院。漫画では結構出てきたやつだ!僕も行けるのかな!?
「残念だけどうちの貯えでは通わせてあげられないわね……ごめんね、エルナー」
「ううん、母さんは弟子入り志願者が訪ねてくるくらい凄い魔法使いだから通えなくてもいいかも」
楽しそうではあるけどね。冒険者になる準備は両親の教えがあればなんだか十分足りると思うし。
「でもそんな人を魔法学院が放っておくの?」
「誘われたわよ。断ったけど」
「え?」
「……さあエルナー今日から少しずつ実戦形式になっていくから覚悟なさいね?」
「う、うん」
なんだか不穏な気配がするんだけど、魔法学院と何かあったのかな……? 触れたらなんかまずそうだしそっとしておこう。
「それじゃあ、まずはエルナーの魔力の特性を調べましょう」
「おぉ、ついに!」
「ふふ、そうね。調べ方は簡単よ。それぞれの基本の詠唱で発現の可否で見るの」
「詠唱!魔力よ、我が指先に集いて出でよ! みたいな感じ!?」
「……なにそれ? そんな長ったらしい事言ってる間に死ぬわよ?」
「あ、はい……」
でも詠唱ってそういうもんじゃないの? というか漫画の世界じゃもっと長い詠唱してるしなんだったら空気中に魔法陣描いてたりするのもあったよ?
でもそうだよね、そんなの隙だらけだよね……。敵は律義に待ってくれてたのかな?
「トーチ、ウィンド、ウォーター、マッド。それぞれ火、風、水、土ね」
「言うだけでいいの?」
「初めは、手の平を上にしてそこに意識を向けるの。その意識の向きが魔力に働きかけるわ。その状態で詠唱するの」
「うん、やってみるよ」
言われた通り手の平を上にして、左手で手首を軽く握って支える。
ゆっくりと、手の平に集中する。自然と視線もそこに向いていた。
「……トーチ」
……ぼんやりと歪んだ気がする。けれど何かが違う。何が違うのか……そう、そうだ。確か母さんは詠唱は補助だと言っていた。
だとすれば、今のは僕が悪い。集中することを優先して想像を疎かにした。
「……トーチ」
今度は蠟燭の火を想像しながら詠唱してみると、今度は小さな火が手の平の上をゆらゆらとしていた。
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