7、勇者パーティーのダンジョン攻略②
私は次のダンジョンに到着した。移動はゆっくりと景色を楽しみながら進み、王族らしく鷹揚にふるまう。
途中立ち寄った街では、その都度1週間ほど滞在して優雅な時間を過ごすことができた。
そろそろ路銀も尽きそうなので、父上には追加を頼んでおいたのだ。このダンジョンをクリアする頃には追加の路銀が届けられているであろう。
こんなに旅が順調であるなら、ハルなどもっと早くに理由をつけて追い出すべきであったな。あんなに耐える必要はなかったのだ。まったく無駄な時間であった。
私たちがダンジョンの入口に到着すると、ちょうどトラップ解除の担当ギルド員が出て来たところだった。今後はこういった形で進めていけと、父上から知らせが届いたのは3日前の事だ。
前回のダンジョン攻略から1ヵ月ほど経っていて、そろそろ次に進もうとしていたので本当にタイミングが良かった。
「ここがヘラクレート洞窟だな」
「あぁ、ちょうどトラップ解除のギルド員が出ていくようですね」
なにやら赤髪の女が私に話しかけて来たが、そんなに私と言葉を交わしたいのだろうか。美しいとは罪なものだ。
今度機会があったら、あの者も私の恋人に加えてやってもよいな。なかなか興味のそそる女であった。
そんなことを考えているうちに、ギルド員たちはあっという間に消えてしまった。
まぁ、よい。まずはダンジョンの攻略が先だ。
「では、行くぞ!」
「ジェレミー様! 最初の魔物は私が倒します!」
「ロザリーも早く来てください」
「待ってよぉ、みんな歩くの早いってば!」
***
私たちはヘラクレート洞窟の攻略にすすんだ。
1階層に出てくるのはゴブリンやオーガなどの低級の魔物だ。数で攻められると面倒だが、問題なく撃退できた。途中で休憩を挟みながら、一層ずつ足を進めていく。
5階層まで進むと、魔物のレベルが一気に上がった。今までいなかったワンランク上の魔物が出現してきたのだ。
「ちょっと! 今の魔法私に当たってたら大ケガするところだったでしょ!?」
「ソニアがさっさと避けないからでしょ!」
混戦状態で訳がわからないまま、目の前の魔物を倒していく。誰も他の者に気を配る余裕などない。
「ケンカは後だ! 次の魔物が来てるぞ!」
「ヒール!」
「クララ! 回復は私にかけるのだ! 自分にかけてどうする!?」
「ご、ごめんなさい!」
次の魔物に備えて回復したいのに、何をやっているのだ!? 勇者である私の回復が何より優先するべきであろう!!
ゴブリンに混ざってゴブリンキングがいるのだぞ! 万が一勇者である私が動けなくなったらどうするのだ!!
しかし何故だ!? ハルはいつもひとりで、一撃で倒していなかったか? パーティーである私たちにも経験知は割り振られていたのに、何故この魔物たちは一撃で倒れないのだ!?
そこでまたソニアとロザリーが言い争いを始めた。
コイツら……役に立つのはベッドの上だけなのか!? まともに戦えないのか!!
なんとか5階層の魔物も倒して、いよいよボス戦だ。ここまでの宝箱で、運のいいことに勇者が装備できる覇者の剣が出てきていた。これを装備して戦いに挑む。
ゆっくりと黒く塗られた鉄の扉を開けると、このダンジョンのボスであるトロールキングの雄たけびが聞こえて来た。
『グガアアアアアァァァァ!』
巨体を震わせて、ジェレミーたちに襲いかかってくる。そして5メートルもある棍棒で勇者たちをなぎ払ってきた。
「来るぞ! 避けろ!」
「くっ!!」
「「きゃあああ!!」」
避けられたのはジェレミーとソニアだけで、ロザリーとクララはモロに喰らって気絶していた。
「ロザリー! クララ!」
いきなりピンチだ。回復薬はクララが持っている。ジェレミーが使えるのは初歩的なヒールだけだ。
「ソニア! トロールキングの注意をひきつけろ! クララを回復させる!」
「わかった! 任せて!」
ジェレミーは急いでクララにヒールをかける。全快とはいかないが、意識は取り戻すはずだ。
「はっ! ああ、すみません……気を失ってました」
のん気に謝罪してる場合か! ソニアがやられたら、トロールキングがこちらに向かってくるだぞ!
焦りを隠せないジェレミーはクララを怒鳴りつける。
「いいから早くロザリーを回復してシールドを張れ!」
「はい、今すぐ!」
クララは慌ててロザリーにハイヒールをかける。目覚めたロザリーはスロウの魔法を唱えて、トロールキングの攻撃を避けやすくした。
攻撃が当たらなければ、少しずつ削って倒すことができる。ジェレミーとソニアでダメージを与え、ロザリーとクララで補助をしながらジワジワと追い詰めることができた。
こうして何とか態勢を整えたジェレミーたちは、時間をかけてトロールキングを倒した。
本当に危なかった。ハルはいつも一撃で倒していたのに……なにか強力な武器でも使っていたのか!?
そんな武器があるなら置いて行けばいいものを……アイツめ!
ジェレミーたちはボス討伐の際に現れる宝箱から、ワンランク上の防具を手にして街へと帰還した。
***
「何……? 路銀の追加はないだと!?」
街に戻ると父上に出した遣いが戻って来ていた。国王陛下からの書簡を預かっているというので、宿屋で一休みしてから開封することにした。だが、目を通したら信じられない内容が書かれていたのだ。
震える手で、書簡をグシャリと握りつぶす。
路銀の支給は月に一度、足りなければダンジョンの攻略をして自身で稼げだと!? この第3王子である私が一介の冒険者のようにしろというのか! 父上は一体何を考えているのだ……?
……仕方ない、当面は使っていない武器や防具を売るとしよう。確かハルがそのようにしていたのを見たことがある。アイテムボックスも一杯になってきたことだし整理もせねばならん。
ダンジョンをクリアすれば武器も防具も手に入るのだ。他の者たちにも指示を出さねば————
あれだけ見下していたハルを手本にしているとは、まったく気づいていないジェレミーだった。






