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4、勇者パーティーのダンジョン攻略①




 私ジェレミー・オ・エストラーダは3年前に勇者に選ばれた。

 エストラーダ王国は初代の王が勇者だったこともあり、武勲を立てた勇者の後生は安泰だった。私が兄上たちより優秀だと証明するために、勇者に選ばれたと理解している。


 賢い私は冒険者たちを最前線に立たせ、パーティーとして得られる経験値とダンジョンで回収する宝物で強くなっていった。もし冒険者がダメになっても、次を補充すればよい。

 こんなに効率のいい、安全な方法を思いつく私はやはり優秀だ。




 私たちは、ハルを置き去りにしたメイガン遺跡に再度訪れていた。

 あの日ハルを置き去りにしたのはよかったが、ボスを倒さないまま出てきてしまったのだ。トラップはハルが処理したから、あとはボスを倒すだけだった。


 残っているメンバーは私自身が選んだ者だ。

 剣士のソニアは腕はそこそこだが、豊かな胸に癒しを覚えたので採用を決めた。


 魔法使いのロザリーは身も心も捧げると言うので仲間にした。実際その日のうちに純潔を捧げてくれた。


 僧侶のクララは断トツで顔が良かった。回復魔法はいまいちだが連れて歩くには申し分ない。


 上位職種の聖女もいたが田舎くさくて、私のパーティーには不釣り合いだった。

 この3年の魔王討伐の旅の間に、全員私を慕って恋人になっていた。


 ハルは父上の命令で仕方なく仲間にしていたが、私の顔に傷をつけたのだ。もう我慢の限界だった。


 そもそも2年前に仲間になってから、いつも口煩く注意ばかりしてきてうっとおしかったのだ。

 やれ順番は守れとか、やれ感謝の意を述べろとか、今のは謝罪する時の態度ではないだとか……思い出すだけでもうんざりしてくる。


 父上の命令であるゆえ理由もなしに辞めさせれば、王命に背いたことになる。それゆえ自ら辞めさせる為に負荷をかけていたのに、魔物が弱すぎて問題なくこなしてしまったのだからどうにもならん。


 王族でしかも勇者である私が、なぜ注意を受けねばならんのだ。おかしいであろう! みな私の言うことを聞いておればよいのだ!

 母上はそれが当然なのだとおっしゃっていたのだ!



 気を取り直して、ボス戦に挑むとしよう。

 前回は顔に傷がついてしまった為に、一旦街に戻り傷が癒えるのを待ったのだ。凱旋の時に私の美しい顔に傷がついたままでは、恰好がつかないからな。


 あのハルでもひとりでやってこれたのだ、余裕で進むだろう。




 ————進むはずだったのだ!


「ソニア! ちゃんとやってるのか!?」


「やってるけど、コイツら硬いんだよ!!」


「ロザリー! 魔法で援護をしてくれ!」


「えー! もうムリィィィ! 魔力切れちゃうよぉぉ!」


「チッ、クララ! 回復魔法だ!!」


「えっ! は、はい! えーと、えーと、こうだったかな……?」



 なんなのだ、この体たらくは!!

 あのハルでさえひとりでこなしていたものを、何故3人がかりで倒せんのだ!? まさか、私が戦わねばならんのか!? まったくその辺で拾ってきた冒険者など役に立たんな! 女でなければとうに捨てていたわ!


「もうよい! 私がやる! お前らは下がっておれ!」


 私は目の前の魔物に対峙する。

 狼型の魔物が3匹、グルグルグルとうなっている。こんな毛皮を着ているだけの魔物のどこが硬いのだ!? まったく意味がわからんぞ!


 そして私は飛びかかってきた1匹の魔物に、剣を突き立てる。

 私の剣は魔物の腹を引き裂くはずだった。


「なにっ!? 何故だ! 刃が通らんぞ!」


 何故かわからないが、この柔そうな毛皮を引き裂くどころか怪我ひとつ負わせていなかった。


 物理攻撃無効などの効果がかかっているのか!? まさか! このレベルのダンジョンでそんな魔物がいるわけがない!

 ならば何故————そこで今手元にある武器が目に入る。そうか、この武器が悪いのだな……! 私のレベルに合っていないのだ!


 おそらくソニアもレベルに合っていない武器なのだろう。街に戻ったら新調しなければならんな。今まではハルが煩くて好きに使えなかったからな、これからは思う存分使わせてもらうぞ!


「仕方ない、4人で連携をとって戦うしかない! 私に続け!」


 「「「はい!」」」




 そうして途中の魔物たちを魔法で弱らせ何とか倒しつつ、以前にハルを捨てた場所まで戻ってきた。すでにハルの姿がどこにもないのは魔物に食べ尽くされたのだろう。


 そういえば、父上にはもう冒険者は補充しないと言われていた。そうだ、だから何カ月もハルの小言を我慢していたのだ。仕方ない……新しい冒険者の補充はあきらめるか。


 私自ら魔物を倒せばよいだけだ、なんの問題もない。武器さえ手に入れれば、魔物を倒すことなど簡単なのだ。




「よし、次はボスの部屋だ、行くぞ!」



「待って…回復薬が……切れました」


 ジェレミーがさっそうとボス部屋の扉を開けようとしたところで、待ったの声がかかる。回復を一手に引き受けるクララは回復薬の管理もしていた。魔力との兼ね合いをみながら、回復薬を使うのだがそれがないだと!?


「えぇ! クララの魔力は残ってる?」


 ソニアが尋ねると、クララは無言で首を横に振る。それは現状回復が出来ないということだ。


「何故早く言わんのだ!? それでは戻るしかないであろう!」


「ごめんなさい……言おうとしたんですけど……」


 大きな瞳に涙があふれそうになっている。これ以上怒っても面倒なことになるだけだな。街に戻って回復薬の調達をせねばならん。それならついでに武器の調達もしておこう。


「一度街に戻る。回復薬と武器も調達しなければならん。この武器は役に立たん」


「えぇー、せっかくここまで来たのにぃぃ!」


「仕方ないでしょ! ほら、ロザリー、行くよ!」




 ジェレミーたちは街に戻り、回復薬の調達と攻撃力の高い武器を調達しようと、街で一番大きな店舗に向かった。


「これはこれは、ジェレミー様ではございませんか! ようこそいらっしゃいませ!」


 出迎えてくれた店主は身なりも綺麗に整え、貴族に近しい恰好をしている。

 うむ、この店なら安心して買い物ができるな。今まではハルに任せておったが、自分で見るのも悪くない。

 ここで回復薬と、ダンジョン攻略のための武器を調達したジェレミーはご機嫌だった。


 だが、ジェレミーはこの店舗が貴族向けのもので、すべてが通常の2倍の価格だと知らなかった。豪華な内装や店主が着飾る為の費用も、価格に盛り込まれている。

 ハルはこの店の最強の武器をみていたが、費用対効果が悪すぎて購入しなかったのだ。王家からの援助の額も決まっている。余計な出費は抑えたかった。

 だが、ジェレミーはそんなことはまるで気にしていない。


 そう、すべてが己の首を絞めていることに、まったく気がついていなかった。



 無駄遣いはしたものの、少しだけ強い武器を手に入れてダンジョンの攻略は進めることができた。

 アカシたちがトラップを解除した宝箱から防具を手に入れ、ボスへと挑む。新しくした武器と防具のおかげでボスを倒すことができた。


「ははは! やはりハルなど必要なかったではないか! 私がいればどのようなダンジョンでもクリアできるのだ!」


「すごいです! ジェレミー様!」


「きゃー! 素敵ぃぃ!」


「さすが、勇者に選ばれたジェレミー様だ!」


 第3王子妃の座を狙っているだけの女冒険者に囲まれて、ジェレミーは勘違いだらけの旅を続けるのだった。

                              

                  

                                

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