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32、そして魔界へ




 深い悲しみを胸に押し込めて、私は国王として末息子を見送った。だが、仕事はまだ終わっていない。私の心痛などお構いなしに、側室であるジュリエッタが声をあげた。


「国王陛下! 恐れ入りますが、ジェレミーの処罰が重すぎますわ! すぐに撤回してください!」


「それはできぬ」


 ジュリエッタを冷めた目で見返した。ギリギリと歯を食いしばり、何故か正妃であるメリティスを睨んでいる。そもそもの私の失敗はこの側室を迎え入れた事かも知れない。


 まだ若かった私は、婚約者でもないのに何年も一途に思ってくれたジュリエッタに心咎めていた。つい、しつこく側室の打診を続けてくる侯爵に頷いてしまったのだ。


「ジュリエッタ。お前にも話がある」


「な、何ですの?」


「これを見よ。事実と異なるなら今この場で申せ」


 私は小瓶と一緒に調査書類をジュリエッタに渡した。ジュリエッタの顔がどんどん青ざめていく。


「これは……何かの間違いですわ……! 私は誰かの罠にかかったのです!」


 渡した書類は王太子である第1王子と第2王子の、暗殺未遂の首謀者に関するものだった。そのすべての証拠がジュリエッタを示していた。


「先ほども言ったが、私は黒耀の仮面で確認しておる。この魔道具が間違えたと申すのか?」


「そんな……そんな……」


「ジュリエッタは王子暗殺の首謀者として北の塔に幽閉。後に毒杯を授ける。……連れてゆけ」


 ジュリエッタはわめき散らしながら、謁見室から引きずり出されていった。そして私は最後の問題に取りかかる。




「さて、見苦しいものを見せたな。アカシよ、ミハイルから報告は上がっておる。その者が魔王か」


「はい、国王陛下。確かにこの者が魔王で間違いございません」


 本来なら魔王など即刻討伐するものだが、今回は状況が違うのだ。ミハイルの報告ではこの魔王は良心を取り戻したとある。そして千年以上前から魔王をやっているというではないか。


 それが事実なら、今まで勇者たちが倒してきた魔王はなんだったのだ? その事実解明が先であった。


「魔王よ、其方は人間に危害を加える気はないというが、まことか?」


「はい、私は人間を傷つける気はありません」


「では、千年前より魔王をやっているというのもまことか?」


「はい、確かに幾度となく魔王城を訪れた冒険者たちに倒されました。しかし心の一部を別の場所に封印していたので、しばらくすると復活していたのです」


 そう言う事だったのか……それなら倒しても倒しても、魔物が消える事はない。根本的解決法ではなかったのだ。


 先ほど魔王にも黒耀の仮面を使ってみたのだ。対象者の犯した犯罪が見れる仮面だ。だから、魔王がやましい事をしていないのはわかっていた。


「それでは、本日を持って其方は魔王ではなく、ただの魔族になるがよい。我々が討伐するのは魔王のみである。民には魔王復活はないと宣言しよう」


 そして私は自らの管理責任の罰を負い、王太子に王位を譲り引退も同時に宣言した。

 ————後は、新しい世代に全て託そう。




     ***




 国王による魔王の永久討伐完了と引退宣言がされてから、2ヶ月が過ぎた。


 ジェレミーはすでに消息を経っていて、生きているかどうかもわからないそうだ。側室も先日ついに毒杯を賜って、今は実家の墓地に眠っていると聞いた。


 新国王に就任した第1王子は、その敏腕で諸外国との貿易も有利に進めている。この国はもっと豊かになると、国民の期待は大きい。



 そして俺たちユートピアはというと。


「こらっ、まだ休憩じゃないだろ! ちゃっちゃと働け!」


 全壊になったギルドを建て直していた。大枠は魔法で組み立てて、今は細部を使いやすく組み立てている。監督役のアカシさんがレイさんを叱咤激励した。


「アカシさーん、オレもうヘロヘロなんだけどー」


「それなら僕がハイヒールをかけましょう。すぐに動けますよ」


「そうだ、レイ。サボるでない。ヨシュアの方が働いているぞ」


 魔王の本当の名はヨシュアキースというらしいのだが、長いのでみんなヨシュアと呼んでいる。魔王だけあってかなり秀逸な人材だ。


「いえ、シェイドさんの結界がとても素晴らしいので、作業がはかどるんです」


 長髪をバッサリと切り軽くなった黒髪を揺らして、はにかんで微笑む。魔王だけあって美形なんだ。くそ、羨ましい。


「だってさー、トラップ付き宝箱も、もう出なくなったじゃん。張り合いないよー」


「わかりますけど……ギルド直さないと、シェイドさんの美味しいご飯が食べられませんよ」


 今は寝る場所がないので、アレス神殿の近くの街で宿屋暮らしをしている。肉体労働した後の温泉は格別だ。満場一致で即決だった。

 ただ、食事当番もないので、プロ並みのシェイドさんの料理が食べられない。

 そこでヨシュアが口を開く。


「あの……トラップ付きの宝箱が、そんなにお好きですか?」


「うん、そうだね。ここのみんなは、トラップ攻略好きなんだ」


「それなら、魔界に行きますか? ダンジョンも人間界の比じゃないくらい沢山ありますよ」


「え? 魔界?」


 俺は思わず聞き返してしまった。


「はい、千年はとっくに過ぎてるので多分大丈夫だと思うのですが……それにダメだとしても、自分の気持ちに正直に生きると決めたんです」


「まさか……そんな裏道があったなんて……!」


 レイさんは俄然やる気を出した。アカシさんが真剣な顔でヨシュアに尋ねる。


「ねぇ、ヨシュア。もしかして……宝箱に取り込まれた人間って、魔界に行ったりする?」


「ああ、たまに迷い込んでくる人間がいましたね。千年前の話ですけど……」


「よし、魔界に行くぞ! ギルドを早く完成させよう! シェイド、全員にヘイストかけて!!」


「わかりました! お任せください! 二重ヘイスト!!」


 即決だ。

 ずっと探していると言っていた青髪の弟を、アカシさんは諦めていなかった。それなら、俺は全力で応援するしかない。

 トラップ付き宝箱がまた楽しめる、みんなその一心でギルドを完成させた。



 こうしてヨシュアの導きで魔界へ向かい、怒涛のダンジョン攻略をしていくのだった。



 自分の心を大切に、夢をあきらめないで。

 ひたすらに突き進むんだ。決意を胸に、明日へと。

 ————未来へと。




ここまで読んでいただきありがとうございます★

これで完結となります。

少しでも皆さまに楽しんでもらえてたら嬉しいです。


ちなみに、アオイは魔界に飛ばされたあと、生き延びるために、魔族がやりたがらないトラップ付き宝箱の管理者をやっています。

そしてこの後アカシと再会を果たします。

という感じでハッピーエンドです。


広告の下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援してもらえると、今後の作者の執筆の励みになります"(⌯︎¤̴̶̷̀ω¤̴̶̷́)✧︎


何卒よろしくお願いします<(_"_)>ペコッ

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