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24、勇者パーティーのダンジョン攻略⑥

すみません、投稿が遅くなってしまいました<(_"_)>ペコッ




 私たちはハルと接触するために、予定より早くヒュプノスの地下牢に到着していた。


 メンバーが欠けてバランスが悪くなったので、ハルをこの勇者パーティーに戻してやることにしたのだ。勇者でもある私が以前の事など水に流すと言えばすぐに戻ってくるはずだ。




「いえ、お断ります。では宝箱開封で忙しいので失礼します」




 そう言うと、すでに転送準備の整った魔法陣の上に飛び乗り、あっという間に姿を消した。


「なっ……!! 貴様! 待て! 待たぬか!!」


 虚しく私の声だけが響き渡る。

 何という事だ!! このような屈辱は今まで経験した事がないぞ!? この私の誘いを断るというのか!? ただの冒険者の分際で!!!!


 ビキビキと頭の血管が切れそうになる。クララとロザリーは沈黙したままで、まったく役に立ちそうにない。

 ダンジョンをクリアしなければ次は進めないのだ。進まなければ、私が優秀であると証明できない。


「もうよい!! 行くぞ!!」


「……えっ、このメンバーだけで行くのぉ?」


「ジェレミー様、それは流石に……」


「何だ!? 勇者の私に意見するのか!?」


「「…………」」



 私が最前線で戦えば、なんて事はない。本気を出せば、このくらいの魔物など倒せるのだ!!




     ***




 ジェレミーたちはたった3人で、ヒュプノスの地下牢に挑んだ。

 襲いかかる魔物たちをギリギリで倒しながら、時には逃げながらフロアボスの部屋へと進んでいく。1階層のフロアボスはキマイラだった。


 複数の魔物をミックスしたようなその姿は、異様だった。ライオンの大きな口からは炎を吐き出し、背中のヤギの頭からは雷魔法が放たれる。尻尾は毒蛇になっていて、隙あらば噛みついてくるのだ。


 ジェレミーはロザリーとクララの援護を受けながら、キマイラに向かっていく。

 前方から襲ってくるファイアブレスを避けて、上から降ってくる雷魔法をロザリーが相殺した。毒蛇の攻撃は、クララの結界魔法で何とか凌いでいた。



 くっ! 避けるだけで、攻撃まで手が回らない……! 何とかしなければ、この場で全滅してしまう!!


「ロザリー! ファイアブレスを無効化できないか!?」


「ええぇぇ!? そんなのできないよぉ!! ヤギの相手だけでっ……イアアァァ!!」


 ロザリーは私との会話に気を取られ、ヤギが放つ雷魔法をモロに受けてしまった。すでに意識はなく、床に倒れている。


「ロザリー!!」


 クララが駆け寄るも、結界魔法を使いながらでは回復が困難だった。結界魔法を解除して、ロザリーを回復させればキマイラの攻撃は全て私に向かうだろう。ファイアブレスを凌ぐだけでも、攻撃まで手が回らない。

 それとも————




「クララ、撤退だ。このままでは全滅してしまう! 撤退だ!!」



 私はファイアブレスがやんだ瞬間、扉に向かって走り出した。魔物を倒す前に死んでしまっては意味がない。私は勇者なのだ。私が死ぬ訳にはいかないのだ。


 後ろを振り返ると、クララもついてきていた。僧侶ひとりであの魔物を倒すのは無理だ。当然の選択だろう。






 私とクララはそのまま街へと戻り、仲間になる冒険者を探した。だが、やはり今回もいい人材はおらず結局クララとふたりのままだ。


 このままでは、さすがの私もダンジョン攻略は難しい。そこで思い付いたのだ。ボスさえ倒せれば、よい武器や防具が手に入る。そして倒すのは私でなくても問題ないではないか。そうすれば、魔王の討伐は出来るのだと。





     ***




「やれやれ……またか」


 ミハイルの溜息の混じったつぶやきは、誰の耳にも届いていない。

 そんなミハイルに関係なく、キマイラはファイアブレスを吐き出してきた。愛用の『刀』と呼ばれる武器をひと振りして、炎を打ち消す。



「呪縛の鎖」



 突然キマイラの足元から黒い無数の鎖が現れ、その体躯を捕らえていった。黒い鎖は炎を吐き出す口にも巻き付き、ヤギの頭は鎖がからみついて雷魔法が放てなくなっていた。毒蛇は身体ごと鎖に押さえつけられ、身動きができなくなっている。



「少し黙ってろ」



 キマイラに向けた琥珀の瞳は、刺すような殺気を宿していた。その一言でグルグルと唸っていた声もパタリと止む。自分がここにいなければ前回の女剣士もこの魔法使いも、命を落としていただろう。


 今回も含めて一度報告に戻ろうと、ロザリーを抱えて一瞬で姿を消したのだった。




     ***



 私はこのエストラーダ王国の国王を勤めている。私の判断一つで国の行く末が変わる、そんな非常に責任の重い役職だ。代々我々一族が王についているが、それは遥か昔のご先祖さまが勇者で魔王を討伐したからだった。


 周りの強力な後押で国王についた勇者は、今後も自分の子孫から勇者を輩出し魔王を討伐すると民と約束したのだ。そしてその約束は守られ続けてきた。勇者の一族であり、この国を治める誇り高い一族として責務を全うしてきた。


 1日の執務を終え私室に戻り、窓辺のひとり掛けのソファーに座って肩の力を抜いた時だった。


「陛下」


 ジェレミーにつけていた隠密、ミハイルが部屋に現れた。私の密命でジェレミーの監視とフォローをしている。私にとっての第3王子は、そのような存在だった。


「……ミハイルか。このタイミングで戻るとは……あまりいい知らせではないようだな」


 頭の痛い問題がまたひとつ増えたようだ。深いため息をついた後、先を促すよう目くばせする。


「ジェレミー様はアレス神殿とヒュプノスの牢獄において、パーティーメンバーが負傷した際に、敵前にそのまま置き去りにして撤退されました」


「なん……だと……? 仲間を……敵の前に仲間を置いて、逃げたのか……?」


「はい。ですが負傷者は私が応急処置をして、一命は取り留めております」



 私は思わず右手で顔を覆った。

 ハル・スプリングスに続いて、自身で選んだパーティーメンバーすら置き去りにしたのか……しかも、その仲間が死ぬであろうと理解しながら。


 今までのジェレミーの性格や行動から、もはや矯正は絶望的だと感じた。いつからこんな風になってしまったのだろうか。

 だが、もしも魔王を討伐できたなら、役職にはつけなくともある程度の暮らしはさせてやれる。最後の——希望だ。


「そうか、わかった。元パーティーメンバーには手厚い補償をするように。ジェレミーに関しては魔王の討伐まで進ませよ。その結果も加味して処分を下す」


「御意」


 ミハイルは来た時と同じように一瞬で姿を消した。

 私は深い深いため息をついた。もはやジェレミーの処分は避けられない。己の息子であろうと厳しく処罰を下さねば、他の者に示しがつかない。国王の私にはそれしか許されないのだ。


 何とかしてやりたかった……だが、こんな事になるまで気付かなかった私にも責任がある。


 ジェレミーの問題だけではない。その母親、側室のジュリエッタに関しても頭の痛い問題がある。現在それは第1王子と第2王子も巻き込み、そろそろ手を打たねばならないところまで来ている。


 何度目かのため息をついて、夜空に浮かぶ月を祈るように見上げた。




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