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18、スケルトンな宝箱




「いやー、ハルすごかったな!」


「ホント! 一発クリアだもんなー」


「でも、それはアカシさんのを見てたからですよ。順番が逆なら、クリアしたのはアカシさんです」


 アカシさんとレイさんが褒めてくれたけど、事前準備ができたし、速さだけならアカシさんが上だった。


「ハルもアカシさんもヒールかけます。腕を出してください」


 そこへシェイドさんがお願いする前に、回復魔法をかけてくれる。本当にありがたい。お陰で腕は元通りだ。


「む、ご褒美とやらはこの宝石のようだな」


 マリナさんの手にあるのは、白くて丸い虹色の光を放つ小さな宝石だった。宝箱の中には、これがびっしり詰まっている。


「うっひゃー! これ『妖精の真珠』だ! これだけ売ったら8000万ゼルはするな」


「アカシさん、売ったらまた『温泉』に行きたいなー」


「それ大賛成です! 俺も温泉いきたいです!」


 そうして、近々また『温泉』に行くことが決まった。本気で頑張った甲斐があった……!




「ではハル、次をどうぞ」


「あ、今のは俺がクリアしたから、シェイドさんがお先にどうぞ」


「そうですか、では遠慮なく」


 シェイドさんが、精巧な飾り細工が施された宝箱に手をかける。きっと、開けたくてウズウズしてたに違いない。今度はどんなトラップなんだろう?


「……開きませんね」


 宝箱に手をかけたシェイドさんが、一旦手を離した。


「鍵がかかってるなら開けるから、ちょっと見せてくれる?」


 そう言って宝箱を隅々まで調べている。

 よく見ると精巧な飾り細工は、ひとつひとつの模様が全部違っていて、龍の鱗のようなものが浮き彫りになっている。

 ……ん? 龍か、これ? あ、アカシさんも気がついたみたいだ。


「これ、飾り細工が動くようになってる。んー、秘密箱タイプかな。模様で繋ぎ合わせてみよう」


 そうして、側面も背面も施されてる飾り細工をスライドさせて繋ぎ合わせてみた。だけど、どうやっても全ての模様がつながらないのだ。



「どうやっても繋がりませんね。何かが欠けているのでしょうか?」


「うーん、何かはめ込むようなピースあったっけ?」


 みんな首を横に振るだけで、解決には至らない。もしかしたらと背面を担当していた俺は、声を上げた。


「あの、背面にボタンのようなものがふたつあるんですけど……」


「ボタン?」


 みんな宝箱の背面にまわり込む。さっき飾り細工を移動させているときに気づいたものだ。オレンジ色のボタンが、右上と左下の角にふたつある。


「まさかと思うが、こっちが本命ではないか?」


「うん、とりあえず押してみよう。シェイドやってみて」


「わかりました、では」


 まずは、右上のボタンを押してみる。……何も起こらない。

 今度は、左下のボタンを押してみる。……何も起こらない。



「両方一緒に押してみたらどうですか?」



 俺は思いついた言葉をポロッとこぼした。シェイドさんが成程といった顔でボタンを押した瞬間だった。

 眩い光が宝箱から放たれる。


 光が収まりそっと目を開いた。目の前にあった宝箱は消え去り、代わりに小さな化粧箱が置かれている。蓋は開いていて、何やらきらりと光るものがふたつ並んでいた。

 そこへヒラヒラとメモ紙のようなものが舞い落ちて来た。手に取ってみるとメッセージが書かれていた。



『大正解~~~!! おめでとう~~~! あと一回間違えてたら、超凶悪モンスターとご対面だったんだよ☆ すっごいラッキーだったね! 宝箱の妖精より』



 どうやら、ギリギリで難を逃れたようだ。しかし宝箱の妖精さん……頼むから先に言ってくれよ。

 アカシさんはこんなメモ紙など気にせず、翡翠色の小さな宝石がついたアクセサリーを鑑定していた。



「これは……龍宝玉のピアスだ。これを付けると龍神の加護が与えられて、力が3倍になる。その代わりどこに行っても暴風雨に見舞われる。…………欲しい奴いるか?」



「いや……暴風雨はちょっと……」


「俺は完全即死(パーフェクト・キル)があるから大丈夫です」


「僕は白魔道士なので、そこまでの力は必要ないですね」


「力が……3倍……でも、暴風雨……むぅ、悩むな」


「マリナがそのピアス付けるなら、個人行動の時にしてな。オレ暴風雨イヤだし」


「そうか……では、私も必要ない。仲間と共に行動できねば意味がない」


 唯一マリナさんが悩んでいたけど、レイさんの一言で辞めたみたいだ。レイさんがいい仕事してくれる。俺も暴風雨に見舞われるのは避けたかったです。


「じゃぁ、まとめて国王に売りつけるか」


 アカシさんが悪い顔になってる。……見なかった事にしよう。それより、次は俺の番だ。




「じゃぁ、最後はスケルトンの宝箱ですね。もう開けてもいいですか?」


 みんなの許可を得て、蓋に手をかける。スケルトンなだけあって、素材はガッシリしてるようだけど床まで透けている。どこからこんな素材を仕入れてくるのか、ちょっと気になる。


 ……ていうか、これ本当にトラップ付きなんだよな?


 蓋を開けながら、そんな事を考えていた。


 俺が幸運9999になったのは、気のせいだったんだろうか? あれから危機的状況でも怪我ひとつなく何とかなってきた。おそらく一番円満な解決方法で、問題をクリアしてきたはずだ。

 そう、俺がスケルトンな宝箱の蓋を開けるまでは、今までと何も変わらなかったのに。




     ***




 それなのに、何故、俺は見知らぬ場所に転移したんだろう?

 疑ってごめんなさい。

 この宝箱、本当にトラップ付きだったんですね。



 あれか? 俺が本当にトラップ付きの宝箱か疑っていたから、こんな事になってるんだろうか? いやいや、落ち着け。まさかそんな事はないだろう。まずは状況把握からだ。


 ここは、間違いなくギルドの地下室ではない。

 周りの景色は、岩山に囲まれている。赤い地面をさらしていて、乾いた風が俺の頬をなでていく。

 地下室から、どこかの世界か空間に飛ばされたらしい。しかも俺だけだ。みんなには何も起きてないのか? それとも、別々に飛ばされたのか?


 俺の思考がそこで止まった。


 赤い岩山の向こう側に、伝承でしか聞いた事がない魔物がいた。

 巨大な体躯は硬く赤い皮膚におおわれていて、大きな口には鋭い牙が並んでいる。岩ですら軽く握りつぶす程の怪力に、長い尾は周りの物を蹴散らしていく。


 呼吸と共に吐き出される息にすら魔力がこもり、炎そのものを吐きだしているようだった。

 ゴツゴツした体表に金色の瞳が光っている————それは、ドラゴンだった。



「マジか!?……エンシェント・ドラゴンじゃん!!」



 エンシェント・ドラゴンの証である金色の瞳は、確かに俺を捕らえていた。

                        

       

                  

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