14、勇者パーティーのダンジョン攻略④
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「なんでクララがジェレミー様のベットで寝てるのよ! 今日は私の番でしょ!?」
一糸纏わぬ姿で寄り添い休んでいた私とクララは、ドロシーの叫び声で起こされた。真っ赤な顔で怒り狂っている。今にも魔力があふれ出そうになっている。
「それは、ジェレミー様に呼ばれたからです」
「順番だって決めたじゃない!」
「ふたりとも落ち着くのだ。明日は早いし私はもう休む。話し合いなら別の部屋でやってくれないか」
そう言って、私はクララが着衣を整えたあと、ふたりを部屋から追い出した。まったく……女とは面倒な生き物だな。
ロザリーとクララがもめているのは、夜伽の順番の話だった。
平民の出身のため、貞操観念は貴族のように厳しくはない。それなのでこの3年間はドロシーに始まり、ソニアもクララもジェレミーの夜伽の相手になっていた。
ある時からケンカになるからと順番にしていたのだが、それをジェレミーがあっさりと反故にしたのだ。第3王子妃を狙う3人は、寵愛を受けて玉の輿に乗ろうと必死だった。
他人を蹴落としても、自分が選ばれたい。そう思ったから、ハルを追い出すのになんの躊躇いもなかった。それで第3王子に気に入ってもらえるならと、張り切って制裁も加えたのだ。
ジェレミーを諌めていたハルもいなくなったため、自由奔放な行動に歯止めが効かなくなっていた。それがパーティーの空気をより険悪なものにしていったが、そのことにジェレミーが気づいていない。
今にも足元から崩れ落ちそうなのに、何も気がつかないままジェレミーはエレボスの塔に挑んだ。
***
「さぁ、それでは行こう!」
意気揚々と挑んだのはジェレミーだけだった。
他の3人は口もきかないくらいにギスギスしている。昨夜の夜伽の件を聞いたソニアも怒り心頭だった。
うむ、今日は無駄話も少なくて快適だな。順調に進んでおる。
ボスがいるのは最上階であったか、それまでは私の出番はないであろう。
途中の弱い魔物どもは、おもにソニアに任せていた。ハルが抜けてから、自身で戦ってきたため少しは成長したようだ。ロザリーは打ち漏らした魔物を魔法で葬ってゆく。クララは回復魔法で支援していた。
私の指示通りにすれば、まったく問題ないではないか。これなら、ハルにやらせていた時とそうかわらんな。やはりあの者はこのパーティーに必要なかったのだ。
ジェレミーはご機嫌のまま進んでいく。残念なことにこのダンジョンンのトラップをユートピアが解除していることは、すっかり頭から抜け落ちていた。トラップのないダンジョンであれば、その危険度は格段に下がるのだ。
こうして周りの見えないジェレミーは自分の都合のいいように解釈し続ける。
「ここがボスの部屋だな」
ボス部屋の扉を開けると、目の前にはキラーガーゴイルがいた。通常のガーゴイルの上位種で魔法も攻撃も扱う厄介な相手だ。
「ギャオオオオォォォ!!」
ガーゴイルが先制攻撃を仕掛けてくる。
炎の嵐に襲われジェレミーたちの足が止まった。ロザリーが打ち消すように魔法を放つ。
「アイスブリザード!!」
「メディアヒール!」
すかさずクララが全体回復をかけた。そしてソニアが両手剣で切りかかる。ここまでの実践経験で、いくらかマシになった動きで連携をとっていく。だが、こなしてきたダンジョンの数の割には、得た経験値が低すぎた。
「うあああぁぁぁ!」
ソニアが痛恨の一撃を喰らって、たった一撃で倒された。
ジェレミーは剣を構えて向き合うが、手が震えている。人任せにしてまともに戦ってこなかったのだから当然だ。
「クララ! ソニアを回復だ!」
「今やってます!」
なんという誤算だ! いきなりソニアがやられてしまうとは……!
だが、前衛は私しかいない、ソニアが復活するまで持ちこたえないと全滅してしまうではないか!!
クララは回復魔法をかけているが、ダメージが深刻ですぐに回復する見込みはなさそうだ。
「くそっ! ロザリー! 援護しろ!」
「はい! ウィンドカッター!!」
風魔法でガーゴイルがひるんだすきに、ジェレミーが攻撃を繰り出す。ホーリーブレードは確かにガーゴイルに当たった。
当たったのだが、ほんの少しけがを負わせた程度であまりダメージは与えていない。
「何!? なぜ倒れないのだ!?」
何故だ!? ソニアの腕はそこまで大したことがないから、一撃で敵を倒せないのも理解はできる。だが、勇者であるはずの私の剣がなぜ通じないのだ?
私ほどの勇者ならば、こんな魔物など一撃で————ジェレミーの意識はそこで暗転した。
***
「ソニアお願い!!」
「これで最後だぁぁぁ!」
「ギャ! ギャオオォォ……」
ジェレミーが早々に倒されて、残りの3人で何とかガーゴイルを倒した。あの時、ジェレミーの攻撃を見てロザリーとクララは、勇者は役に立たないと判断した。
まずは生き延びるために、目の前のキラーガーゴイルを倒す必要がある。ふたりともこんな所で死ぬのは嫌だった。役に立たない勇者など邪魔なだけなので、ロザリーが魔物の足を止めている間に、クララはソニアの回復に専念した。
「っ……ごめん、強烈なの喰らった……」
目覚めたソニアと戦略を練りなおす。状況を伝えて、女の戦いは一旦お預けにした。まずはキラーガーゴイルを倒して、ゆっくりと相談しようということになったのだった。
そして、やっとエレボスの塔のボスを倒したのだ。勇者は転がったまま放置している。
「それなら、王子の妃になった人が残りのふたりを、教育係として雇うってことでどうですか?」
クララの提案にソニアとロザリーは顔を見合わせる。要は自分が選ばれなくても、冒険者などやめて優雅な暮らしを送れれば構わないのだ。
「うん、それならいいかな」
「そうですよぉ、ケンカしてて死んじゃったら意味ないですもんねぇ」
「魔王さえ倒せば、こんな生活から抜け出せるんだから!」
類は友を呼ぶ。自分の都合のいいようにしか解釈しない我儘王子と、王子の権力や地位に群がり利用したい女たち。自分の欲望のために、他者を踏み潰してもそれが当然と考える人間の集まりが、勇者パーティーの実態だった。
ジェレミーは意識を失っていて、3人の思惑に気づくことはなかった。






